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~勇者が行く~  作者: 創造主
第三部
87/196

【087】天空城の戦い(2)

 勝つとか負けるとかの前に、立ってるだけで奇跡な余一にハリーの相手を任せ、一同は先へと急いだ。


「余一…大丈夫かなぁ?下っ端っていっても一応は神の使いなわけだし…」

「フン、よく考えろさ。今さら気遣うまでもなくアイツは元から手遅れさ。」

「まぁ確かにアレほど捨て駒に向いとる奴もそうそう…ん?なんや…?」


キラン


 遠くで一瞬何kが光った。


「へ…?」

「ッ!!危ない盗…あーもー間に合わへんっ!!」


 商南は『転換符』を使った。

 商南と盗子の位置が入れ替わった。


「くわっ…!」


 痛恨の一撃!

 謎の攻撃が商南の胸に直撃した。


「あ、商南…!アンタまでアタシをかばって…!?」

「くっ、迂闊やったわ…。なんでウチが…アンタみたいなボケクソカスを…」

「た、助けられた身分で言いづらいけどちょっと言い過ぎじゃない!?」

「チッ、身代わりの術の類…?まぁ一人片付けたのは変わらないし、良しとしようか。」


 光の見えた方から、小太りの女が現れた。

 両手に筒のようなものを持ち、頭にも同じようなものを結いつけている。


「誰さアンタ!?よくも商南を…!なんでもっとちゃんと狙わないのさ!?」

「それはアタシなら良かったって意味!?ねぇそーなの!?」

「私は『吸撃士スイゲキシイ』の『吸子スイコ』。毒吹き矢のお味はいかが?」


 商南は猛烈に後悔した。


「その毒は強力だよ?もって五分、解毒剤は無し。可哀相だけど諦めてね。」

「な、なんちゅーこっちゃ…。こないボケクソカスアホバカブサイクのために…」

「わーん!素直に悪いと思えないよー!」

「そんなことより攻撃ですぅー!食らっちゃってくださーい!エイッ!」


 弓絵は矢を放った。

 ミス!吸子は攻撃をかわした。


 矢は商南に命中した。


「うっぎゃー!!」

「おっと!奇襲とは悪くない手だけど、大声出してからじゃ意味ないよねぇ?」

「な、何やってんだよバカ弓絵!当たらないどころか商南にトドメ刺す気かよ!」

「おバカは盗子先輩ですぅー。濁った目をひん剥いてよく見たらどーですか~?」


 盗子は商南の方を見た。

 なんと!射られた箇所に回復魔法の光が見える。


「なっ!?解毒の魔法…だと…!?」

「えっ、回復魔法!?アンタ『療法士』になったの!?」

「全っ然違いますぅー!弓絵は相原先生に教わって、『弓救士』に生まれ変わったんでーす!」


弓救士キュウキュウシ

 『弓撃士』が回復能力を覚えるとクラスアップできる中級職。

 矢に回復魔法を込めて射ることが可能だが…


「い、痛たたたたっ!今度は矢傷がめっちゃ痛いねんけど!?」


 射られた箇所は普通に痛い。


「というわけで回復はお任せをですぅ!盗子先輩は死んでも治しませんけど!」

「なんでだよ!ここまできたらもう運命共同体じゃん!治してよ!」

「先輩のは弓絵の管轄外なんで、整形外科に行ってくださーい。」

「誰もブサイクを治してなんて言っ…誰がブサイクだよ!!」


 自慢の毒矢が解毒されるという想定外の展開に少し混乱していた吸子だったが、二人の低次元の争いを見ている間に冷静さを取り戻してしまったようだ。


「まさか解毒されちゃうとはねぇ…まぁいいや、毒矢連射で全員仕留めてやる。」

「連射…まとまってたら危険ぽいさ。ここは逃げの一手さ、動けるかさ商南?」

「ふぅ~…まぁだいぶ楽にはなったわ。逃げるんやったら負けへんでぇ?」

「おっと、そう簡単に逃げれるとは思わないでよ?絶対に逃がさない。」

「そうだ弓絵、アンタ残って食い止めてよ!飛び道具同士でちょうどいいし!」

「イヤですー!弓絵は勇者先輩と電撃的に再会する運命にあるんですぅー!」


 これ以上敵がやってくる前になんとか先を急ぎたい盗子だったが、一刻も早く勇者に会いたい弓絵が簡単に退くはずがなかった。


「ゆうしゃ…あ~あの蒼髪の彼?よ~く覚えてるよ、可愛い子だったしねぇ。」

「ここは弓絵が任されましたー!」


 弓絵は邪魔な芽は早めに摘むタイプだった。


「オッケー頑張れさ!先に行ってるさ!!」

「ご冥福をー!」

「逝かないよ!?」


 だが可能性は高い。




 余一に引き続き、弓絵も敵を引き受けてその場に残った。

