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~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
171/196

【171】最後の聖戦(5)

さぁこれから女神討伐だって時に空中に現れたのは、かつてギマイ大陸で始末したはずのロリコン男…ナンダだった。

俺は特に苦戦させられた思い出は無いのだが、土男流は恐怖に震えている。


「う、うわー!いつかの変態の人なんだー!また尻を揉まれちゃうんだー!」

「貴様はあの時、肉塊にしてやったはず…。何がどうしてそうなった?」

「フッ、今の僕は電脳世界の住人…“死”という概念を超越した存在なのだよ。」

「やれやれ、多勢に無勢…一気に絶望的な状況になったな…。こりゃ死んだなぁオイ。」


 勇者は諦めモードに入りかけた。

 だが、状況は想定と少し違うようだ。


「ちょっとアナタ、余計なことしないでくださる?これから始まるワタクシの美しい活躍の場が…」

「黙れこのビッチめ。」


 女神とナンダは露骨に仲が悪そうだ。


「む?なんだお前ら仲間じゃないのか…って、ロリってない奴にはそんななのかロリコン。凄まじくわかりやすいなお前。」

「フン、当然じゃないか。あんな年増の糞ビッチ顔。」

「ほぉ…ならばどうだロリコン、まずは共闘してこの目障りな女を片付けんか?」

「む…?なんだね、もしやキミも…?」

「ああ。実は俺も、『ロリータ・コンテスト』の受賞歴があってな。」

「うぉー!嘘だとは思うけど聞きたくなかった逸話なんだー!」

「そうかね…それならば話に乗ろうか。まずは先に、その老婆を…やれぇ!」


 コング型ロボット群は女神に襲い掛かった。


ドッゴォオオオオオオオン!!


