表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~勇者が行く~  作者: 創造主
第三部
98/196

【098】天空城の戦い(11)

賢二と冥符は倒れ、戦える者はついに俺と暗黒神だけとなった。


巧妙に隠していたつもりだったが、俺の異変は既に暗黒神にはバレていた。

左腕の機能が完全に失われる前に、決着をつけないとヤバいだろう。


「というわけで、これから必殺の一撃で周辺を吹き飛ばす!覚悟しろ商南!」

「なんでウチに宣言すんねん!それにアンタ、姫はどーでもええんか!?」

「いや、姫なら星が消えても生き残る気がするのは私だけじゃないはずさ。」

「せ、せや!前みたくその兜を取ったらどうや?それやったらまた被せれば…」

「マオに主導権を渡すのは危険さ。かつて仲間だったわけだしアイツと戦うかどうかも怪しいもんさ。」

「外野は黙ってろ!もうここまできたら、なるようにしかならん!いくぞ!!」


 勇者は暗黒神を目がけて駆けだした。


「ああ、さすがの俺も少々疲れた。次で決めよう…この『暗黒破人剣』でな。」


<暗黒破人剣>

 あらゆるものをスリ抜け、人体のみを破壊する魔法の剣。

 だが相手の剣撃も受けられないため、先手必勝の勝負となる。


「魔導士風情がこの俺に剣で挑むか!面白い、身の程ってのを教えてやろう!」

「敵の力量も計れんとは…死んで後悔しろクソガキが!唸れ、破人剣…!」

「食らえ暗黒神!必殺…魔法〔爆裂殺〕!!」

「なっ…!?」


〔爆裂殺〕

 勇者:LEVEL40の魔法(消費MP50)

 並みの敵なら一撃で木っ端微塵に吹き飛ばす強力魔法。終わった恋より粉々だ。


ドガァアアアアアアアアアアン!!


「ぐはっ…!魔法…だと!?偉そうに吠えといて貴様、舐めやがって…!」

「オールマイティ…それこそが『勇者』!俺が剣のみの雑魚とでも思ったか?」

「チッ、その相手を煙に撒く戦法は親父ゆずりか?とことん相性悪ぃぜ。」

「相性?面白い言い訳をするじゃないか。だが違うな、これが“実力の差”だ。」

「ブッ殺す…!もういい、もう俺も先なんぞ考えねぇで動くことに決めたぜ!」


「フッ、やはりまだ手加減する気だったか。俺を殺しちゃマズいんだろ?お前は魔神を恐れている。俺が死んだら中のマオが出てくるからなぁ。」

「フン、まぁその時はその時だと言ったろ?俺が先に本体を見つけ、叩けば済む話さ。」

「その考えに至るのが遅すぎたな。一ヶ月…あの時に俺を殺さず生かしておいたこと…」


 勇者は真っ直ぐ突っ込んだ。


「真正面から来るだと?馬鹿が!この刃を防ぐ手立てなど無いと言ったはず!」

「あの世で後悔するがいい、暗黒神!!」


ズバシュッ!


 暗黒神、会心の一撃!


「うぎゃあああああああ!!」


「なっ!?」


 なんと!勇者は余一を盾にしていた。


「おっと、隙だらけだぜ!?神よ!!」


ザシュッ!!


 会心の一撃!

 暗黒神は大ダメージを受けた。


「ぐぁああああああああああああ!!」


「悪いな暗黒神、盾は豊富にあるんだ!」


 謝る相手が違う。



「ぐふっ…ぐはぁ…!!」

「お、オイ!アンタ大丈夫か!?気ぃをしっかり持つんやで!寝たらアカン!」

「あ~ゴメンね商南ちゃん、ちょっと寝てたよ。」

「アンタにゃ言うてへんけど確かにアンタもしっかりせーや!」

「ゆ、勇者君…僕は、勝ったんだね…ガンには負けずに…逝け(ザシュッ!)

