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~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
180/196

【180】最後の聖戦(12)

 自衛団の四人が倒れ、残るは…というか最初からある意味一人だった賢二は、観念して竜神との一騎打ちに挑むことにしたっぽい。


「どうやら本気のようだネ、楽しみだヨ。もう防御はヤメるんだネ?」

「そんな思い通りにいくと思ったら、大間違いですよ!」

「いや、その返しはいかがなものカ。」


 賢二は強気に弱気だ。


「僕はもう、前の臆病な僕とは違うんだ。全力で…アナタを倒します!」

「いいネ…ならば私ハ、この姿で相手しようカ。」


 なんと!竜神は氷の竜に変形した。


「フッ、『竜化:氷竜神』…我が吐息ハ、世界の時すら止メル。」


ブフォォオオオオ…!


「ひ、ひぃいいい…!こ、この凄い吹雪…もしかして、『業火竜』と並び称される『豪雪竜』とかいう…?」

「フン、豪雪竜ごときと並べられるとは心外だネ。もうちょっと強いヨ。」

「“ごとき”とか言う割に謙虚なんですね…」

「にしてモ、さっきから防戦一方…ヤル気無いのかネ?ガッカリだヨ。死ぬカ?」

「そ、そんなこと無いですよ!え、えっと…じゃあ、〔炎陣〕!」


 竜神は炎に囲まれた。

 パッと見はなかなかの火力だ。


「どうですか!?氷だったら熱には弱いはず…!」

「やれやれ、甘いネ…。絶対零度の氷ヲ、マッチの炎で溶かせるとでモ?」

「くっ…!だったら…」

「無駄だネ。たとえ最上級の魔法だろうトモ、私の氷は溶かせナイ。」


 残念ながら竜神はピンピンしていた。


「そ、そんなことない!お師匠様の…あの、〔火炎地獄〕さえ使えれば…!」

「使えれば?」

「使えれば…」


 使えれば。



 氷竜化した竜神に、賢二はその後も手も足も出ない感じだった。

 やはり賢二ごときには荷が重い相手なのだろうか。


「ゼェ、ゼェ…!だ、駄目だ…強すぎるよ…。〔炎陣〕だけでなく、〔紅蓮〕まで通じないなんて…」

「わかったロウ?その程度の魔法、試す価値も無いヨ。」

「や、やっぱり〔火炎地獄〕…前に『禁詠呪法』でなら使えたことはあるけど、でも…」

「出し惜しみかネ?どこにそんな余裕があるのかネ?」

「だ、だって…だって、失敗したら…!もし失敗…あっ…!」

「フッ、隙だらけだネ。」


 モタモタしている間に、迂闊にも賢二は取り押さえられてしまった―――


「うぐぅ…!」

「終わりだヨ。もう少し楽しめると思ったガ…」


 ―――かに見えた。


「し、死ぬ…きっと死んじゃう…」

「ああ、死ぬネ。もう大人しク…」

「まぁ…発想はちょっと後ろ向きだけど、一矢報いるならやっぱり…これしかないよね…」

「ン?何を言っテ…?」


 ボソボソと何かをつぶやいた賢二は、諦めたのかと思いきや…暴挙に出た。


「全てを燃やしゅ、灼熱のぉおおおおおお…!!」


「ッ!!?貴様、わざト間違え…」

「我が身に返れぇえええええええっ、〔火炎地獄〕!!」


ブォオオオオオオオオオ…!!


「ぐぉおおああアアアア…!こ、小癪なァアアアア…!!」


 激しい炎に包まれる竜神。

 さすがの大魔法だけに、大ダメージなのは間違いない。

 だが、そうなると―――


「フ…フフ…だがイイ、これデ…私の勝チ…」


 強靭な肉体を持つ竜神でこれなら、より中心にいた賢二が無事なわけがない。


「…ぶはっ!ゴホゴホッ…!」


 …と見せかけて、なんと賢二も生きていた。


「なっ…!?馬鹿なッ、あの火力デ、生身の人間が生き残れるハズ…!」

「ぼ、僕の防御癖を…舐めないでほしいな…ぐふっ!」


 どうやら賢二は、瞬時に防御魔法を展開して防いでいたっぽい。

 もちろん何度も使える手ではないが、竜神に警戒心を抱かせるには十分だった。


「ハハハッ…!それでこそ我が一族の好敵手…面白いネ、最高だヨ。」

「いや、その…お構いなく…」

「こうなったラ、我が最強の姿で殺してあげるヨ。全力で…お相手するネ。」


パァァアアアアア…!


 竜神は全身から剣が生えた竜に変化した。

 その姿は、見るからに最強だった。


「最強形態『剣竜ソードドラゴン』…悪いが今度コソ、さよならネ。」

(あぁ…僕は死ぬのか…。悔しいなぁ…アレ?悔しい…?)

「泣いてるのかネ?ヤメてクレ、最期まで強者でいるがいいヨ。」

(“怖い”じゃなくて、“悔しい”か…。僕も少しは、変われたのかな…)

「さらば宿敵ヨ。キミと戦えタこと…誇りに思おウ。」


(ゴメン勇者君…僕、先に待ってるよ…。あ、勇者君は“地獄”か…)



「死ネ。」




ガキィイイン…!



