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~勇者が行く~  作者: 創造主
第二部
54/196

【054】ガラン洞窟の決戦

僕の父と名乗る人と元五錬邪の黄色い人と合流し、数時間後。

電力車を降りてしばらく歩いた僕達は、ついに目的の洞窟に到着した。


「ここか…ここにその、五錬じなんとかがいるんだね…」

「『五錬邪』だよ勇者!そこまで覚えてんなら全部覚えようよ!あと半歩だよ!」


 勇者一行が辿り着いたのは、相原総合病院から見ると北西に位置する洞窟『ガラン洞窟』。どうやら医師の最後の情報だけは正しかったようだ。


「よし、じゃあ早速行こう。悪は早急に絶やさなきゃならない。」

「いや待つんだ勇者!よく見てみろ、その入口の手前…“落とし穴”だ。」


 早速踏み込もうとした勇者を制止した勇者父。

 その指す方向には、確かに落とし穴が隠されたような痕跡がわずかに見える。


「あっ、ホントだ!すんごい見えにくいけど確かにそれっぽい感じだよ!これに気付くとか凄くない!?」

「落とし穴って響きはちょっとショボい気もするけど…でもよくわかりましたね!確かに凄いですよ!」


 盗子も賢二も絶賛したため、父はとてもいい気分になった。


「フッ。私にかかれば、この程度の罠を見破るなんて容易なことさ。えっへん!」

「よっ!見直したよ勇者親父!やっるぅ~☆」

「まぁレッドが仕込んだ技術ですけどね。」

「ってアンタが元凶かよ!だったら話が変わってくるよ!」


 黄錬邪のネタバレにより、珍しく上がった勇者父の評価は急降下した。

 しかし、引き続き自信に満ちた表情で罠を評価し始める父。


「だが群青の奴もまだまだ甘いな。こんな簡単にバレるようじゃああぁぁぁ…」


 そして鮮やかに落ちていった。

 そんな父の無様な姿を見て、溜め息を漏らす勇者。


「やれやれ…。どうやら僕の父はマヌケな生き物らしいなぁぁぁぁぁぁ…」


 勇者も鮮やかに落ちていった。




知っていた落とし穴に落ちるという、なんとも耐え難い精神的苦痛を味わった僕と父。こうなってはもう仕方ないということで、賢二やミリガンも後を追って降りてきた。黄色い人だけは上の方から攻めるらしい。


