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千歳飴

作者: 新星爾咲

 子供っぽいって、よく言われる。自分でもわかってるの。

「あぁ、子供だな」

って。

 背も小さいし、お化粧してもなんか変だし、好きな食べ物だって、お子さまみたい。でも、やめられないの。



 今年も、私が楽しみにしてるイベントもうすぐやってくる。それは、七五三。

 もちろん私はもう小さな女の子じゃない。でも七五三には、大好きな千歳飴と、特別な約束があるから。


―あれは、まだ私が六歳の時。




「ねぇ、ママァ、これ、まだ、食べちゃダメ?おうち帰りたいよ」




「今日はあなたが大人になったことをお祝いする日なんだからもう少し大人しくしてなさい。お兄ちゃんに笑われちゃうよ」




「やだ!食べるもん!…ママァ、開かないよぉ」



「貸してごらん」


「ちぃくんっ!開けてくれるの?」


「ごめんね、千登世くん、はる、ちぃくんにお礼は?」



「ちいくんありがとっ」






―私よりも10歳も年上のちぃくん。もうそんな風には呼べないけど。


白くて細い指に隠し持った力で器用に飴を欠く。千歳飴とどっちが細かったっけ?







「はる。この飴、何て名前か知ってる?」



「ぺこちゃん!」



「ふふ、この飴は僕とおんなじ名前。千歳飴っていうんだ」



「ちぃくんの飴だからこんなに美味しいんだね」






―ちぃ…千登世くんが親の仕事の都合で海外に行くと知ったのはそのすぐ後だった。なんでもお父さんが会社の大きなプログラムのリーダーになったらしく10年ほど海外暮らしだったらしい。


「はる、目をつぶって、口開けて?」




「?…んっ!ちぃくんの飴だ!…ちぃくん?はるがもっとしちごさんいっぱいしたら、はる、ちぃくんのお嫁さんになれる?」



「はるが今の僕の年になったら、きっとはるを迎えに行くよ、この飴をもって」






―今、私は16歳、あれから毎年、七五三の季節になると千歳飴を買い込んでいる。今年も。






…ニューヨーク発国際便は、まもなく到着致します…


空港。10年前の約束を叶えるため、ここに来ている。迎えに来ているのは私の方だけど。千歳飴はもう口の中に入っている。



…ちぃくん、どんな顔するだろ、私は10年経ってもひとめでわかる自信あるけど。




分かってもらえなかったら、今度は私が千歳飴を口に放り込もう。






「はるっ、迎えに来てくれたの?」



「ちぃくんっ私大人になったよ!」



「そうだね、でも甘い匂いがする、僕の飴だ」




甘くてとける白い恋

昔と今をつなぐ白

この子、早生まれですね。

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