【196】エンディング
世界を揺るがす大戦が幕を閉じ、少しだけ時が流れた。
そして―――
春。十五歳になった俺は、帝都に戻ってきていた。
あの一戦で受けた傷が深く、しばらく入院していた俺だが、見事な回復を見せて今は超元気だ。
大魔王の脅威に震えていた国民どももまた、今は穏やかな日常を取り戻していた。
「よーしみんな、十年に一度の『帝都祭』も近い!張り切っていくぞ!?」
「あんな事の後だ、今年は盛り上がっていこうぜー!」
「オォオオオオオオオオ!!」
帝都チュシンの城下町では、近く開催される祭りに向けて帝都全体が盛り上がりを見せていた。
そんな浮かれた光景を横目に、勇者と賢二はのんびりとただ歩いていた。
「…フン、気楽なもんだぜ。誰のおかげで笑ってられるのかわかってんのか?」
「大丈夫だよ。脅しに近い手口で散々強要したじゃない、“褒め称えよ”と…」
「そうか?最近は貢物も減ってきた。言い方が弱かったと今は反省している。」
「いや、反省すべき箇所がおかしいと思うんだけども…」
『魔王』認定される日も遠くない。
「あぁそういや賢二、他の奴らの動向は何か聞いてるか?」
「他の?えっと確か…絞死君は魔国に戻ったみたいだよ。血筋的に、いつか新たな脅威にならなきゃいいけど…」
「土男流もどこか行っちまったしな…随分と静かになっちまったもんだ。」
「凱空さんやマジー…もとい、欧剣さんは?」
「知らん。奴らの人生はスケールがデカすぎてついていけん。放っておこう。」
「まぁスケールうんぬんに関しては、みんなどっこいどっこいだと思うけどね…」
今や勇者もトップレベルだと言える。
「で、お前はどうなんだ?わざわざ呼び出すくらいだ、何かあるんだろう?」
「あ、うん…実は太郎さん達と、宇宙に行こうと思ってて。今日…発つつもりなんだ。」
「急だな…そうか。あの四人とってのは不安だろうが…む?だが暗殺美は?」
「え、暗殺美さん?ご両親のお墓を作るとかで実家に戻ってるけど…なんで?」
「報われんな…いや、なんでもない。ところで姫ちゃんはどうした?」
「それ…僕に聞く?」
「だよな…。やれやれ相変わらずか…だがまぁ、それがいい。」
「勇者君はどうするの?」
「…さあな。考えは無いでもないんだが、いまいち踏ん切りがつかん。」
勇者はなんとなく歯切れが悪そうに答えた。
「へぇ~、勇者君が及び腰とか珍しいねぇ。」
「なっ、この俺が臆しているとでも!?フザけるな、この俺を誰だと…」
「だったら、行きなよ。普段なら止めても突っ走っちゃうじゃない。ね?」
賢二は何か言いたそうに勇者を見ている。
「…チッ、賢二の分際で生意気な…。だがまぁ仕方ない、ならば行くとするか。」
「どこに行くかは教えてくれないの?」
「ん?まぁチョイと…ヤボ用を済ませに、な。」
「…ヤボ用…か。なら聞くのはヤボだよね。」
「ああ。じゃあ…行ってくる。」
「うん。バイバイ勇者君。」
「あばよ賢二、達者でな!」
勇者は駆け出した。
「あ…ゆ、勇者君!」
少しずつ小さくなる背中を見つめていた賢二だったが、辛抱堪らず呼び止めてしまった。
「また…また会えるかな?また僕ら…一緒に旅…できるかな…?」
「あん?知るかボケ、そんなもん“運命”の奴にでも聞きやがれ。」
「じゃあさ!もしいつか、世界が再び邪悪な雲に覆われたら…やっぱりキミは行くの?」
「フッ…もちろん行くさ!なぜなら俺は…」
新星暦535年―――
正義と悪の間に生まれた少年は
幾多の過酷な旅を経て
そして伝説となった。
その道中
様々な者達と出会ったが
その大半は既に
面白いくらい盛大に
亡き者である。
そんな中
生き残ったわずかな者達は
儚くも、強く生きたという。
〔キャスト〕
【賢二】
大戦の後、太郎らと共に宇宙へ発つ。
その後組織した『蒼茫義勇軍』の頭領として各地の弱き者を助け、後に『鉄壁の大賢者』の名で長く語り継がれた。
帝都での別れを最後に、勇者と会うことは二度と無かったという。
【太郎】【下端】【ライ】【召々】
そのお気楽な性格か豪快な逃げ足か、要因は不明だが無事に生き残る。
勢いで賢二と宇宙へ渡り、成り行きで世界の平和を守る正義の戦士となる。
だが、彼らがまともに戦っている姿を見た者は、一人もいない。
【暗殺美】
賢二の後を追い、宇宙へと向かう。
そして合流した『蒼茫義勇軍』では、斬り込み隊長として『暗殺者』にあるまじき目立った活躍を見せ、名を轟かせた。
健気なアタックもついには実を結び、賢二と結婚。二児の母となる。
