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~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
155/196

【155】帝都奪還作戦(10)

ズッガァアアアアアアアン!!


 帝城十階『舞踏の間』では、盗子に拒絶され、ブチ切れた帝雅が大暴れ中。

 どう考えても勝ち目は無いので、盗子も賢二もとにかく必死で逃げるしかない。


「うっぎゃー!怖いよ痛いよ頭ぶつけたよー!」

「と、盗子さん!頭大丈夫!?」

「誤解を生む言い方はヤメてっ!」

「ほぉ、予想以上に素早いじゃないか我が娘よ…。嬉しさのあまりお前を殺す!」

「ぎゃ、虐待反対ー!おっかないの反対ー!」

「ならば私を父と呼ぶか!?父の愛に包まれつつ父を愛して生きるか!?」

「それはノーサンキュー!」

「ならばやはり死ねぇえええええ!!受けるがいい、『帝王百虎撃』!!」

「今のアタシは、これまでとは違うんだから!今日は、アタシが…アタシが頑張るんだから!」


 なんと!盗子は攻撃を避けた。


「ぎゃーーー!!」

「わー!賢二ーー!!」


 だが賢二に直撃した。


「やれやれ、逃げ足はなかなかだが…それだけか。残念だが、お前に勝てる力は無い。」

「とか思ったら大間違いだよっ!食らえっ、『暴走演舞:斬り斬り舞』!」


チュインチュイィン!


「チッ、『舞士』の技か…器用なマネを…!」

「跳んだね!?空中じゃ避けられないよっ、いっちゃえ〔炎殺〕!」

「なっ、魔法までだと…!?ハァアアッ!!」


 帝雅はマントを翻して炎を弾いた。


「『舞士』の演舞に魔法…お前、職業は何だ?」

「フンッ、『ヒロイン』だよっ!!」


 盗子は調子に乗った。


バシィイイイイン!


 帝雅は盗子の頬を引っ叩いた。


「イッターーイ!はたかれたー!お父ちゃんにもぶたれたことないのにー!」

「私が父だぁあああああああ!!」

「くぅ…!やっぱし…中途半端な技じゃ、全然意味ないみたいだね…」

「やっと気づいたか塔子。ならばどうする?もう一度だけチャンスをやろう。」


「…とっておきの技で、アンタを倒す!!」


 盗子は一瞬悩んでから吠えた。


「どうやら、説得は無意味なようだな…。だが、私を討てる技など存在しない。」

「フン、あるよアタシは知ってるよ。なんでも斬れる…必殺の技をねっ!」


 盗子は妙な構えをとった。

 それはかつて、『技盗士』としての師であるソボーが、首無し族との一戦で見せた『渾身抜刀流』奥義の構えだった。


「えっ、そんな隠し玉が!?でも盗子さん、じゃあなんで今まで…あ、高確率で失敗するとか?」

「ううん…これまでは失敗したことないよ…前の、二回は。」

「てことは…!」

「でも!“三回”使ったら死んじゃう呪われた技なんだよ!アタシ…アタシまだ、死にたくなグエッ!!」


 帝雅の一撃!

