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~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
169/196

【169】最後の聖戦(3)

 勇者が頭を使ってなんとか勝利した頃、同じ部屋で暗黒神と戦っていた絞死は…まだ幼児にも関わらず、思いのほか善戦していた。


「くっ、ば…馬鹿な…!嗟嘆様の力を手に入れた私が…押されるだと…!?」

「ハァ…拍子抜けですねぇ。怪物と聞いた暗黒神も、実際はこの程度ですか。」


 苦しそうに悶える暗黒神を、絞死は偉そうに見下ろしている。


「お、おのれ…!小僧の分際で、舐めおって…ぬぐっ!?」

「つまらないのでもう死んでくだ…あぁ、死んでるんでしたね。じゃあ粉々に…」

「うぐぉ…ぐふっ!や、やめ…!」

「今さら命乞いですか?もう死んでるのに…」

「お、おやめを…う、うひぃいいいいいい!!」


 全力で命乞いをする暗黒神。

 どこか様子がおかしい。


「ん…?一体…」

「あっ、あっ、あぁああああああ!!」」


 暗黒神の目は、絞死を見てはいなかった。



「ぐわぁあああ!おやめくださいぃぃぃぃ“嗟嘆様”!!」



「なっ…!?」


ズッガァアアアアアアアアン!!


 痛恨の一撃!

 蹴り飛ばされた絞死は、激しく壁に叩きつけられた。



「ぐ…はっ…!な、なんで…!?」


 不意打ちをまともに食らい、重傷を負った絞死。

 恨みがましい目で…勇者を睨んだ。


「ふぅ~…間に合ったか。」


 まさかの身内からの攻撃だった。


「ゆ、勇者さん…これは一体、どういう…おフザけですか…?」


 対戦中の絞死を激しく蹴り飛ばした勇者。

 いつも通りと言えばいつも通りだが、一体どうしたのか。


「フッ、“ハットトリック”だ。」

「他の二点はどこへ…!?」


 絞死は意識が朦朧としており、ツッコミの論点がおかしい。


「…なんてな。助けてやったんだ、感謝こそすれ…恨むとはお門違いだぜ?」

「え…?」


 なんと!絞死がいた場所が凄まじいことになっていた。

 見るからに邪悪な黒い瘴気が渦巻いている。


「勉強不足だな絞死。味方を救うために蹴り飛ばす…よくあるパターンだぞ?」

「そ、そんな…何も…見えなかった…」

「ったく、常識外れにも程があるぜ。なんでもアリかよ…。まさか『死体使い』のジジイを、内側から乗っ取りやがるとはなぁ。」

「なっ…そ、それじゃあ…彼が正真正銘の…」

「よぉ、久しぶりだな本物…『暗黒神:嗟嘆』よ。」


 勇者は暗黒神を睨みつけた。



「ケッ…元気そうだなぁ、クソガキ。」



 暗黒神が完全復活したっぽい。



「…おいガキ、テメェいつから気づいてた?意識してなきゃ間に合わねぇタイミングだったろ?」

「ん?まぁ薄々…な。邪神の奴には普通に意識があった時点で、貴様ほどの男がなぜ大人しくしてるのかと気になってたんだよ。さすがに操り手には勝てんのかとも考えたが…案の定、機をうかがってやがったなぁオイ。」


 勇者は勘が冴えていた。


「にしても、貴様のしつこさにはほとほと呆れたぜ。いい加減にしろよ。」

「あ゛ぁ?何度も俺の邪魔しやがるテメェら親子だって似たようなモンだろ?」

「ま、待ってください勇者さん。敵が暗黒神なら、相手は私が…!」

「下がってろ絞死。あんな奴にそこまでやられるようじゃ、話にならん。」

「いや、これはアナタが…」

「テメェこそボロボロじゃねぇか勇者ぁ。あの日みてぇにやれんのかよ?」

「フッ、問題ない。それにしても貴様、いつの間に分身なんて覚えた?」

「完全に目の焦点が合ってないじゃないですか!アナタ、そんな状態で…」

「フン、まぁ黙って見ているがいい。ピンチになるほど、俺よ強くなれ!」


 勇者は願いを込めた。



邪神との戦いで実はかなり限界な俺だが、勢いで暗黒神まで引き受けてしまった。

しかし、男の意地は貫き通すことに意義がある。やってやろうじゃないか。


「さぁかかってこい暗黒神!情報保護の観点から、粉微塵に裁断してやる!」

「訳わからねぇこと言ってんじゃねぇぞゴルァアアアアア!!」

「はぁあああああああっ!」


ジャッキィイイイン!


