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~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
181/196

【181】最後の聖戦(13)

 暗殺美が助っ人に現れるも、劣勢には変わらない状況の竜神戦。

 相変わらず逃げ腰な賢二だが、今回はさすがに何か…少し違うようだった。


「さぁ逃げ回るさ!四肢が千切れんばかりの勢いで走っ…」

「…いや、攻めよう。動き回ってできる隙が、きっと僕らの唯一の勝機なんだ。」

「勝機なんて無いヨ。」

「打ち合わせてる時間は無い…ぶっつけでいくよ暗殺美さん!僕に合わせて!」

「うん…☆あ、フン!わかったさ、意地でも合わせてやるから覚悟しとけさ!」

「イイネ、来イッ!!」

「勝負!!」


 賢二は〔疾風迅雷〕を唱えた。

 暗殺美は〔電光石火〕を繰り出した。


〔疾風迅雷〕

 賢者:LEVEL15の魔法(消費MP120~∞(※維持したぶん消費する))

 速度UP系最上級魔法。夏休み最終日に振り返る夏休みの過ぎ方くらい早い。


〔電光石火〕

 暗殺者:LEVEL60の特技(消費MP0)

 目にも留まらぬ早さで敵を仕留める究極奥義。眼前の蚊を殺す時のあの感じだ。


「み、見えナイッ…!?」

「フン、それはそうだろうさ!私も見えないしさっ!」

「僕も見えないし…!」


 同士討ちの危機が。


「うぉおおおおりゃああああああ!死ねさぁあああああああああ!!」


キィン!ガキンガキンッ!


「クッ、さすがは風神の靴…!破壊力は凄まじいネ…!」


チュィン!キィイイン!


「〔硬化〕を使った僕の脚も、甘く見ちゃ駄目だよ!」


〔硬化〕

 魔法士:LEVEL48の魔法(消費MP78)

 肉体の一部を硬化させる魔法。頑固オヤジの石頭の次くらいにカタい。


ガッキィン!


「なぁっ!?わ、私の剣山を砕くトハ…!」


「よしっ、これなら勝てブハッ!!」

「うわっ!?ご、ゴメンさ賢二君!見えなかっ…眼中に無かっただけさっ!」

「あ、うん…わかってるし…」

(わかっちゃダメェーーー!!)


 その後も何度か蹴った。



 そしてしばらく、賢二と暗殺美の超速攻撃の前に竜神は防戦一方だった。

 だが、この手の流れは…必ず一発逆転される流れだ。


「というわけで、油断せずいくさ!狙うなら剣が多く折れてる…あの位置さ!」

「えっ、“あの”ってどの辺!?全然見え…」

「気合いで察しろやこの鈍感男めがさっ!」


 主に恋愛的な意味で。


「チッ、ここまでカ…!」

「これで、終わりさぁああああああああ!!」


(ニヤリ)


 竜神の口元に一瞬笑みが浮かんだのを、賢二は見逃さなかった。


「ッ!!罠だっ、危ない暗殺美さ…」


ズバシュッ!!


 竜神のカウンター攻撃!



