表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
175/196

【175】最後の聖戦(7)

 勇者の方が盛り上がり始めたその頃、暗殺美達もまた盛り上がっていた。

 忍美が『忍法:動物祭り』で呼び出した大魔獣は―――


~タケブ大陸:ショムジ遺跡~


「ギョァアアアアア…アアア…!!」

「ふぅ…少々てこずったか。だが、これで終わりだ。全てを諦めるがいい。」


 残念ながら、大魔獣は帝雅に撃破されてしまった。


「あ、あんな化け物でも通じないとか…もう…お手上げなのだ…」

「フン!こうなったら…『命と引き換えに限界を超えるぜモード』しか…手は無いさ。」


 精神的にも肉体的にも限界な忍美。

 だが暗殺美はまだ粘るつもりのようだ。


「この期に及んでハッタリか?そんなボロボロな体で、何ができると言うんだ?」

「そんなのアンタが考えろや!こっちが教えて欲しいくらいさ!」

「そ、そんな斬新な逆ギレは初めてみたのだ!改めて尊敬するのだあさみん!」

「敵は近接戦闘しか無いさ。中距離から攻めればなんとか…」

「フハハ…!舐められたものだ。ならば見せてくれよう、『帝王玄武弾』!!」

「なっ…!?」


 帝雅の中距離攻撃。

 二人はギリギリでかわした。


「うぐっ…そんな技まで…あるのかさ…!」

「この私を誰だと思っている?私は『皇帝』…全てにおいて、死角は無いのだ。」

「でも父親の資格も無いのさ。」

「だ、黙れぇえええええええ!!」


 ハートは結構モロい。



「…チッ、仕方ないさ。さすがの私も限界…後は、アンタに任せるさ!」

「えっ!誰!?誰がいるのだ!?」


 誰かいるのかと、辺りを見渡す忍美。


「フン、今までそんなパターンしか無かったから今回もそうに違いないのさ!」

「そんな安直な…なのだ!」

「やれやれ…まさかの神頼みか。この状況で、誰が出てくると言うんだね?ありえんな。」


 帝雅も一瞬騙されかけていたのは内緒だ。


「強がんなさ!アンタにだって、天敵の一人や二人いるはずさ!」

「天敵…?フン、まぁ私に太刀打ちできる者と言えば、凱空君くらいだろうな。」

「だったらそいつが出て来るって意味さ!!」

ガサッ!


 背後の草陰がちょっと揺れた。


「ちょっ…もしホントだとしたら、その人から見たらあんまりなネタバレなのだ!やめてあげるのだあさみん!」

「さぁ出て来いさ!勇者父ーーーー!!」

「なっ!?馬鹿な…本当にそんなことが…!?」



「ど、どうも…馬鹿です…」



 馬鹿が現れた。



 颯爽と登場しようと企んでいた勇者父だったが、空気を敢えて読まない暗殺美に台無しにされてしまった。

そして、凄まじく落ちたテンションのままバトルは再開された。


「まさかキミまで、私の企みに気づいていたとはな。さすが…と言っていいのだよな…?」

「うん…でもなんか…ゴメン…」

「ちょっ、このオジさんメチャクチャ心に傷を負ってるのだ!既に精神的にヤバいのだ!」

「勇者父、アンタは行方不明って噂を聞いたさ。それを今さらどの面下げてノコノコ出て来たのかさ?」

「しかも追い討ちかけるとか非道にも程があるのだ!さすがあさみんなのだ!」

「もしもキミが勇者の嫁に来たら、父さん潔く乳首を切るぞ。」

「手首切れや!あんな奴こっちから願い下げさフザけんなさ!」


 ドタバタが収まらない現場。

 だが帝雅は、いち早く冷静さを取り戻した。


「凱空君…キミはまたしても、私の邪魔をするというのかね?」

「すまんな帝雅。だが我が子が伝説を残すには、“完勝”でなくてはならん。貴様は…私が排除する。」

「その余裕ヅラ…いつまでも続くと思うなよ?」

「フッ、楽しみだな。おっと、キミ達は離れていなさい。これからは激しい戦いにな…いないっ!?」


 二人は今日一番の素早さを見せた。




「ハァ、ハァ、ほ、ホントに、良かったのか、置いてきて?不安、なのだ!」

「化け物は化け物同士で乳繰り合ってるのがお似合いなのさ。それに…」

「それに…?」

「私らには私らの…役目があるっぽいさ。」


「逃がさんぞ、小娘どもぉーー!!」


 帝雅を勇者父に任せ、その場から逃げ出した暗殺美と忍美。

 だが帝雅の家臣達に襲われ大変なことになろうとしていた。


「オラァ!死ねぇーーー!!」


ガキン!ジャキィン!