「チッ…!その体でまだそこまでやれるのか、やっぱフザけたガキだわ!」

「貴様のように死んでも元気な奴もいるしなぁ!死など怖がっていられるかぁ!」


ガキィン!


「だが、時が経つほどに流れは俺に傾くだろう!テメェも終わりだなぁ!」

「そうかもしれんなぁ!」


チュィン!


「おぉっと隙アリィイイ!」

「隙じゃない!限界なだけだ!」


ガッキィイイン!


「死ねぇええええ!!」

「言われんでも死ぬわぁあああ!!」


 勇者は強気に弱気だ。



それから更に打ち合うこと十数分。

負けるのはとっても不本意だがもう限界だ。いくらなんでも神と連戦はきっつい。

そろそろ「だ、誰だ!?」「久しぶりだな」「お、お前は…!」な展開が無いと死ねる。


「やれやれ、仕方ねぇ…たった今思いついた奥の手を見せてやるかぁ!」


 暗黒神は嫌な笑みを浮かべた。


「ってお前が動くのかよ!ただでさえピンチだってのに容赦無さすぎだろ!」

「ハハッ、忘れたか?俺はなぁ、勝つためなら…手段は選ばねぇんだよ。」


 暗黒神は邪神の首根っこを掴んだ。


「むっ!?な、何をする貴様…!?わらわに…」

「ちょっ、待てコラ!まさか…そこまでなんでもアリなのか!?」

「昔はアレだったが今は同じ死体同士…仲良くやろうぜ邪神よぉ!」

「ぐっ、放し…ぬぐぅううう…!」

「これが我が暗黒魔法の秘奥義…『暗黒合身ゴウシン』だぁあああああ!」


ピカァアアアアアアア…!


 まばゆい光が暗黒神と邪神を包んだ。

 なんと!暗黒神は邪神を吸収した。


「ハハハハッ!スゲェ、この湧き上がるパワー…素晴らしいぜぇ!」

「お、オイオイ…さすがにそれは反則だろオイ…?」


 暗黒神の体からは、目に見えるほどのオーラが噴き出している。

 見た目は暗黒神がベースだが、所々に邪神の面影も見て取れた。


「おっと、どうした小僧?さすがに強がる気にもなれねぇかぁ?ハッハー!」

「くっ…!仕方ない絞死、こっちも負けじと変形合体だ!」

「一人でやってください。」

「くっ、駄目か…!」


 できてもやっちゃ駄目だ。



「ふむ…すまないが少し待ってくれ暗黒神。賢二に遺書の書き方を習ってくる。」

「あ?オイオイ、ついに諦めちまったのか?まぁ気持ちはわかるがなぁ。」

「ったく…邪神が、そして貴様が蘇り、更には合体だぁ?やりすぎ…だろうが…」


 あんまりな状況に、さすがの勇者も心が折れたっぽい。


「ハハッ、知らなかったのか?時として悪夢ってのは、続くんだよぉ!死ねぇ!」


 暗黒神、必殺の攻撃!

 勇者は避ける気力も無い。


「勝ったぁああああああ!!」



 ミス!勇者は幻のように消えた。



「…な…なぁっ!?お、オイオイ…この先の読める展開は…まさか…!」


 暗黒神の背筋を嫌な予感が駆け抜けた。



 「いや~、たまにはいいこと言いますねぇアナタも。」



 どこからか、聞こえるはずの無い声が聞こえてきた。


「ば、馬鹿な!その声…貴様はあの日、あの城で…確かに死んだはず…!」


 勇者もまた、嫌な予感で背筋が凍った。



 「でも惜しい、続くのは“悪夢”じゃない…“奇跡”なんですよ。」



 “コツッ、コツッ…”と背後から、誰かが近づいてくる音が聞こえた。


「まさか…あ、アナタは…!」


 振り返った絞死が見たのは、なんと…死んだはずの父の姿だった。




「さぁ、授業の…始まりです。」




 “悪夢”で合ってる気が。

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