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~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
152/196

【152】帝都奪還作戦(7)

 苦怨が呼び出せる最大戦力である『破壊神:レーン』と戦仕との戦いは、熾烈を極め…るはずだった。

 『磁界師』であり、斥力によりあらゆる攻撃を受け付けない破壊神に果敢に挑む戦仕。そんな二人によって緊迫した死闘が繰り広げられる…はずだったのだ。


~帝城十階:舞踏の間~


「フゥウウウウ~~…ハァ、やれやれぜよ。まったく当たんねぇ!」

「ププッ☆僕ちゃんに攻撃とか当たるわけないのに!馬鹿だぁコイツー!」


 困ったことに、破壊神のキャラが邪魔をして緊迫感が全く足りていなかった。



「当たるわけない…だぁ?フン、調子乗るんじゃねぇぜよ。」

「ハァ?調子乗るもなにも事実なんですけどぉ~?事実当たってなくない~?」


「…だが、そんなテメェも一度は死んだんだ。」


「ッ!!!」


 一瞬だが破壊神の顔つきが変わった。


「つーことはよ、方法はあるってことぜよ!だったらオイラは、殴るのみよっ!」


 戦仕の怒涛の連続攻撃!


「いやいやいや~、だーからいくら殴っても当たらないってば~。」

「おいオメェ、“手袋”の反対は何ぜよ!?」


 戦仕はかつて『鬼神』や葉沙香にも放った『ロクの秘拳』の準備に入った。

 これで相手が“ロクブテ”と答えちゃうアホなら、不可避の秘拳『六武帝』を発動できる。


「へ?ロク…テブ?」

「まさか天然で間違えるアホが…!」


 アホ過ぎても駄目だった。


「ギャハハハ!わっけわかんねー!雑魚にも程があるぅー!」

「チッ、ならとっておきを見せてやるぁ!武神流最終奥義…『シチの秘拳:七武神』をよぉ!!」


 破壊神の舐めきった態度に、怒りがおさまらない戦仕はぶちキレた。


「いっくぜ破壊神!まずはテメェの、逃げ場をなくすぜよ!縛れ『寿老陣』!」


 構えた戦仕の背後には、薄っすらと謎の爺さんの影が見える。


「う、動けない…!?でも僕ちゃんの力の前では、拳が当たることは…」

「テメェの“斥力”…それが万能だと思ったら、大間違いぜよ!『弁財拳』!」


 今度は女性のような影が現れた。

 どうやらその名の通り、七柱の武神の力を借りる奥義のようだ。


「プハッハ!なに偉そうに吠えちゃってんの!?なんかクサッ!クッサー!」

「磁石の同極は確かに避け合うが…“絶対”付かねぇか!?いいや、そうじゃねぇだろぉおおおお!『毘沙門拳』!」

「ぐぉおおおおお!?おっ、押し潰され…るぅ…!これが、こんなのが…あと四発も…!?」

「三つ飛ばしてぇー!」

「え、飛ばしちゃうの!?“七”にはこだわらないわけ!?」

「さぁ、ひしゃげて潰れて塵と化せ!食らえ渾身の一撃、『大・黒・拳』!!」


「うはぁあああああああああああああああ!!」


 会心の一撃!

 破壊神は壁にメリ込んだ。



「ゼェ、ゼェ…!や、やったぜよ!オイラ…やっといいとこ見せられたぜよっ!」


 かなり生命力は削られたものの、戦仕は確かな手ごたえを感じていた。

 破壊神はピクリとも動かず、その様子に苦怨は目を疑った。


「ば、馬鹿な…!人間ごときが、神に打ち勝つ…だと…!?」

「うぉー!凄いんだー!あんなの食らったら誰でもペッチャンコだぜー!」

「ぺ、ペッチャンコって響きは嫌いなのだ!乙女のハートをエグるのだ!」

「ウッホ…ウホ。」


 ロリコングは忍美の肩にそっと手を置いた。


「慰めは要らないのだ!なんでそんな機能が付いてるのかが疑問なのだっ!」

「あぁ…開発者は変態ロリコンだったんだよ…」


 仕様と言うべきかバグと言うべきか。


「さてと…じゃ、次はオメェぜよ。お師さんのカタキ、討たせてもらうわ。」

「マズいですね…。さすがに彼以上の霊は、持ち合わせていな…」


ドッゴォオオオオオオオオン!!