「うわっ、うわ!ヤバいのだ!ヤバすぎる状況なのだ!ひぃいいいい!」

「チッ、この人数…いくら雑魚とはいえ、消耗した体にはキッツいさクソが!」

「だぁああれが雑魚だぁああああ!!」


キィン!チュィイン!


「オイオイどうしたぁ?もう後が無いぜぇ…?イヒヒヒヒ!」

「…うぅうううううおりぁあああああああああああ!!死ねさぁあああああ!!」


ドッゴォオオオオン!


 逃げ回るのを諦めた暗殺美は、傷ついた体にムチを打ち暴れ回った。

 その形相は、とても賢二に見せられるものではなかった。


「ぶぎゃああああああ!!」

「ぐへぇえええええええ!!」

「ゼェ!ゼェ!ゼェ…ど、ドンと来いやぁあああああああ!!」

「す、凄いのだ!凄すぎなのだあさみん!でも…」

「へ…ヘッ!強がるなよ小娘ぇ!もうボロボロじゃねぶほぁ!!」

「ゼハァ、ゼハァ、な、舐めてんじゃ、ないのさ!まだまだ、やれ、る、のさ!」

「あ、あさ…」

「アンタは、邪魔すんなさ!」

「でも…!」

「かえって邪魔なのさ、黙って、見てろや!」


 どう見ても限界なのに強がる暗殺美。

 そんな暗殺美の姿に…忍美はため息をついた。


「…ハァ、困ったものなのだ。そんなツンデレじゃ、絶対不幸になるのだ。」

「あ゛ぁん!?」

「でもそれが…あさみんの、いいとこなのだ。」


 忍美は不思議な印を結んだ。

 暗殺美は謎の不気味な煙に包まれた。


「ちょっ、何してくれてんのさ!?そんな体で、アンタまさか…!」

「ハァ、ハァ、『忍法:超転移の術』…サヨナラなのだ、あさみん…」

「な、なにカッコつけてんのさ雑魚の分際で!?ふざけんなさ!死ねっ!」

「あ、あんまりな言い様だけども…あさみんらしくて、なんか安心なのだ。」

「ぬぐぅ~~!やめろや!戻せさ!しのみぃいいいいいいいぃぃぃぃぃ……」


 暗殺美は煙の中に消えた。


「チッ、逃げられたか!ふざけやがって…!」

「アハ…もしかして今、“しのみん”て…?そうだったら…嬉しい…のだ……」



ドスッ!ドスドスドスッ!