 賢二の右脚が宙を舞った。



「う、うわ゛ぁあああああああああああ!!」


「えっ…キャアアアアアアアアア!!けけけ賢二きゅうううううううううん!?」

「ハハハッ!油断しないと言いなガラ、盛大に油断したネ!」

「う…う…うわぁーーーん!私のせいさーーーー!うわーーん!!」

「だ、大丈夫だよ暗殺美さん…心配しないで…うぐっ!」

「で、でも…でも賢二きゅん…」

「脚なんて…すぐ…生えるから…」


 それはそれで心配だが。


「よ、よくも…よくも賢二君を…!クソ許せないのさ!!」

「フフフ…ワザと弱点を晒せば食いついてくると思ったヨ。馬鹿なのが悪いネ。」

「こうなったら私が守るさ!だからアンタはまた回復魔法で…」

「そんな時間、与えると思うのかネ?『火竜の吐息ファイアブレス』!!」

「なっ!?うわぁああああっ!!」


 暗殺美は爆風で吹き飛ばされた。。


「姿に惑わされたようだネ。この姿でも炎くらい吐けるヨ、威力は落ちるがネ。」

「うぐっ…!う、動けない…動けないさ…!こんな…時にぃ…!」

「お前は後にするヨ。まずは厄介な、『賢者』の方から始末するネ。」

「け、賢者じゃないさ!単なる賢二さ!勝手に“ゃ”足してんじゃないのさ!」

「む?賢者じャ…ないのかネ?」

「当然さ!舐めてんじゃないさ!!」


 むしろ舐めてなかったわけだが。


「まぁイイ、さぁいくヨ…トドメだァアアアアアアアアア!!」

「ちょっ、ヤメ…いやぁあああああああああ!!」


 竜神の攻撃。


 ミス!賢二は攻撃を避けた。


「ナニッ、どこだネ!?あの脚で避けられるはずガ…!」

「まさかホントに脚が生えたのかさ!?」

「うん、生えちゃったみたい…」

「って賢二君!?自分で言っといてなんだけど今そんなボケは…」


「いや、“翼”が。」

「け…えっ、天使君!!?」


 『エンジェル賢二』が降臨した。



「えっ、えっ、な、なんで賢二君に…翼が…!?」


 何の間違いか、脚どころか翼が生えてしまった賢二。

 だが説明はとりあえず後回しだ。


「なッ、飛んダ…だト…!?だが私の優位に変わりハ…」

「さっき言ったよね、“弱点を晒せば”と!つまり本当にそこが、弱点なんだ!」

「ッ!!!」

「右手を〔硬化〕!貫けぇええええええええええ!!」


 会心の一撃!

 竜神の首筋に突き刺さった!


「ぐぉあああああああああ!!だ、だガ…だがまだ終わラン…!」

「それは僕のセリフだよ!外からじゃ駄目でも、体内に直接放ったら…!?」


 この手のパターンのお約束の攻略法だ。


「魔法かネ!?マズイ…!!」

「勇者君、技を借りるよ…!必殺魔法、〔絶対零度〕!!」

「クッ、ならばまた『氷竜化』しテ…ェエエエエエエエエエッ!?」


ブォオオオオオオオッ!!


 賢二は〔絶対零度〕ではなく、〔火炎地獄〕を唱えていた。


「ナ…火炎魔法…だトォ…!?」

「魔法士なのに勇者に技を借りるとか、どういう意味かと思ったら…そういう意味かさ…!借りたのは“卑怯な手口”…」

「ガッ…ガハッ…か、体ガ…溶ケ…テ…」

「か…勝っ…た…」


 もはや立っていられず、竜神と賢二は倒れ込んだ。

 暗殺美は慌てて賢二のもとへ駆け寄った。


「け、賢二君大丈夫!?大丈夫なのかさ!?」

「あ、うん…。脚は焼いて血止めしたから、なんとか…大丈夫だよ。」

「いや、その“翼”がさ!それ人として大丈夫かさ!?」

「あぁ、コレね。コレは…もういいよ、美咲さん。」


パァアアアアア…!