 だが儚く散った。


「なっ!?馬鹿な、最新の『ロリータ・コンセプト』に基づき強化した彼らが…」

「あら、ワタクシを誰だと思っていらして?」


 ナンダ自慢のロボット群を余裕で撃破した女神。

 完全に勇者の想像の上を行っていた。


「お、オイオイ聞いてないぞ…こんなに強い奴がなぜ先の大戦で負けたんだ…?」

「負けた…?眠っていただけでしてよ?寝不足は、美容の大敵ですもの。」


 強いが馬鹿だった。


「チッ、どうやら少し甘く見すぎていたようだ。どうするよロリコン?」

「…また会おう、我が宿敵よ。」


 状況が不利だと見るや、ナンダは早々に消え去った。


「ちょっ、テメェ…!」

「大丈夫なんだ師匠!ここからは、久々に私の見せ場なんだー!」


 土男流はポーズをキメた。

 すると損傷の少ないロボが一斉に立ち上がった。


「おぉなるほど、そういやお前は『人形師』だったな!完全に忘れてたが!」

「見ててくれよな師匠!さぁみんな、いっけぇえええええええええ!!」

「頑張れ土男流!思うままにそのコング…もとい、ロリコンどもを操るがいい!」

「その言い方は変えてくれー!」


 土男流は集中できない。



その後、ロボット群を率いて女神に特攻をかけた土男流。だが、やはり全く通じなかった。

しかも、何もかもが一瞬すぎてさっぱり手口がわからん。参ったぞ、強敵どころの話じゃない。


「オイ女神よ、貴様…職業は何なんだ?冥途の土産に聞かされてやる。」

「それをそうやって催促しちゃう人は初めて見たんだー!」

「職業?それは秘密ですわ。淑女とは秘密を着飾って輝く生き物ですの。」

「チッ、そう簡単に手の内は明かさんか…」

「ハァ?アナタ何か勘違いしてませんこと?言ったでしょう、ワタクシの職業は…『秘密』と。」

「なっ!?いや、そんなフザけた名の職業が…んー、まぁ『変態』とか『もやし』とかいたなぁ…今さら言うのも野暮か。いいだろう、来い!!」



そして結局、俺と女神の一騎打ちが始まった。

このままだと大魔王戦前に燃え尽きそうだが仕方ない…やるしかない。


「ハァ、ハァ、職業が『秘密』とかフザけすぎだろ…!まったく見えん…!」

「その割に、どれも紙一重でかわしてますわね。一体どうやって…?」

「フッ、勘だ!」

「さすがだぜ師匠!言ってる内容はともかくキラリと光る前歯が素敵なんだー!」

「ハァ…。懲りない、めげない…なんて醜いのかしら。美しくありませんわ。」

「フン、黙れブサイク!」

「なっ…なんですって!?この美の象徴たるワタクシに、ブ…ブサイクと…!?」

「言ったろ?貴様なんぞ女神でもなんでもない。姫ちゃん…そう、俺にとってのめが(グサッ)