 暗殺美は言ってなかった。




 そしてまた、勇者の所に場面は移る。


~大魔王城最上階:終焉の間~


「ふむ…つまりなんだ?結局お前は味方なのか敵なのかどっちだマジーン?」

「あ?そりゃオメェ、味方に決まってんだろこの流れなら。」

「絵的に却下で。」

「そう言うなよ切ねぇなオイ!確かに悪役面だがそこは諦めてくれよ!」

「そうか…ならば担当分けをしようか。大魔王と占い師、貴様はどっちを殺す?」


 マジーンは信用ならないが『欧剣』の名は信用できるとして、1対1に持ち込もうとした勇者。

 だが大魔王が、それを許さなかった。


「おっと、一人足りないよ。実はね…特別ゲストを用意してるんだよね。」

「む?特別ゲスト…だと…?」



「勇者は、許さない!」



 なんと!敵として盗子が現れた。

 ろくな未来が見えない。



「なっ…!?な、なぜ貴様が…」


大魔王に呼ばれてやってきたのは、あの晩に泣きながら去って以来、行方知れずとなっていた盗子だった。

見れば怪しげなヘルメット的なモノを装備している。相変わらず趣味の悪い奴め。


「ったく…なぜコイツがここにいる?こんな雑魚…狙って手に入れたわけじゃあるまい?」

「あ~、たまたま変な飛竜を狩ったら落ちてきてねぇ。知り合いだよね?」

「それは災難だったな。お悔やみ申し上げる。」

「人質に使おうと思ってたんだけど、意味無いっぽいね…」


 悪の頂点がドン引きしている。


「フッ、そんなことはないぞ?人質ごと敵を貫くとか結構よくある手だろ。俺も機会があったらやってみたいぞ。」

「ちょ、待てって勇者!やっぱどう見ても頭のメットが何か…」


「フハハハ…!そうだよ、よくぞ気づいた!」


 マジーンの言葉を遮るように、ナンダの立体映像が現れた。


「チッ、また出たかロリコン…。じゃあ貴様があの機械で操ってるってわけか。だが、十四歳は貴様の守備範囲じゃないだろ?」

「ああ。かつては恋焦がれた婚約者であったが…“初老”に用は無い。」

「ならばコイツをどうする気だ?人質にもそっちの戦力にもならんぞ?」

「フン、ただの実験さ。各地のロリを操るための…『ロリータ・コントローラー』のね。」


 思考はある意味大魔王よりヤバい。



「チッ、やりづれぇ展開になっちまったな…どうするよ勇者?」

「くっ、なんてことだ…!」

「おぉ、思ってたより動揺してるじゃねぇか。少し意外だな。」

「どうしよう…凄まじくどうでもいい!」

「勘違いだったか…」


 勇者はブレてなかった。


「絶っっ対に許さないよ勇者!アタシじゃなくて、姫を選ぶなんて…!」

「フン…無駄な作戦だな。洗脳して何を言わせようが、俺の心には響かない。」

「フッ、いいや?これは彼女の本心だよ。僕はキッカケを与えたにすぎない。」


 ナンダの言葉が確かなら、盗子は心から根に持っているようだ。


「もう夢も希望も無いよ!こんな世界…滅んじゃえばいいんだよ!」

「オーケー、じゃあ先に逝っとけ。」

「ゆ、揺るぎねぇ意思だな…」

「当然だ。俺は『勇者』…邪魔する奴は、誰であろうとブッた斬る!!」


 盗子に向けて拳を構える勇者。

 だが大魔王は信じていなかった。


「アハハ!とかなんとか言いながら、実は」


「ぶべらっ!!」


ガッシャーーン!


 鉄拳が顔面にメリ込んだ。

 盗子は窓の外に消えた。


「奥義、『男女平等拳」…!」

「ひ、酷ぇ…!!」


 マジーンはドン引きした。

 大魔王も夜玄も似たような感じだ。

 勇者だけが悪い笑みを浮かべている。


「さて…じゃあ仕切り直そうか。貴様らは、あんなもんじゃ済まさんぞ?」


 『大魔王』は地位が危うい。



「ふむ…ではお前が大魔王とやれ、マジーン。俺がやる前に少しでも消耗させろよな。」

「オーケー…って、俺がやられるの前提かよ!?信用無ぇなオイ!」

「当然だろう?自分の役割をわきまえん奴は脇役失格だぞ、この“ミスターやられ役”め。」

「くっ…!ま、因縁もあるし…その方が俺としても、助かるんだがな。」


 マジーンは大魔王の前に立ちはだかった。


「ふ~ん、キミが相手なんだ…。まぁいいや、遠慮なく殺させてもらうね~。」

「ハハハ!殺せるもんなら…ぜひ頼むわ!」


ガキィーーン!


 一方、夜玄の前には勇者が。


「おやおや、まさか私をお選びとは…。私の予見とは、少々違いますねぇ。」

「む…?ハッハッハ!よーく…わかってるじゃないか!」


ガキィーーン!


 勇者は夜玄ではなく、大魔王に斬りかかった。


「なっ、二人がかり…!?」

「その通りだぁ!!」


 勇者にありがちなフェイントだった。


「くっ!でも二人くらい…」


 厳しい状況ではあるが、なんとか凌げると判断した大魔王。

 だが―――



「…いいえ大魔王、もう一人いますよ。」



「なっ…!?」


 なぜかもう一人、夜玄もまた…大魔王の背後に回っていた。



ズバシュッ!



 まさかの三人がかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