「ぐっ…はぁ…!!」


 痛恨の一撃!

 戦仕はアバラが何本かイッた。



「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」



 破壊神の咆哮がこだました。


「グヘアアアッ!チッ、油断したぜよ…そんな攻撃も、できんのかよ…!」

「そうか、斥力で岩を弾いて…。やればできるんじゃないですかレーンさん。」


「クッソガキィ…!テメェこの俺様に血ぃ吐かせるたぁ、いい度胸だあぁ!!」


 破壊神はキャラが変わるほどブチ切れている。


「…ヘッ、やっと面構えに合ったキャラになったじゃねぇの。やるかよ?」

「殺ぉおおおおおおおおおおおす!!」


 そして―――



ドッゴォオオオオオオオオオオン!


「ウホォ…ホァアアアアッ…!!」

「ろ、ロリコちゃーーん!風穴開いたくらいで死んじゃ駄目なんだー!」

「ぐっ…ま、まさか…ここまで手当たり次第とは…!」

「うわーん!苦怨様苦怨様ー!しのみんをおいて逝かないでほしいのだー!」


 怒りに任せて暴れ狂う破壊神。

 敵味方関係ないその無差別攻撃は、まさに破壊の神の所業と言える。


「うぉおおおおおおおああああああああああ!!」

「チッ、雷撃まで効かねぇとか…もうお手上げぜよ…!」

「ウ…ウホホ…ホ……(ガクッ)」

「駄目なんだロリコちゃん!コイルが飛び出たくらいで死んじゃ駄目だー!」

「く、苦怨様だって!苦怨様だってもし内臓が出てもピンピンしてるのだっ!」

「いや、そんな化け物扱いはちょっと…」

「もう全員死ねぇえええ!死にやがれぇええええええ!!」

「…ふぅ、じゃあ…試しにやってみるかよ。たった今、いい手が浮かんだぜよ。」


 勇者なら苦怨を殺すが。


「さぁいくぜ破壊神!ここらでオイラの大作戦を見せてやるぜよ!覚悟しなっ!」

「黙れよ馬鹿野郎がぁあああああああああああ!!」

「フッ、甘ぇな!こう見えてオイラ、学院塾でも成績は良かった方ぜよ!」

「ウ…ウホ…ホ……(ガクッ)」

「駄目なんだロリコちゃん!首が落ちたくらいで死んじゃ駄目だー!」

「というかまだ壊れてなかったんかいって感じなのだ!しつこいのだ!」


 折角の緊迫した空気が台無しだ。


「ブチ壊す!!テメェら全員ブチ殺して、世界をブチ壊してやるぅううう!!」

「くっ、私はなんてものを…呼び出してしまったんだ…!」

「ウ…ウ…ホ……(ガクッ)」

「ロリコちゃーーーん!!」

「だからしつっこいのだぁーー!!」

「くたばれぇええええええええええ!!」

「うぉおおおお!邪魔くせぇえええええええ!!」


ドッガァアアアアアアン!!


 戦仕、会心の一撃!


 ロリータ・コングは大破した。



「うわーん!酷いんだー!ロリコちゃんがー!ロリコちゃんがぁー!」

「す、すまねぇ…つい…」

「“つい”で済ませていいのは師匠だけなんだー!あの人だけの特権なんだー!」

「だがまぁ、次こそは奴を…破壊神の野郎をやったるぜ。いい加減、ギャーギャーうるせぇしなぁ。」


 戦仕はフラつきながらも、なんとか立ち上がった。


「ま、待ちなさい!闇雲に突進しても返り討ちに遭うだけ…」

「うぉおおおおおおおおおおおおぉ!!」


 苦怨の制止を振り切り、戦仕は突撃した。


「フハハハ!馬鹿が、何度やっても『磁界師』である俺様に」

「届く一撃も、あるんぜよっ!!」

「なっ…!?ぐぁああああああああああああ!」


 戦仕、会心の一撃!