 勇者の眼球に指が。


「目がぁあああああああ…!!」


 勇者はボコボコにされた。



挑発して動揺でもさせようと思ったら見事に逆効果で、怒りでボコボコにされちまった俺。

だが、少なからず効果は出ているっぽい。キレてる分なのか攻撃にキレがない気がする。


「そうとわかれば、もっと挑発して攻撃を鈍らせてやろうと思う。」

「聞こえてますわ!罠なのかってくらいに聞こえてますわ!」

「ブース!ブース!お前の母ちゃんトーウーコー!」

「駄目だ師匠ー!盗子先輩は五百年前の人に通じるほど有名人じゃないんだー!」

「くっ、おのれぇ…!」

「でもなぜか効いちゃってるんだー!」

「貴様に『女神』は荷が重い。“彼女”に任せてお前は引っ込むがいい。」

「フン、ありえませんわ!ワタクシ以上の女神なんて…」

「姫ちゃんの方が、女神だ!!」

「呼んだ?」

「呼ん…おぉっ!?」


 なんと!珍しく求められたタイミングで姫が現れた。

 そして女神対決が始まる。



例のごとく意表を突いて現れたのは、我らが真の女神…姫ちゃんだった。

だが、喜んでばかりもいられない。敵の能力が凄まじすぎて危険だからだ。

こんな状況になるのを懸念してあの晩、心を鬼にして突き放したってのに…いや、まぁ結局はこうなる気もしてたが。


「というわけで、また会えて嬉しいが…今はダッシュで逃げてくれ姫ちゃん。」

「任せて勇者君。すぐにお茶菓子を用意するよ。」

「フッ、相変わらず清々しいくらい会話が通じないぜ…だがそれがいい!」


 勇者は元気が出てきた。

 すると、そんな勇者の様子に女神も気付いたようだ。


「彼女がアナタが言う、アナタの女神ですの?」

「ああそうだ!」

「違うよ姫だよ?」

「ほら違うじゃありませんの!」

「うぉー!余計にめんどくさくなったんだー!」


 これも懸念していた問題点の一つだった。


「すまんが姫ちゃん、もう一度言うが今は逃げ…」

「ううん。今日は私が戦うよ。じゃないとお母さんに怒られるの。」

「なっ、なんだって…!?姫ちゃんが進んで戦闘に…!?」


「頑張らないと…お菓子が、減るんだよ。」


 ささいな動機だった。



珍しく…というか初めてかもしれんが、今回はとってもヤル気っぽい姫ちゃん。

だが、彼女は戦闘要員じゃない。そんな姫ちゃんに任せて先へ行くなんてできん。


「ど、どうするんだ師匠ー!?姫ちゃん先輩にお願いしちゃう感じかー!?」

「馬鹿を言うな!こんなやりたい放題の敵のもとに残していけるわけが…」

「行ってらっしゃい勇者君。ご飯にする?それともお風呂?」

「えっ、行った先で!?いや、それは“お帰りなさい”の時のセリフだと…」


 姫が心配で仕方がない勇者。

 だが残念ながら、戦いの火蓋は今まさに切って落とされようとしていた。


「どうやら次の相手はその子のようですわね。いいですわ、死んでおしまい。」

「いや、待っ…」

「むー!〔死滅〕!!」

「こっちも待っ…」


 特に姫の方が待て。


「フフ、面白いですわ。どちらが真の女神か、ハッキリさせてさしあげますわ!」

「むー!〔全滅〕!!」


 勇者はダッシュで逃げた。




過去に類を見ないほどヤル気マンマンだった姫ちゃんは止めようにも止められず、俺は仕方なく先へ急ぐことにした。

あの場にいたら、女神の前に姫ちゃんにトドメを刺されかねん。


暗黒神は先公が、女神は姫ちゃんが倒すとしても、夜玄、竜神、帝雅、そして大魔王…四人も残っている。だが、今の体調じゃ一人倒すのもキツいだろう。


~大魔王城十階:竜王の間~


「というわけで、すまんが少し休ませてくれ。飲み物があるとなお良いぞ。」

「お前ハ馬鹿なのカ?」


 竜神は呆れ果てた顔で勇者を見ている。


「やっぱりこの部屋に入る前に休んどくべきだったんだ師匠ー!部屋の名前からして嫌な予感はしてたんだー!」

「やれやれ、次は貴様かよ竜神…。その強固な鎧を貫くのは…厳しいなぁオイ…」

「おや、弱気かネ?あの女剣士の弟子にしてハ、つまらん小僧だネ。」

「なっ…こ、この俺がつまらんだとぉ!?オイ土男流、手品道具を!」

「そういう意味で楽しませるのは意味が違うと思うんだー!」

「さぁ存分に楽しむがいい!俺の得意技…『人体切断マジック』をなぁ!」

「うぉー!そのきっと種も仕掛けも無い感じ、たまらないぜー!」


 命の保証も無い。



というわけで、次は竜神と対決することに。

だがコイツはノリが悪そうだし、煙に巻くのはキツいだろう。

かつて見た冥符との戦いからも実力の高さは明らか…。仕方ない、面倒だが今回は真面目に戦って倒すしかないか。


キィン!ガキィン!


「ほぉ、やれるじゃないカ。瀕死の雑魚にしか見えんのだがネ。」


チュィン!チュィン!


「フン、俺を舐めるな!ロウソクの炎は、消える前に一瞬激しく燃えるのだ!」

「師匠ー!それは“もう限界”って言ってるのと同じなんだー!」

「うぉおおおおおお!食らえ、刀神流千の秘剣…『百刀霧散剣』!!」

「甘いネ。そんな細腕の剣撃デ…」


 勇者は〔激震〕を唱えた。

 竜神は意表を突かれた。


「ぐふっ…!まさか、振動で直接…鎧の中身を狙っテ…くるとはネ…」


〔激震〕

 勇者:LEVEL50の魔法(消費MP90)

 触れた敵一体に激しい振動を与える魔法。隣の席の貧乏が授業中によく使う。


「フッ、思ったより簡単に騙されたな。真面目な奴の方が楽かもしれん。」

「…だガ、まだまだだネ。」

「む?貴様何を…ぐっ…ぐぉおおおっ!?」


 勇者は肩口から血を吹いた。


「う、うわー!師匠が大変なことになってるんだー!大丈夫か師匠ー!?」

「フッ、す…『スプリンクラー』だ。」

「そんな血まみれなグラウンドは嫌なんだー!」


 母校を思い出す仕様だった。


「チッ、あのタイミングで迎撃かよ…。どうやら一筋縄にはいかんらしいな。」

「キミもあなどれんネ。私としたことガ、意表を突かれたヨ。」

「ど、どうするんだ師匠!?他に何かいい案はあるのか!?」

「フッ……あー!あんな所に…」

「ってそれはさすがに無理があるんだ師匠ー!」

「フン、くだらないネ。そんな手にかかるわけな(ズッガァアアアアアアアン!)


 なんと!ホントに何か降ってきた、竜神に直撃した。

 これまでに何度か見たパターンだ。


「う、うわー!師匠の言った通りホントに何か来たんだー!でも一体何が…」


ゴゴゴ…ゴゴゴゴ……


 慌てて辺りを見渡す土男流。

 すると立ち込める土煙の中から、聞きなれた少年の声が聞こえた。


「ゲホッ、ゴホッ!や、やっぱり酷い目に…」


 そして、墜落した宇宙船の中から―――



「…遭うんだろうな…これからもっと…」



 賢二が現れた。

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