【土男流】
泣く泣く勇者を諦め、一人旅に出る。
その無駄にアクティブな性格と、意外にも万能な資質から、リーダー的存在に成長。『奴隷解放軍』の長となる。
後に同志と宇宙政府に喧嘩を売るも失敗。獄中で命を落としたとか違うとか。
宿敵
戦仕
無職
麗華
皇子
勇者母(終)
弓絵
霊魅
武史
芋子
猿魔
血子
冥符
商南
剣次
勇者義母
校長
オッパイ仙人(蓮人)
封治
錬樹
無印
拳造
妃后
封護
栗子
案奈
美風
余命一年之助
女医(冴子)
美盗
白
法足
歌憐
門太
ポン老師
ワキスメル大佐
昭二
剛三
怠四
帝都守護隊
帝都隠密部隊
帝都突撃隊
奮虎
洗馬巣
美盗
暗殺人
暗殺死
麻音
皇太郎
無職父
賢二父(賢三)
メカ盗子
婆B
ロリコ
ペルペロス
美咲
亀吉
【チョメ太郎(フェニックチュ)】
『契約獣』でありながら、主人を無視する生き方が変わることはなかった。
後に世界中の魔物を束ね帝都を襲撃。あわや壊滅かというところまで追い込んだが、飽きたらしく途中で撤退した。
似たようなことは何度か繰り返された。
【絞死】
魔国へと戻り、国を再建し王位に就く。
父譲りの冷静で強引な政策により、『新魔国』は長きに渡り栄華を誇った。
実は女性で、『氷の女神』と揶揄される程の美女に成長するが、想い人でもいたのか、生涯独身を貫いたという。
【相原】
大戦で傷ついた者を癒すため世界各地を巡り、後に某所に大病院を築く。
人の業とは思えぬ脅威的医術で多くの者を治し、人は彼を『医神』と呼んだ。
その犠牲となった患者の数も尋常ではなかったと聞くが、それはまた別の話。
【教師(凶死)】
暗黒神との戦いにおいて、天空城の爆発に巻き込まれ命を落とす。
その死は霊魅に召喚されたことからも明らかなのだが、なぜかその後も、彼を見たという者は後を絶たなかった。
その真相を追った者は、ことごとく姿を消したらしい。
暗黒神サタン
邪神バキ
破壊神レーン
鬼神ヤナグ
守護神マリモ
死神チャティ
竜神ウザン
太陽神ヒノテ
女神アゲハ
風神ビュンビュン
雷神ビリピー
魔神マオ
大魔王(救世主)
帝雅
苦怨
夜玄
初代黄錬邪(春菜)
初代黒錬邪(冬樹)
初代群青錬邪(夏草)
初代桃錬邪(秋花)
初代黄緑錬邪(巫菜子)
二代目赤錬邪(途冥人)
三代目赤錬邪(博打)
二代目桃錬邪(観理)
解樹
葉沙香
オロチ
忍美
断末魔
鴉
華緒
黒猫
金隠
銀隠
銅隠
二代目群青錬邪(伊予平)
二代目黄緑錬邪(墓夢)
二代目黒錬邪
央遠
右遠
左遠
ハリー
吸子
パジリスキュ
【マジーン(欧剣)】
『終末の見届人』として、真の終末を見届けると言い残し、闇へと消えた。
その言葉通り、世界に危機が訪れる度に姿を現したが、終末は訪れなかった。
そのため「彼が来ると世界は続く」と噂され、戦場では重宝がられたという。
【魔王】
大魔王の次の新たな脅威となるかと思われたが、「くだらん」という一言を残して、彼もまた去っていった。
宇宙では三年に渡り賢二と死闘を繰り広げたが、決着がつくことはなかった。
そして彼は、姿を消した。
【勇者父(凱空)】
大戦後は世界各地でのんびり暮らす。
年老いた後もその力は衰えることを知らず、頼ってくる者は多かったという。
だが追う者も多く、前人未到のSSS級首、懸賞金3金(約3億円)という大記録は、永久に破られることはなかった。
【姫】
神出鬼没は相変わらずで、大戦後にもまた人知れず行方をくらませた。
その後、自由気ままに楽しく遊ぶ様子が、あらゆる地域で目撃されている。
だがその姿はどういうわけか、何年経っても少女のままだったという。
ソボー
凶優
スイカ割り魔人
ゴップリン
べビル(魔王母)
Y窃
ナンダ
族長(山塞)
強敵
オナラ魔人
那金
偽ゴクロ
ワルツ
ポルカ
兄丸
女闘
ジョニー
キン太
海竜
ビッグ・フッチョ
飛竜リュオ
オギャレス
ロリータ・コング
移食獣
業火竜
豪雪竜
ソボー海賊団
野蛮家族
人獣奇兵団
筋肉兄弟(化院、斜院)
首無し族
栗尾根
ゴッピリン
魔国王
貧乏神
早季子
大ボラ兄弟
英羅
雄飛
亡者
魔姫
英雄
その他の適当な人々
〔ナレーション〕
オチの人
〔キャラクターデザイン〕
画家
毛皮屋
のっぽ ゴン太郎
チーズin
りんごジュース
深音
ナカミヤ
nano
殺芽
RR
もこみ
菱貝ゆすらうめこ
臣里
緑青
あお
デロロ
毛
旅人その80
蒼馬
朱手