 なんと!賢二の背中から美咲が飛び出した。


「クエ!」

「この前、契約したんだ。麗華さん…お姉さんの…契約獣だったから…」

「賢二君…って、ハッ!しまったさ、油断したらまた…」


 慌てて振り返る暗殺美。

 だが―――


「フン…見苦しいのハ、好きじゃないネ…。負けたヨ…殺すがいいネ。」


 竜神は静かにそう言った。

 どうやら抵抗する気は無いようだ。


「さ、やってやるがいいさ!サクッとトドメを刺してやるのも一種の優しささ!」

「いや、でも…」

「あれだけ渋ってタ…大魔法を、ここぞという時に決める…見た目ヨリも随分…大物だったネ…」


 死を覚悟した様子の竜神は、最後にとても穏やかに、賢二に語りかけた。


「強き賢者ヨ…お前は生き残リ、そしてその先…何を為すのかネ?」

「いえ特に(キッパリ)。」

「ガッカリさせてくれるなヨ…」

「フン、勝者が敗者にかける言葉は無いのさ。つまりはそういう意味さ。」

「いや、そんな悪人に仕立て上げられても困るんだけど…」

「フッ…フフフ…面白かったヨ。負けテ悔い無し…とは言わないガ…納得はデキるネ…」


 竜神の体は徐々に崩れ始めた。


「サラバだ頼りなき賢者ヨ…。願わくバ、地獄でまた…戦いたいものだガ…」

「全力でお断りします。」

「フッ、つれない…ネ……」


ヒュゥウウウウウウ~…


 竜神は風に消えた。



「や、やった…。なんとか…勝てたよ、勇者君…」

「ふ、フンさ!私がいなきゃ死んでた分際で偉そうにすんなさ雑魚めが!」

「ハ…ハハハ…手厳しい…な…ぐふっ!」

「け、賢二君!?うわっ、顔が真っ青さ!斬新なメイクにも程があるさ!」

「うん、ちょっと…血を流しすぎた…かな…。でも、役目は…果たし…」


 賢二は意識を失ってしまった。


「ちょっ、大丈夫賢二君!?し、死んじゃイヤァーーー!!」


 反応の無い賢二を抱きしめ、泣き崩れる暗殺美。

 もはや打つ手が無いと思われた、その時―――


「大丈夫、治療すればまだ助かるよ。僕らがなんとかする。」


 なんと、太郎が起き上がってきた。


「あ、とりあえずトマトジュースでも注射してみる?アハ☆」

「あっためるニャら毛布持ってくるニャ!もしくは熱湯とか!」

「あとは気合いッス!そして根性ッスよ!」


 その他の自称『自衛団』の面々もなぜか元気そうだ。


「なっ!?アンタら、確か死にかけてたはずじゃ…!?」

「フッ、敵が油断するくらい重傷に見せるなんて簡単さ。」

「甘く見ないでほしいよね☆」

「そうッス!特技は寝たフリ、死んだフリ!」

「それがアタチら!」


「自衛(ダンッ!ガンッ!ゴスッ!ドガンッ!)


 暗殺美は半殺しにした。




 賢二と暗殺美の活躍により竜神が倒れたことで、残す強敵は大魔王、帝雅、女神の三人となった。

 その中の一人、女神と熱戦を繰り広げていたのは姫。そして途中から、ナンダのマスター・サーバーを破壊した盗子も合流していた。

 果たして、勝敗の行方は―――


~大魔王城三階:女帝の間~


「ハァ、ハァ…ふぅ…。さて、ではトドメを刺してバスタイムでも…」


 倒れた姫と盗子を見下ろす女神。

 行方もなにも、既に終わっていたっぽい。


「ぐふっ、ま、まだだよっ!まだ死んだりなんか、しないんだからぁーー!!」


 かと思いきや、盗子は気力を振り絞って立ち上がった。

 満身創痍ではあるが、まだ致命傷は負っていないようだ。

 ちなみに姫はのんきに寝息を立てている。


「ハァ…まだですの?ゴキブリのようですわね。凄まじくお似合いですこと。」

「うっさいよ!ちょっとくらいキレイだからって調子乗んないでよね!」

「あら、この美しさがおわかりですの?ならご自身の醜さも…お可哀相に。」

「何その同情に見せかけた罵倒!?」

「で?まだ続けるとでも?身の程をわきまえていただけませんこと?」

「誰が諦めるかよ!この程度の逆境なんて、日常茶飯事だもん!」


 これまでもこれからも。


「さぁ、起きて姫!起きてってば!今度こそ協力して倒すんだよアイツを!」

「う~~ん…あとギャフン…」

「言わそうか!?言わせたげようかアタシが!?」


 姫は布団にもぐり込んだ。

 どこから布団を持ち込んだかは考えたら負けだ。


「無駄なことですわ。アナタ達も少しはやるようですが、所詮ワタクシの敵ではなくってよ?」

「フンだ!さっき息切らせてたクセによく言うよ!怖くなんかないもんね!」

「あ、アレは…ちょっと興奮してただけですわ!」

「そっちの方がなんか怖いから!」

「ではどうするおつもり?ワタクシの職…『秘密』の攻撃の前には、全てが無意味ですわ。」

「そんなこと…やってみなくちゃ、わかんないよ!」

「フッ、でしたら…わからせてさしあげますわ。」


 女神の攻撃。

 なんと!盗子は攻撃を受けきった。


「なっ!?お、同じ技で相殺ですって…!?一体…なぜ…!?」

「へ、へへーんだ!そんなのもちろん、秘密だよっ!」


 もちろん勘だった。



 その後も、一生分の運を使う勢いで攻撃を避けまくった盗子。

 偶然とはいえ盗子のくせに生意気だ。


「ゼェ、ゼェ、ど、どうよ!?アタシだってやればできちゃったんだかんね!」

「く、屈辱ですわ…!アナタごとき汚物に、私の技が真似されるだなんて…!」

「こっちの方が屈辱だよ!なんで初対面のアンタに汚物扱いされなきゃ…」

「初対面…?お会いしてるじゃありませんか、『ウザ界』で。」

「へ?ウザ界…ウザ界!?いや、全然別スペックの怪奇生物しか記憶が…」

「まぁ無理もありませんけどね。あの姿…『鰤子』の姿とは全然違いますもの。」

「ええぇっ!アレがっ!?アレがどうなったらそうなるの!?何それどこの匠の仕業!?」

「これが本当のワタクシですわ。仮の姿は醜ければ醜いほど、今のワタクシが輝きますの。」

「いやちょっと待って?この手の変身系のキャラって、後で結局“この姿は醜いから好きじゃないのに”とか言いつつまた別の“真の姿”に…」

「ッ!!!」


「…マジでっ!?」


 マジで。

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