「くっ、あんな見え見えの罠に…!僕はなんてウッカリ者なんだ!!」

「大丈夫だよ勇者君。落とし穴って時点で、なんとなくこの展開は読めたから…」

「そうだぞ勇者、悔いても仕方あるまい。今は前に進むことを考えるんだ。」

「もっともな意見だけどアンタに言われるとなんかムカつくよね!」


 盗子は少し傷つけてやろうと罵倒したが、勇者父の耳に届いてはいなかった。


「…まぁ、進むのはもう少し…後になりそうだがな。」


 そう言いながら父が目を向けた先には、なんと巨大な魔獣の群れがいた。

 どうやら既に囲まれているようだ。


「え…?ウッギャーー何あれ!?」

「グルルルルルッ…!!」

「十…二十…け、結構いるよ!ど、どうしよ勇者!?」

「安心してクリストファー。僕がなんとかしてみせる!」

「う、うん!頑張ってね勇者!『盗子』だけども!」


 勇者は抜刀を試みた。

 だが剣はビクともしなかった。


「ぬうぅぅっ!抜けない!鞘に固定されて…!なんでなんだー!?」

「ま、マジで邪悪な者にしか抜けないのその『ゴップリンの魔剣』!?じゃ、じゃあ頑張ってよ勇者親父!」

「私は『元勇者』。基本的に何もしない。」

「しろよっ!!」


 賢二は飲み込まれている。



なぜだかどう頑張っても僕は剣が抜けず、賢二は知らぬ間に飲み込まれていて、父さんはやる気が無い。つまりかなり悪い状況だ。


「敵は多いけど…とりあえず賢二の救出を最優先に片付けよう!」

「そ、そだね!じゃあアタシがなんとか敵を引き付けるよ!」

「駄目だ!無理をするなジャックリーン!」

「で、でも…!いや、『盗子』だけどね!?」

「お前じゃ誰も惹きつけられない。」

「ってそういう意味の“無理”かよ失敬な!死ねっ!!」


「…ああそうだな!死んじまえよ全員揃ってなぁ!!」


「むっ!その声は…!」


 突如聞こえた声に覚えのある勇者父が見上げると、落ちてきた穴から自分達を見下ろしている群青錬邪の姿が見えた。


「ゲハハハハッ!よく来たなぁレッド…いや、“元”レッドか。」

「フッ、久しぶりだな群青れ…うわっ!なんだその色は!?」

「テメェが決めた色じゃねーか!なにを今更驚いてんだよ!?」


 父はなぜか無駄に煽った。


「悪いけど、賢二が消化される前にお前を倒す。降参するなら今のうちだよ?」


 記憶は無いながら見た目で状況を察した勇者は、無駄とは思いながらも念のため確認してみた。

 だが当然、群青錬邪にその気は無さそうだ。


「風の噂で聞いたぜクソガキ?テメェ記憶が無ぇらしいな。そんなんで戦えるのかよ?」

「心配無い。僕には一切のやる気が無い父と、戦闘力の無い盗賊の仲間がいる。」

「メチャメチャ不安じゃねーか!そんなんでこの俺様に挑むってのか!?」

「御託はいい、来い!お前のような外道は僕が刀の…拳のサビにしてやる!」


 勇者は剣が抜けない。


「勇者よ、これを使いなさい。今はこんなものしか持ってないが、まぁ無いよりはマシだろう。」


 父は勇者に短剣を手渡した。

 勇者は『それなりの短剣』を手に入れた。


「さぁ準備はできたぞ群青錬邪!降りて来い…って、オイどこへ行く!?」

「フッ…悪ぃがテメェらと遊んでる場合じゃねぇんだわ。あばよ。」

「なっ!?に、逃げるのか!?待て…!」


 群青錬邪は去っていった。


「父さん、奴を追ってくれ!僕は賢二を助けてから駆けつける!」

「わかった。飲み物の買い出しは任せるんだ。」

「ちっともわかってないじゃん!なんでピクニック気分なんだよ!?」


 盗子はビビッて隠れていた割に偉そうだ。


「勇者よ、さっきのでわかったと思うが、恐らくこのガラン洞窟には他にも様々な罠が仕掛けられていることだろう。気をつけるんだぞ。」

「わかってる。父さんも気をつけて。」

「無論だ。もう二度と落とし穴に落ちるようなぁぁぁぁぁぁぁ…」


 親父は当たり前のように落ちていった。




すぐにでも群青錬邪を追いかけたい状況ではあったけども、賢二のことがあるのでまずは魔獣達を倒すことに努めた僕。とりあえず父さんのことはもう忘れた。


武器が使い慣れない短剣しか無くて手間取りはしたけど、残るはあと一体…なんとかなりそうだ。


「ハァ、ハァ…最後だ!アイツが賢二を食った奴で合ってるなジュリー!?」

「グ、グルルルッ…!!」

「あ、うん!あの傷がある奴で合ってるよ!盗子そう思うよ盗子ぉおおおっ!!」

「ごめんね魔獣。お前に恨みは無いんだけど…これも仲間のためなんだ!」

「グルォオオオオッ!!」

「行くぞ!思いつき必殺剣、『帝王切開』!!」


 勇者、会心の一撃。

 元気な何かが生まれた。


「やった!ちゃんと出てきたよ!まだ溶けてなかったみたい!」

「オイ起きるんだ!大丈夫か賢二!?」


 出てきた何かは繭のようなものに包まれていた。

 それを勇者は急いで短剣で引き裂いた。


「…ほぇ?」


 なぜか中から姫が出てきた。


「なんでぇーーー!!?」


 奇跡のイリュージョンが成功した。

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