 今度こそ破壊神に大ダメージを与えた。


「グホッ、グハァアアア!な…なんだ…とぉ…!?ぶはっ!!」

「フン、言ったろ?オイラ、塾での成績は良かったってよぉ。」


 戦仕の右手にはロリコングの残骸が巻き付いている。


「そ、そうか…その手に巻きつけたコイル…電撃…そういうことですか…!」

「えっ、どういうことなのだ苦怨様!?しのみんわかんないのだ!」

「そう、『電磁石』…コイツの力で磁界を歪め、オメェの力は相殺したんぜよ!」

「ば、馬鹿な…!この俺様の斥力が…テメェみてぇなクソガキに…!」

「さぁ、こっからは我慢勝負だ!どっちが先にくたばるか…賭けようぜぇ!」

「ハァアアア!?ふざけるな…勝つのは俺様だぁああああああ!!」

「いいや、オイラだっ!!」

「違うぜ私なんだー!」

「じゃ、じゃあしのみんなのだ!」

「え…これ乗らなきゃダメ…?」


 苦怨はノリが悪い。


「食らえぇえええええ!『大破壊反撃掌』!!」

「テメェこそ食らえよ!必殺『超電磁崩拳』!!」


ズッガァアアアアアアアアアアン!!


「ぐぉおおおおお!!」

「がはぁあああっ!!」


 双方は大ダメージを受けた。


「というか霊媒師のアンタ、いい加減諦めるんだ!そうすれば霊は消え…」

「実は先程から試しているのですが、どうやら…制御が効かないようです。」

「うぉー!とんだ役立たずだぜー!」

「くっ…!」

「ち、違うのだ!役立たずっぷりならしのみんだって負けてないのだ!」

「忍美、それ…フォロー…?」


 苦怨は精神的ダメージを受けた。



「どりゃあああ!死ぬのはテメェだぁ小僧ぉおおおおおおお!!」

「いいや、オメェだ破壊神!!」

「じゃ、じゃあしのみんなのだ!」

「いや、それは違うよ忍美…」


「だったらテメェが死ねや小娘ぇえええええええ!!」


 なんと!本当に矛先が向いた。


「えぇーー!?だ、大失敗なのだ!口は災いの元とはこのことなのだ!」

「まずい…あんなの食らったら…!チッ、仕方ない…!」


 破壊神の攻撃。

 苦怨は忍美をかばった。


 さらにそれを戦仕がかばった。


「えっ…!?」

「ぐはぁああああああ!!」

「な…なぜかばった!?僕が死ねば破壊神も消えたかもしれないのに…!」

「…ヘッ、そんな勝ち方じゃ死んだお師さんに…キレられるぜよ…」

「ヘハハハッ!死んだなテメェ!その傷じゃあもう助からねぇよぉおお!!」


 まさに満身創痍の戦仕。

 もう立っているのがやっとのようだが、まだ心は折れていなかった。


「ゼェ、ゼェ、かもなぁ…。だったら次が、最後の一撃ぜよ!!」


 戦仕の暑苦しさは頂点に達した。


「なぁ人形師のアンタ、盗子サンに会ったらよ…言っといてほしいことがあるんぜよ。」

「オーケーわかったんだ!なんでも伝えるから言ってくれー!」

「よそ見してんじゃねぇよクソガキがぁあああ!ブッ殺ぉおおおおおす!!」

「ヘッ、しつけぇ奴は嫌われるぜ!?そろそろ大人しく死んでろよ!!」

「うけたまわったぜーー!」

「いや違っ…」

「これぞ俺様の最終奥義!食らえぇええええ必殺『超絶破防砲』!!」

「迎え撃つぜ渾身の一撃…『雷・帝・七・武・神』!うぉおおおおおおお!!」


ズガガガァアアアアアアアアアアン!!


 戦仕、会心の一撃!

 破壊神の偽魂を打ち砕いた!