「介錯だ。安らかに眠れ余一、お前のことは…あと数日は忘れまい。」

「って一体どこまで鬼やねんアンタは!?明日は我が身や思えて怖いわ!」

「まぁ病気では逝かなかったんだ、コイツも満足だろ…うぐっ!な…にぃ!?」


 知らぬ間の一撃!

 勇者は両肘両膝から血を噴いた。


「なっ、今の流れで…当ててきやがった…だと…!?」

「こ…小僧…!随分と、常識外れのことばかり…してくれるじゃねぇか…!」

「き、貴様も…不意打ちの魔法に魔神剣、まともに食らってまだ生きてやがるとはな…!」

「テメェは楽には殺さねぇ。たっぷりと絶望を味わって…そして死ね!」

「ッ!!!いかん!逃げろ雑魚どもーー!!」


 暗黒神は仲間達の方を見ている。

 勇者はダメージのせいで動けない。


「さぁまずはお前だ、クソやかましいメガネ小娘ぇーー!!」

「ってウチィ!?ひぃいいい!ちょ、ちょい待ちや、今メガネ外すさかい!」

「そういう意味じゃないさ!ボケてる暇があったら逃げ…早くするさっ!」

「大人しく死にやが…むっ!?」


ビシュウウウウウウ~!


 暗黒神と商南の間に濃い煙が立ち込めた。


「へ…?こ、この煙は『煙幕符』の…じゃあまさか…!」

「オイ貴様…どういうつもりだ!?この俺に逆らうつもりか、冥符!」

「あぁ~、悪いな大将。やっぱ俺は、破壊よりも愛に生きるさだめらしい。」


 なんと、目覚めた冥符が商南を守ったようだ。


「チッ…!ならば次はそこの、起きたらウザそうな小娘を…!」

「おっと、寝てる女子を攻撃だなんて見過ごせないな。弓絵君は僕が守ろう。」

「好敵手の小僧!?目覚めやがったか!」


 宿敵はフラつきながらも、近くに転がっていた弓絵の元まで詰めていた。


「う゛っ…ぼ、僕だって…!暗殺美さんは、僕が守るよ!」

「うっきゅーーーん!!」


 そして同様に、賢二も目を覚ましていた。

 逆に暗殺美は失神寸前だ。


「フッ、どうやら完全に形勢逆転のようだな。もはや手詰まりだ、諦めろ。」


 続々と復活を遂げる仲間達の姿に、勇者は余裕を取り戻したようだ。

 だが暗黒神の方もまた、悪い笑顔を浮かべていた。


「…どうかな?まだ一匹、お前の特別が残ってるように見えるが?」


 暗黒神の視線の先…仲間の誰からも遠い位置にいたのは、勇者が最も守りたい相手…姫だった。


「ほぇ…?」

「ハッ、姫ちゃん!?ヤバい、この俺としたことが…!間に合わな…」


 暗黒神の攻撃!

 ミス!なぜか姫はポヒュッと消えた。


「き、消えた…!?いくら姫ちゃんでも消えるのは…となると今のは…!」

「…やれやれ参ったぜ、一番厄介な奴までお目覚めとはなぁ。どうだ、よく眠れたかよ…死神?」


「ええ、おかげ様で。次はアナタが眠ってくださいな、永遠に…ね。」


 集団リンチの始まりか。



「さて、もういい加減これ系のセリフも言い飽きてきたが…今度こそ終わりだ暗黒神。」

「フッ…フハハハ!まったくホントに舐められたもんだなぁ俺も。笑えるぜ。」

「…何を笑っている?この人数でかかれば、貴様とてひとたまりもあるまい?」


 教師や賢二らの復活に加え、冥符の寝返り…どう考えても自分にとって分が悪い状況にも関わらず、ヤケにでもなったのか急に笑い出した暗黒神。


「ならば見せてやろう。“神”と呼ばれる者と、そうでない雑魚の違いをなぁ!」


 暗黒神は力を搾り出した。

 これまでに無いほど邪悪なオーラが周囲を包む!


