第1話 閻魔様と俺
日向康一です。
よろしくお願いいたします。
「……さい……お…なさい」
あぁ、
遠くの方で声が聞こえる、、、
「…起き…なさい…」
段々と声がハッキリしてきた……
意識が覚醒していくこのふわふわした感じ、悪くないな……しかしなんだか舌に違和感が……ちょっと痛いな……いや、これは…
「へっひゃいひゃいは!(めっちゃ痛いわ!)」
「お、やっと起きたか」
そう言って俺の舌を引っ張っていたペンチを外したのは、なんともグラマスな黒髪ロングでセクシー和服のおねーさん…
「ナーイスおっぱーい…」
本音がつい出てしまったがこれは健全な男の子ならば致し方……イヤイヤイヤっ!違う、そうじゃないっ!
誰だなんだよこの人っ!てかここどこだよっ!
俺の状況はと言うと、どこにでもあるような木の椅子に座っていて、両手首を肘掛に両足首を椅子の足に固定されている。
イヤ、ますます処理できねーってっ!何事?!
パニックで金魚の如く口をパクパクさせてる俺のことには目もくれず、よっこいせと俺の目の前の机に腰を下ろして何やらペラペラと分厚い本をめくるおねーさん
「んじゃ、まぁとりあえず、あの世へようこそ。これからについてだが、」
えっ、何、今この人あの世って言った?
あの世?あの…よ…
「あの世ぉぉぉぉぉぉぉぉ?????」
「なんだ、いきなり大声を出すんじゃない」
「いや、あの世って…そんな訳……」
そんな訳無いだろ……だって……
明らかに現代の建物ではないだだっ広い古風な室内
デカデカとした机上には山積みの資料と巻き物
そこに腰を下ろすこれまた色々とデカいおねーさん
その頭の帽子には閻魔の二文字
そしてその奥の壁にはふたつの扉
そこにはそれぞれ天国と地獄の二文字
なんだよこれ…これじゃあまるで…ここがあの世で……俺が…俺が…
「…死んだ…みたいじゃ…ないか…」
やっとの思いで出た声が酷く掠れていた。
嘘だろ、嘘だよな…まだ、俺やり残したこと沢山…
「いや、お前は死んではいないよ」
「へ?」
「だから、お前は死んでないんだよ」
「え?でも、ここあの世なんですよね?」
「そうだよ、そして私が閻魔様だ」
ヤバい、完全にキャパオーバーだ。俺は死んでないのにあの世で閻魔様のの目の前にいるらしい。理解不能とはまさにこの事か。
しかしまぁ、考えても分かららないものは仕方がない。素直に聞くのが一番だろう。
「あのぉ、閻魔様」
「なんだ」
「俺は死んでないのですよね、ならなぜ俺はここにいるのでしょうか?」
「お前何も知らんのか?まさか、人違いか?」
俺に心当たりが微塵も無いことに気付き、あれ〜と言いながら手元の資料と俺の顔をチラチラと見比べる閻魔様。
人違いに決まってる。なんたって俺は超がつくほど普通の高校生なんだよ。
「ん〜、とりあえず名前と年齢を教えてくれ」
「安倍明、十七歳です」
「やっぱり本人だな」
マジかよ!身に覚えがないのにあの世にいるなんて怖すぎるわ!
「お前は自分があの陰陽師 安倍晴明の末裔だと分かってないのか?」
本日何度目か分からないキャパオーバー。
え?俺の聞き間違いでなければ……俺がおんみょーじの安倍のナンタラの…末裔…?
「本当に何も知らないんだな。まぁ、簡単に説明してやる」
フリーズした俺を見て呆れた様子で閻魔様がため息混じりにそう言うが、俺は今まで平々凡々に生きてきたんだ、陰陽師なんて身に覚えがないにも程がある。
「まず、陰陽師の役目は悪霊退治だ。悪霊とは文字通り悪事を働く霊のことだ、陰陽師は悪霊から人々の命を守らなくてはならない。そして、今から千年以上も昔の平安時代に今もなおその名が語りつがれるほど優秀な陰陽師かいた、それが安倍晴明」
「俺の…ご先祖さま……」
「そうだ、つまりお前にも優秀な陰陽師の血が流れているということだ」
そうだったのか…
つまり俺は昔の超すごい人の子孫って訳か
いきなりすぎる新事実だがなんだな悪い気はしないな
「だからお前にも悪霊退治をしてもらう」
「えっ?」
「年々陰陽師の数は減るわ悪霊の数は増えるわ悪霊が悪さをしてあの世とこの世の均衡が崩れるわで大変なんだよ」
「イヤイヤイヤイヤイヤっ!俺に陰陽師の血が流れているということは分かりましたよ!でも急にそんな事言われても人間、できることとできないことが、」
「残念だがこれは絶対なんだよ」
流石わ地獄の閻魔大王顔色ひとつ変えずに俺の意見を一刀両断にしやがった……なんでだよっ!
「いいかい、安倍一族はね私と契約をしてるのさ」
「契約……?」
「陰陽師が悪霊退治するには式神が必要なんだよ
まぁ、式神は分かりやすく言うとポケ〇ンみたいなもんだ、私は自分の部下の中から優秀な妖怪を安倍一族の式神として譲る代わりに安倍一族は悪霊を退治してこの世とあの世の均衡を保つ、この事は代々伝えられていると思ったんだが、まさか知らないとはな」
「で、でもなんで俺が?」
そうだ、俺の親父が悪霊退治していることなんて見たことも聞いたことも無い、ただのリーマンだぞ
俺だってその息子のただの高校生なんだなんで俺が…
「急で驚いているかもしれんが、恨むなら契約を交わした御先祖を恨むことだな
それと、私との契約を破るなんてことは考えてないことだ、舌を抜いたあと地獄に行くことになる」
怖っ!嘘だろ
でも、チート能力も何も無い俺が悪霊退治できるわけ
……
「確かに近年は陰陽師の歴史の廃れ安倍一族の血も薄れた、おかげでここ数百年は安倍一族からですらまともな陰陽師は生まれなかった、だがお前は別だ、近年稀に見る優秀な陰陽師の素質がある、だからここへ呼んだのだ」
マジかよ!
そうだったのか俺!もしかして、俺ってすげーやつだったのか?!なんか急にテンションが上がってきたぜ!
「悪霊退治の任、頼まれてくれるか?」
この時の俺は美女に才能があるなんて言われたから完全に調子に乗った……
だから二つ返事で「はい、喜んで!」なんて言っちゃったんだ……
この先何が起こるかも知らずに…………
「後日式神を送る、詳しくはそいつに聞いてくれ」
閻魔様がそう言うと俺の意識がどんどん遠くなっていった…………
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to be continued
のんびり書いていこうと思ってます。拙い文章ですが、楽しんで頂けたら幸いです。