「なっ…!?」



 かつて賢二の姉…麗華の前に現れた謎の占い師は、彼女にこう告げたという。


  これより数年の後―――


「えっ…?」


  汝が実弟に、逃れ難き死の恐怖が襲い掛かるだろう


「チッ…邪魔が、入ったカ。」


  救い手がいるとすれば、唯一人。


「た、助けに…来てくれたんだね…良かった…」


  その傍らに在るは“剣”…




「賢二君に、何してくれてんのさっ!?」




 暗殺美が現れた。

 って勇者じゃないんかい。



「…ゼェ、ゼェ、なんとか…間に合って…良かったさ。」


 賢二のピンチに現れたのは、なんと勇者ではなく暗殺美だった。

 “剣”というキーワードから勇者に託して死んだ麗華の立場が無い。


「やれやれ、あの局面で邪魔するかネ…まったく無粋な娘もいたものだヨ。」

「フン、ほざいてんじゃないさ。私が“無粋”なら、じきにアンタは“無様”な男になり果てるさ。」

「あ、ありがとう…暗殺美さん…。助けに…来てくれて…」

「べ、別にアンタのためじゃないさ!忍美の空間系忍術でたまたま飛ばされてきただけさ!自惚れんなさっ!」

「ご、ごめん…」

(いやーーーん!!)


 賢二は死なずに済んだが暗殺美の恋は死にそうだ。


「さて…どうしたものかネ。今の気分は最悪なんだガ?」

「私が少しだけ時間稼ぐさ!アンタも賢者見習いなら回復くらい勝手にやれさ!」

「えっ、でも…!」

「いいから信じろってのさ!」


 暗殺美は『風神の靴』に力を込めた。


「その靴…なるほどネ。少しはやれそうだネ。」

「少しは…?フン、少しくらいで許してもらえると思ったら、大間違いさっ!さぁドンと来いや!別に来ないなら来ない方が助かるけどもさ!」

「サクッと殺すヨ。」

「いい度胸さ!剣が多いほど有利とか思ったら大間違いだと教えてやるさ!」

「ほぉ、言うじゃないカ。何か勝算でもあるのかネ?」

「そんなのアンタが教えろやぁあああああああ!!」


 暗殺美の攻撃。

 竜神に100のダメージ。


「なっ、ナニッ…!?」

「全身堅くちゃ動けもしない…そんな奴は“関節部分”を狙うのが定石なのさ。」

「…フッ、面白いネ。甘く見たことを詫びようカ。」

「フン、頭が高いのさ。温泉が吹き出るまで地中深く、頭下げろさ!」



 そしてそのまま、勢いに乗って暴れまくった暗殺美。

 だがやはり、竜神の方が上手だった。


「くぅ…!まったく、化け物なのにも程があるさ。キモいのさ死ぬがいいのさ。」

「無駄だヨ。煽ったところデ、私は逆上したりしないネ。」

「ハァ?そんなクソ面倒な作戦誰がやるかさ?本心に決まってるさアホめ。」

「やはりムカつくネ。死ネ。」

「そ、そうは…させないよ!」


 ヨロヨロと賢二が立ち上がった。


「ほぉ、もう動けるのかネ。だがまだ回復しきったとは思えんガ?」

「そうさもっと大人しくしてろさ!あ、足手まといは邪魔なのさ!」

「一緒に倒そう、暗殺美さん。僕たち二人の…共同作業で。」

「(きょきょきょ共同作業!?なんて甘美な響きぃーーーー!!)で、どうする気なのさ?アンタにそんな強力魔法が使えるとは思えないさ。」

「うん…無いんだ…。でもきっと、協力すれば勝てるよ!」

「協力なんて意味無いヨ。この無数の剣で八つ裂きにされる運命ネ。」

「さっきの暗殺美さんの攻撃で可能性が見えたよ。弱点はやっぱり、関節部分にある。」

「フン、甘すぎるネ。そう言われて攻撃させる馬鹿がいるかネ?」


 竜神は高速で回転し始めた。

 二人は完全に遅れをとった。


「くっ、マズい…!全身に剣が生えた体であんな速さで回られたら…!」

「大丈夫さ、ちょっと待てば勝手に目が回って盛大に吐くに決まってるさ。」

「いや、いくらなんでも」

「うぐっ、マズいネ…」

「当たっちゃったの!?なんでそんなリスクある技出しちゃったの!?」

「けど…その“ちょっと”を生き抜くのガ、無理なんだろうがネ。」


 竜神の超高速攻撃。

 賢二は魔法でなんとか防いだ。


「ぐぅっ…!どどどどうしよう…!どうしよう暗殺美さん!?」

「お、落ち着けさ賢…クソ犬!こうなったら死ぬ気で逃げるしかないのさ!」

「そ、そうだね!なんとか逃げ切ってチャンスを…」

「おや、結局逃げるのかネ?」

「ッ!!」

「早く勝って仲間を助けるとか言ってたのは別人かネ。情けないものだヨ。」

「聞いちゃ駄目さ!そんな安い挑発に乗っ」

「逃げよう、暗殺美さん。」


 ちょっとは乗れ。

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