「きゃ…きゃああああああああ!」

「くっ、やはりさすがですね…。みなさん大丈夫です?気を抜くと死にますよ!」


 悲鳴を上げる女性陣。

 あの教師でさえも辛そうだ。


「さすが大将、なんて強大なオーラだ…!そ、それにこの邪悪な感じ…心が、乱される…!」

「も、もう…魔法防御するので…精一杯で…!宿敵君は…?」

「厳しいね…。とてもじゃないが、反撃どころじゃ…ない…!」


 宿敵は元からできない。


「ふぅ~…この暗黒魔法は発動条件が厳しくてなぁ。瀕死にならなきゃ出せんから賭けだったが…うまくいって良かったぜ。」

「その領域…まさか魔界の…!」

「ほぉ、さすが博識だな死神。その通り、この中なら魔界の魔力で回復できる。」

「くっ、そうはさせな…痛っ!」


 宿敵は領域に入り込もうとした。

 だが謎の力に弾かれてしまった。


「フッ、残念だったな小僧。この領域には邪悪な者しか入れな…」

「ふむ。なかなか心地よい空気だ。」

「入ってるぅーーーー!!」


 勇者は癒されている。



「なっ、なぜだ貴様…!なぜこの中に入って、無事でいられる…!?」

「む?無事も何も…むしろ元気になっていくようだが何か問題か?」


 暗黒神はやむを得ず魔法を解いた。


「くっ、俺だけのつもりが…まさか敵まで回復させちまうとはな…!」

「さぁ勇者君、今のうちに畳みかけましょう。私もサポートしますので。」

「あん?邪魔するな先公、最後の手柄は『勇者』が独り占めと決まってるんだ。」

「えぇ~、ズルいよ勇者君ばっかり。みんなで独り占めしたいよ。」

「悪いな姫ちゃん、独り占めは二人じゃできないんだ。一人の特権なんだよ。」

「じゃあ間をとって『三本締め』でいいよ。」

「よーし野郎ども、お手を拝借ぅ!!」

「って真面目にやれや!ちゅーか何と何の間をとったらそうなんねん姫!?」


 相変わらずの姫と勇者。

 だが今回の教師はこの流れに乗る気は無いようだ。


「さて、ではまず…自由を奪わせてもらいますか。先ほど自分から閉じ篭ったくらいですし、閉じ込められても問題は無いでしょう?」

「やめとけ死神。もはや貴様には、幻術を現実化できる程の力はあるまい。」

「お見通しですか…。でも今のアナタになら、ただの幻術があれば十分ですよ。」

「ほぉ、いいだろう。俺がかつて否定したその力、最期に見せてみろよ。」

「いいですか?よく見ていてください。これが高位の束縛魔法…〔監禁〕です!」


 教師は〔監禁〕を唱えた。


〔監禁〕

 魔法士:LEVEL50の魔法(消費MP62~∞(※維持した時間だけ消費する))

 対象を数メートル四方の空間に閉じ込める魔法。上位者が使えばトイレも付く。


「…オイオイ失望させるな死神。幻術はどうした?お前はその程度の男か?」


 ミス!暗黒神は余裕で避けた。


「おっと、よそ見とは余裕だな暗黒神!この俺がいることを忘れたか!?」

「邪魔だクソガキ下がってろ!吹き荒れろ暗黒の砂風、『暗黒砂漠風』!」

「ぐっ…!距離をとられちゃこっちが不利だ、なんとか接近戦に持ち込ませろや先公!」

「任せてください勇者君。ではもう一度いきましょう、束縛魔法…!」

「だから、そんなモロバレ魔法なんぞ…」


 教師は杖を構えた。

 だが、教師が魔法を唱えることは無かった。


 教師とは正反対の位置…暗黒神の背後に現れたのは、予想外の人物…



「えぇ~い!〔監禁〕!!」



 まさかの伏兵、盗子が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