「ぐぁあああああああああああああああ!!」

「うぉー!やったぜ勝ったぜぇー!」


「お、おのれ…!おのれぇえええええええええええええぇぇぇぇぇ…」


ヒュゥウウウ…


 破壊神は絶叫とともに、煙となって消えた。


「わ…わーい!勝ったのだ勝ったのだ…って、ハッ!違うのだ負けたのだ!」

「な、なんて人だ…。まさか一人で、古代神を打ち破るとは…。負けたよ。」

「ぐふっ!ヘヘッ、これでなんとか…お師さんに顔向けできるぜよ…」


 戦仕はなんとか生き残った



 ―――はずだった。


「うぉー!お、起きるんだ戦仕さん!死んじゃ駄目だ…息するんだー!!」

「ま、待て!どういうことだ!?その二人はともかく、なぜ僕らまで…!?」

「怖いのだ苦怨様ー!死にたくないのだー!」


「アナタのこの先…見えてしまったのですよ。未来無き者には、死を。」


 そこには十字禍の一人、夜玄が立っていた。

 戦仕の返り血で赤く染まっている。


「その目…なるほど、次のターゲットは僕ということですか。おかしいなぁ、一応仲間だと思っていたのですが。」

「未来とは、人の死が積み重なった先にあるのです。私が見るべき未来のためならば、誰でも手にかけますよ。たとえそれが仲間だろうと…主だろうとね。」

「やれやれ…確かに破壊神は敗れましたが、まだ僕は…!」

「最強のしもべを失った今、次はありません。それにアナタは…甘すぎる。」

「そんなことはないのだ!苦怨様のお仕置きはたまに涙が出るのだ!」

「いや、だからそれフォロー…?」

「その娘が、アナタを弱くしている。必要の無い存在をなぜ守るのですか?」

「忍美は…確かに困った子です。時々ウザッ…毎日それなりにウザッたい。」

「本人の前であんまりな発言なのだ!泣いていいなら号泣するのだ!」


 夜玄の様子から、彼が本気であることを察した苦怨。

 話して駄目なら戦って勝つしか生きる道は無い。


「僕は、『霊媒師』名家の分家の身…影の中の影の存在として、生きてきた。」

「なるほど。つまり彼女は、そんな小さき自分を慕ってくれる…心の支えということですか。」

「違うのだ!支えられてるのはしのみんなのだ!一人ぼっちのしのみんを…」

「ま、どう思うかはお任せしますよ。ただ、侮っているとアナタ…死にますよ?」


 苦怨は何やら怪しげな印を結んだ。

 どうやらまだ奥の手があるようだ。


「そうですか…。では、死んでください。」


 夜玄は正面から受けて立つ姿勢を見せた。


「さて…あ、ところで夜玄さん、アナタは全ての未来を見通しているのですか?」

「…いいえ。全てを見通せるほど万能ではありません。あくまで断片的に、です。それが何か?」

「そうですか…それを聞いて安心しました。ならば、賭ける価値はある!!」


ピカァアアアアア!


 なんと!再び破壊神が現れた。


「なっ…馬鹿な、破壊神の偽魂は壊されたはず…!」

「フッ、偽魂が無くとも呼べる…究極の裏技があるのです。成功して良かった。」

「も…もしかしてそれ、『自爆交霊』!?駄目なのだ死んじゃうのだ苦怨様!」

「命と引き換えに、記憶の内に住むあらゆる死者を呼び出す奥義…ですか。」

「フッ…。えっと、土男流さん…でしたか。すみませんが忍美を、頼めますか?」

「オーケー任せてくれ!ぶっちゃけ邪魔臭いけど引き受けたぜー!」

「イヤなのだ、しのみんを見捨てないでほしいのだ!いい子に…するから…!」


 号泣しながらすがりつく忍美。

 苦怨はその頭にそっと手を乗せた。


「…ありがとう、忍美。色々面倒もありましたが、お前には随分救われました。」

「く…苦怨様ぁ…!」

「さぁ行ってください。これ以上は…」

「で、でもぉ…!」


「いや、これ以上は邪魔なんで。」

「えぇっ!?」


 最後に本音が出た。

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