「ふぅ、やれやれ。なんか今日も…平和だなぁオイ…」
賢二と別れ、帝城から少し離れた丘の上で一人…寝転んで空を眺める勇者。
するとそこに、呼んでもないのに盗子が沸いて出た。
「ゆ~う~しゃ♪なぁ~にして~んの?」
「あん…?チッ、盗子か…チェンジ。」
「いや、そんなシステム無いよ!?何と一緒にしてんの!?」
「じゃあ、三回生まれ変わってからもう一回死ね。」
「“出直して来い”とかじゃなくて!?じゃあ何のために生まれ変わるの!?」
「ま、盗子だからな。」
大魔王戦で色々あった二人だったが、特に関係に変化は見られなかった。
「…ねぇ、なんでそんな酷いことばっか言うの?たまには優しくしてくれたっていいじゃん!」
「いーや、言い続けるね。一生言い続けてやるよ。」
「ムッキィー!むっかつくー!アンタなんか…」
「一生…な…」
「えっ…?」
「ケッ、いいから失せろ!邪魔なんだよクソがっ!」
「ちょ、待ってもう一回!もう一回言って!聞こえなかったからマジで!」
「聞こえなかったんならいい。別に大した話じゃない。」
「隠されると余計に気になるってば!ねぇ言ってよ言って!」
「う…う・るっ・さ・いっ!!」
ザシュッ!
「うっぎゃーーーーー!!」
【勇者】【盗子】
大魔王から世界を救い、真の英雄となった『勇者』。
世界を導くために生まれた、選ばれし者『天帝』。
富、名声、権力…あらゆるものを手に入れた二人。
そんな、二人の旅は―――
〔キャラクター提供〕
ゴリガン(暗殺美)
妖狐(巫菜子)
柳瀬あき(武史・美風)
匿名希望(芋子)
こよまま(白)
ささ(余命一年之助)
SHINTA(栗子)
ワフ(土男流)
minami(案奈)
ムラサメ(博打)
ゴウ(歌憐)
小倉優子(メカ盗子)
テイル(ワルツ&ポルカ)
鳩尾(兄丸)
風雲(女闘)
正宗(忍美)
平八(キン太)
star(ジョニー)
〔スペシャルサンクス〕
てん
Clown
せもし
ほっけ
珍獣
ルース
小烏丸
紺にゃ
RR
暇猫
朱手
ナズキ
平平
サラヤ
な隕石
みっく
しゅ
物書きもどき
エルドラオ
castle
ルミナス
かすみ
張学
ナズキ
灰
青海波
もぐら
RR
なまけもの
蒼菜
朱手
ガットリ
凪縞
ジン
ai
はぴ☆ねす
鎮音
「さ~て、じゃあ…行くかな。」
「え、行くって…旅に出るの?人々に称えられながら、ふんぞり返って生きるって話じゃなかったっけ?」
「フッ、華麗に飽きた。」
「やっぱり…。でもさでもさ、旅って言ってももう大陸全部回っちゃったよね?」
「その名も『桃源星』…宇宙には、楽園のような星があると前に聞いた。」
かつて大魔王が目指していた星がそれだ。
「ヘェ~楽園か~…なんか楽しそうだね!うん、アタシも行くっ☆」
「死ね。」
「なんで!?“YES”でも“NO”でもなくなんで“死ね”なの!?」
「お前なんてそんな扱いで十分だ。それはもう一生変わらない。」
「ふ、フンだ!いいもんねーだ!耐え抜いてやるもんね、一生!」
「…ケッ、雑魚の分際で生意気な…ったく、好きにしろ。」
「うん、大好きだよっ勇者☆」
―――まだまだ、終わらない!
〔制作・著作〕
創造主
~勇者が行く~
「よし、行くぞ!」
「うんっ☆」
完
この作品は、2003年2月に書き始めて約八年後(2011年1月)に完結したのですが、当時のものはシナリオ形式だったため、ちょっと小説っぽい形式に書き直してみようかと一念発起。2018年春頃から書き直しを開始するも、小説とか全く読まないので正解がわからず悪戦苦闘。もう我流でいいや…と開き直って書き進めました。
話に矛盾が出ないように第一部・第二部を一通り書いてから投稿を開始したので、なろうに載せ始めたのは2019年末。完結したのはこの2023年春なので、直し始めてから5年、最初から考えると20年という、とんでもない月日を費やしてしまいました。
これだけ時間をかけただけあって、書籍化、漫画化、アニメ化、映画化、実写ドラマ化、ハリウッド映画化…ということも一切なく、特にバズることもなく、ひっそりとその歴史を閉じようとしているこの作品。そう、この世に神なんていない。
なお、最後に実施された『最終キャラクター人気投票』の結果はこちら。
https://yusha.pupu.jp/yusha/souko/05ninnki.htm
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