 盗子は鮮やかに宙を舞った。


「ぶっはぁ…!!」

「覚悟無き者には戦う資格すらない。全てを諦め…そして眠るがいい。」

「う、うぐぅ…」


 かなりのダメージを負った盗子。

 起き上がろうにも膝が大爆笑でうまく立てない。


「ぐふっ…や、ヤだよ…。アタシには、まだ生きてやりたいことが…山ほど…!」

「諦めなさい。願って叶う願いなど、一握りだけだ。全ては無駄なのだよ。」

「そ、そんなことないですよ!願えばきっと何だって…!」


 賢二は珍しく前向きに励ました。


「じゃあ勇者の恋人に…!」

「いや、それは無理かと。」


 賢二は冷静に斬った。



 その後、非情な帝雅によりさらにボッコボコにされた盗子。

 賢二も防御魔法で援護したが、全てを防ぎきれるものではなかった。


「ご、ごめん盗子さん!治療しながらじゃ、今くらいのが限界で…!」

「ぐふっ…ねぇお父…アンタ、アタシらをやっつけて…その後はどうすんの?」

「む?私の目的はお前だけだった。ならば後は…全てを滅ぼすしかないだろう。」

「す、全てを…ってことは、じゃあみんな…死んじゃうんだね…」

「そう、敵も味方も老若男女もない!全てだっ!フハハハハハハハハッ!!」

「く、狂ってるよ…!」

「わかったら逃げるのをやめなさい。死して我が内で、永遠に生きるがいい!」


 帝雅は力を溜め始めた。

 動くなら今しかない。


「に、逃げよう盗子さん!これ以上は…」

「…あのさ賢二、勇者に会ったら言っといて。」

「え…?」


 盗子は帝雅に向かって走り出した。



「大好きだった…ってさ☆」



「ちょっ、盗…」

「さらば娘よ!これが父としてできる、最初で最後の教育だぁあああああ!!」


「いっくよぉ~~~!!」




「『カル死ウム不足』!!」




 バイバイ盗子。




「ッ!!?」


目が覚めると、俺は親父と戦った部屋に転がっていた。そうか俺は負けたのか…。

いや、違う。まだ本調子じゃないからだ。だからこれをカウントに含める必要は無い。


~帝城二十階:展望の間~


「というわけで、貴様を殺して仕切り直そうと思う。覚悟するがいい。」

「…いえ、やめておきます。私の占いでは、今はまだ…その時ではないと出ているのでね。」


 父と対峙した『閑散の間』から駆け上がること五階。そこで勇者が遭遇したのは『占い師:夜玄』。

 どうやら苦怨との一戦を制したのは、彼の方だったようだ。


「占いもクソもない。貴様には騙されてたわけだしなぁクソ執事。ムカつくから殺す。」

「大義のためなら手段は問わない…アナタならわかると思うのですが?」

「じゃあなんとなく殺す。」

「こ、困りましたね…」

「俺は何でも許されるが貴様は駄目だ。さぁ、大人しく刀のサビとなるがいい。」

「やれやれ、仕方ない…少々、お相手しましょうか。」



 一方その頃、盗子と帝雅の一戦は―――


ポタッ、ポタッ…


「ぐ…ぐぉ…!ぐぉおおおおおおおお!ぬぉおおおおおおおおおお!!」


 滴る血。落ちた右腕。悶絶する帝雅。


「命を賭して、我が右腕を奪ったか…!命懸けで、腕ごときを…!」

「な、なんで…なんでなの…?」


 盗子は呆然としている。

 だがその目線の先にいるのは、帝雅ではなかった。


「なんでなの!?ソボー!!」


「…ケッ。相変わらず…うざってぇクソジャリだなぁオイ。」


 なんと!ソボーが現れた。

 技を使ったのは盗子ではなくソボーだった。


「まさか、生きていたとはな宇宙海賊よ。見事一矢報いたというわけか…」

「安心しろやぁ。あの技ぁ三回使った呪いで俺様がくたばるまでにゃあ、まだ間がある。ちゃんと殺してやらぁ。」

「そ、ソボー!」

「テメーをなぁ!!」

「なんで目線こっちなの!?」


 恒例の流れだった。


「あ…ありがとうソボー!助けに来てくれたんだね!命まで…懸けて…!」

「あ゛?勘違いしてんじゃねぇクソジャリ。俺・様・自・身の、復讐のために決まってんだろうが。」


 先ほどの会話からも、ソボーと帝雅の二人になんらかの因縁があるのは明らかだった。


「う゛ぅ…そ、そういえば前に言ってたよね復讐とか。確か左腕と顔の…」

「…と、“娘”の…だろう?」

「ッ!!!」


 ソボーはこれまで見せたことがない顔を見せた。


「えっ、娘!?そんな話アタシは全然…」

「そうか、復讐を完璧に果たすため…私と塔子を引き合わせたというわけか。」

「えぇっ!?じゃあ殺されちゃうのアタシ!?今ここで!?」

「フッ…あぁ、このジャリがテメェのガキと知った時ぁ、震えたぜぇ皇帝?」

「ひぃいいいいいい!」

「…だが、違ぇんだわ。全然違ぇよ…コイツは、テメェのガキじゃねぇ。」

「そ、ソボー…?」

「クソ弱ぇし。」

「そーゆー意味!?」


 だが説得力はあった。


「さ~て、じゃあやるとしようかぁ…時間も無ぇことだしよぉ。」

「なぜだ海賊よ、なぜ塔子を助けようとする?まさか自分の娘に重ねたか?」

「あ゛ぁん!?無礼なこと抜かしてんじゃねぇぞクソがぁ!こんなブッサイクと似てるわけねぇだろうがぁ!」

「いや、無礼はどっちだよ!?アンタも相当だブヘッ!痛ぁ…!」


 ソボーはいつも通りの一撃を叩き込んだ。


「見ての通り、守る気なんざサラサラ無ぇ。俺はただ、テメェを殺してぇ…それだけだ。」

「そうか、ならば決着を付けるとしよう。早めに止血をせねば、さすがの私も危ういしな。」

「おいクソジャリィ、テメェは邪魔だぁ…とっとと失せろやぁ。」

「えっ!?で、でも…!」

「どうせ呪いで死ぬ身だ…最期の記憶にテメェがいちゃ、あんまりだろぉ?」

「そのセリフの方があんまりだブハッ!だからなんでグーなの!?」


 半泣きの盗子の訴えを当然のように無視しつつ、ソボーは叫んだ。


「さぁ行けぇ!五秒以内に失せねぇとブッ殺すぞぉ!」

「えっ、あっ、でも…」

「ゼロッ!!」

「数えて!!」


 盗子はダッシュで逃げた。



 邪魔な盗子達を追い出し、そしてソボーと帝雅の一騎打ちが幕を開けた。


「やれやれ、やぁっと邪魔くせぇのが消えた…せーせーしたぜぇ。なぁオイ?」

「同意を求めるな。にしても貴様…やはり重ねていたのだな?塔子と娘を…」

「ケッ、だから全然似てねぇっつったろぉ?俺様のガキを、あんなブサイクと一緒にすんなやぁ。」

「一度ならず二度までも…。実の親を前に、娘を愚弄するか貴様…!」

「…だがまぁ、ガキなんて似たようなモンかもなぁ。ギャーギャーギャーギャーうるせぇしよぉ、ったく…」

「結局似てるのか似てないのかどっちなんだ。」

「殴られても蹴られても、家臣すら怯える俺様の周りを…ウロチョロとよぉ。」

「オイ貴様…私を無視するな。」

「ったく、ウゼェったらねぇよなぁ…。ウザすぎて、調子が狂っちまうわぁ。」

「む…無視するなぁあああああああ!!」


「二度と会いたくねぇ…地獄まで追ってきやがったら、殺すぜぇ…?盗子ぉ…!」



ジャッキィイイイン!!



 激しいバトルはしばらく続き、そして唐突に止んだ。

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