 この手の展開のよくあるパターンに突入したようだ。


「ハァ、ハァ、ちょっ、ちょっと休まない?ずっと走りっぱで、もう…!」

「あん?なんやねん盗子、軟弱なやっちゃなぁ…と言いたいとこやけど、ウチも賛成や。まださっきのダメージが…なぁ。」

「じゃあ休むとするかさ。なんか広間に出たし、敵が来たら気づきそうだしさ。」

「だよね~。んじゃ、お茶にでもしよっか。紅茶とコーヒーどっちがいい?」

「ッ!!?」


 まるで最初から一緒にいたかのように、当たり前のように仲間に加わっていたのは、盗子らと同年代の少年。額には赤いバンダナを巻き、パンクな感じの衣装に身を包んでいる。


「っていきなりいるし!え、いつの間に!?そしてなぜに溶け込んでんの!?」

「ん?まぁいいじゃん。俺は『冥符メイフ』、一応敵側だけど気にしないで。」

「いや、気にするよ!いろんな意味で引っ掛かるよそのキャラは!」

「にしてもキミら、かっわいいよね~!メチャメチャ好みだよ、特にキミ!」

「え、ホントに!?ありがとー!」

「指を差された商南の立場が無いさ。」

「ぜ、前半に食い付いてみただけだよ!“キミら”って言ったじゃん“ら”って複数形で!」


 どうやら冥符は商南に興味津々のようだが、商南の方は興味が無さそう…というか、むしろ苦手だと言わんばかりの冷たい視線を向けている。


「はぁ?ウチは軟派な男は好かんで。生まれ変わってから出直してきぃや。」

「て言われたのが前世の話でね?いやぁ~待ったよ再びこの時を!久しぶり!」


 無駄にポジティブなのが現れた。



 そして数分後。敵のはずがどうにも敵らしさが感じられない冥符から、色々と情報を引き出していった。

 商南に気に入られたいからか、冥符の口からは重要そうな内部情報までポンポン

飛び出した。


「に、二百!?十闘士ってそんなにいんの!?ホントなにが十闘士だよ!」

「まぁトップ3以外は大したことないけどね。怖いのは…ん?聞いてるハニー?」

「誰がハニーやねん!ドタマかち割って脳ミソで味噌汁作ったろか!?」

「うわーお!料理まで得意なの!?なんて素敵なんだマイハニー…!」

「だ、駄目やコイツ…。料理しようにも腐ってもうてるわその脳…」

「で?怖いってのは誰のことさ?暗黒神以外に注意すべきは何人なのさ?」

「あ~、『四天王』…彼らは桁外れだね。普段は城にはいないけど、いま集結しつつあるみたいだ。うち一人は別件で外せないみたいだけどね。」

「し、四天王…!?ちなみに聞くけど、そいつらは…何人?」

「フッ、心配しなくていい。四人さ…今はね。」


 増える前に急げ。



「え、行っちゃうの!?いやいやいや!もっと愛とか語り合っていようよ!」

「あ~ハイハイ。そーゆーんは要らんちゅーたやろ?おととい来やがれ~やで。」

「て言われたのが明後日の話で…」

「もうええっちゅーねん!ウザいから消えろ言うてんねんボケがぁ!」

「オーケーわかった、照れてるんだってことで自己完結。俺はめげないタイプ。」

「ウザッ!ほんまウザいわ!ムカついてしゃーないわ!」

「第一印象は最悪…でもそれがいつしか愛にぃ~?」

「変わらへん!その前向き過ぎる発想はどっから来んねん!?」

「遥かかなたの愛の国。」

「そこへ帰れや!」

「やれやれ…ホント照れ屋さんだ。」

「あーもうイヤや!もう相手してられへん!みんな行こ…おれへん!!」


 商南は置いてかれた。




 そんなこんなで商南を置き去りにし、盗子と暗殺美は上へと急いでいた。

 その道すがらで二人は、なんだかそれっぽい扉を発見したのだった。


「なんかあからさまにそれっぽい扉だね。“3”て書いてあるけどこれって…」

「まぁさっきの話から察するに、『十闘士』とやらのナンバー3の部屋と考えるのが妥当さ。」

「ど、どうする…?」

「フン、聞くまでも無いことを聞くなさ。決まってるじゃないさ。」

「…だよね!」


 二人は素通りした。



「…んで、次は扉が二つ…。ここで行き止まりだし、今度はさっきみたく素通りは無理っぽいさ。」


 二つの扉には、それぞれ“○”と“×”が書かれている。


「イメージ的にはやっぱ“×”が悪いけど、引っ掛けって線も濃いよね…?」

「こういう時は悪の思考を読むのさ。それだけの材料をウチらは持ってるさ。」

「それは、“もし勇者だったらどう考えるか”…ってこと?」

「そうさ。敵が奴なら、“○”と“×”…どっちに地獄を用意するのか、さ。」

「う、う~~ん…!」

「むぅ~~…!」


 そして二人は、同じ結論に辿り着いた。


「両方…」


 明るい未来が見えない。



「うーん…まぁこーゆー時は、二手に分かれるのが普通…なのかなぁ?」

「じゃあ同時に開けるさ。アンタ“×顔”だから“×”に入れさ。」

「なんだよ“×顔”って!かなり納得いかないけど…もういいや!行くよっ!」


 二人は同時に扉を開けた。


 だが中は繋がってた。


「ってバカァー!こんなオチかよ散々悩んで損したよ!ハラハラ損だよ!」

「その怒りは出てきた敵にぶつけるがいいさ。さすがの私もキレ気味さ。」

「さぁ出て来ーい!もう本気でブン殴ってやんだかんねー!んもぉー!!」


 盗子は大声を出した。

 オドオドしながら銀隠が現れた。


「あ、あの…その…ゴメンなさい…」

「えっ、謝るの!?なんで弱気なの!?いや、謝ったって許さないけども!」

「悪気は…悪気は無くて…。本当にゴメンなさい、全てがゴメンなさい…」

「な、なんか調子狂うんだけど…ホントにアンタ敵さんなの?」

「生きててゴメンなさい…。もう…死ねば…死ねばいいんだ…アナタなんて。」


 ヤル気マンマンだった。


「ん…?ハッ!よく見たらアンタ、前に東の『竜巻のほこら』で会った奴さ!」


 なんと、暗殺美は銀隠と面識があるらしい。


「あぁっ、アナタは…!ゴメンなさい、覚えてなくてゴメンなさい…」

「スッパリ忘れんなや!『風神』の装備を奪い合った仲じゃないかさ!」

「え、なになに風神て!?アタシのいないうちに一体どんな展開に!?」

「私と商南が見つけた風神の装備を、卑怯にも横取りしてったのがアイツさ。」

「マジで!?じゃあ敵は神の装備持ってんの!?マズいじゃんヤバいじゃん!」

「あ、あのぉ…うるさいんで死んでください。ゴメンなさい本当に…死ね。」

「超攻撃的!?何がゴメンだよ!アンタ全然悪いとか思ってないくせにっ!」

「全然ゴメンなさい…」

「どう受け取るべきか悩むよ!」


ガンッ!


「んぎゅっ!」

「えっ!?」


 暗殺美の背後からの攻撃。

 銀隠の意識を奪った。


「先制攻撃さ。」

「もう何度か言ってるけど、そーゆーのは正義の味方としてアリなの…?」

「やれる時にやる。この件に関しては不本意だけども勇者と同意見さ。」


「チッ、よくも銀隠を…妹をやってくれたなクソ小娘ども!許さんのじゃー!」


 妹が倒されたことに気づき、部屋の奥から金隠が現れた。


「あ、アンタは…?“銀”って書かれた兜のが『銀隠』で、アンタは“金”だからなんとなく想像はつくんだけど…」

「我輩は『金隠』。呼ばれて返事したら、この『封魔のひょうたん』に吸い込んでやらぁ!」


 嘘が付けない子なのか。


「え、えっと、今のはどーゆー…?自分の手の内をアッサリ明かすなんて…」

「簡単に信じたら負けさ。状況的に罠の可能性はかなり高いはずなのさ。」

「わ、我輩と…したことが……」

「でもなんか演技とは思えない勢いでヘコんでるけど…?」

「我輩はいつもこうじゃ…『雷神』の装備を勢いで吸い込んじまった時といい…」

「ら、雷神…!?てことはもしかして、戦仕とやり合ったりしたのかさアンタ?」

「戦仕…あぁ、そういやそんな名じゃったなぁ。まぁもう生きちゃおるめぇが。」

「えぇっ!戦仕君が!?その中に!?雷神の装備ってのと一緒に!?」

「しかもさっきの話から察するに、“能力を聞いてなお吸い込まれた”と…?」

「そ、そんな…!」


 そんなアホな。


「戦仕とやり合ったんなら、きっと強敵…アンタが十闘士のボスかさ?」

「あぁそうじゃ。我輩らがトップ2…他の雑魚どもとは一緒にせんことじゃ。」

「気を付けて!念のためだけど絶対名前は知られないようにね“暗殺美”!」

「言ったそばから思っきし呼ぶなや“クソ盗子”!!」

「そうか、暗殺美とクソトーコか。変な名じゃなぁお前ら。」

「“クソ”は余計だよ!盗子だよ盗子!」

「盗子…?」

「そうだよ!あ゛っ…!」


 盗子はひょうたんに吸い込まれた。


「まずは一匹…オメェもせいぜい気を付けるんじゃな、あさみん。」

「あさみん言うなや!“暗殺美様”とでも呼ぶがいいさクソが!」

「暗殺美…様?」

「そうさ!あ゛っ…!」


 暗殺美も後に続いた。

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