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~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
142/196

【142】バトル遊園地(4)

 竜神戦に続き三つ子戦も決着がついた。勇者らが途中で見かけた解樹が、もしあのままワキスメル大佐の激臭に屈していたとするなら、Death忍ランドに残る強敵はもうオロチだけということになる。

 そんなオロチと暗殺美との一戦は、助けに現れた『詐欺師:早季子』とその配下『大ボラ兄弟』の登場によって好転…するかと思われたが、そう甘くもなかった。


「うぐっ、こ…ここまでかな…。不甲斐ない結果で申し訳ないけど…命懸けたんだから…許して…ね……」


 悔しそうに一言を残し、早季子は石になった。

 周辺には同じように石化した大ボラ兄弟達が転がっている。


「ふぅ、詐欺師集団という割には…意外にしぶとかったな。しかし…」


 オロチは地面に座り込んでいる暗殺美を見下ろした。

 暗殺美は右足こそ石化しているものの、他はまだ大丈夫のようだ。


「チッ、雑魚どもがさ…!私をかばって無茶するから…こうなるのさ…」

「残念だがここまでだ、小娘。まぁ“この子”の目を見ず、よくここまで粘ったと言えるが。」

「キシャアアアアアアア!」


 オロチだけでも強敵なのに『神獣:パジリスキュ』にも睨まれ、暗殺美はもはや万事休すといった状況。


「さぁ、いい加減諦めるがいい。片足では攻撃どころか逃げることもままならんだろう?大人しく…」

「…ハァ、気乗りはしないけど…仕方ないさっ!」

「ッ!!?」


 なんと!暗殺美の姿が消えた。

 強烈な蹴りがオロチの腹にメリ込んだ。


「ぐはっ!か、片足でその機動力…!貴様、何をした!?」

「前の持ち主が乗っ取られたの知ってるから、使いたくなかったけど…ま、もう諦めるさ。」

「貴様その靴…まさかそれは、『風神』の…!?」

「調子こいた自分を恥じるがいいさ。ここからは…私のターンさ!」




「…とか、ゼェ、ゼェ、言ってた自分を、ゼェ、恥じる時が、来るとは…さ。」


 暗殺美は数分でバテた。


「ハァ、ハァ…チッ、参ったさ…。やっぱり片足じゃ…無理があったさ…」

「どうやら本気を出すのが遅すぎたようだな。とても残念だ、もし最初から…」

「と、見せかけてぇー!!」


 暗殺美の奇襲攻撃!

 ミス!攻撃は空振りに終わった。


「やれやれ…見苦しい者は好きではない。これ以上僕を失望させるでない。」

「フン…勝手に期待して勝手に失望してんじゃないさ。迷惑な…話さ…」

「安心しろ、せめて最後は美しく…跡形も無く消し去ってくれる。死ねぇ!!」


 オロチの必殺攻撃!

 暗殺美は逃げられない。


「くっ、ここまでかさ…!」


 ミス!攻撃は空振りに終わった。


「なっ…一体何が…!?今の奇妙な感覚は…」



「…ちょっと空間を歪めただけですよ。そんな攻撃防ぐなんて造作もないです。」



 木陰からどこかで聞いたような声が聞こえた。

 『オッパイ仙人』のもとで修行しているはずの、あの少年の声だ。


「えぇっ!?そ、そそそ、その声は…け、けけっ、け…!?」

「降参しませんか?悪いけどアナタは、“転職”に成功した僕の…敵じゃない。」

「こ、この僕に降参を求める…だと…?誰だ貴様は!?出て来い!そして名を名乗れ!」

「ハァ、駄目ですか…じゃあ仕方ないですね。いいでしょう。」


 オロチの呼びかけに答え、賢二が姿を現した。

 オッパイ仙人とお揃いのローブに身を包んでいる。


「僕の名は賢二。職業は…『ド変態』!!」


 暗殺美は失神した。



「ど…ドヘンタイ?この状況で冗談を言うとは余裕だな小僧。」


 オロチはどう接すればいいのかわからなそうな目で賢二を見ている。


「冗談なんかじゃないですよ?まぁなんというか…言うなれば“目覚めた”というやつです。」

「よくわからぬが、実力者なのは確か…か。ならば全力で討ち取るとしよう。」

「悪いけど男性には用が無いんですよ。死んじゃってください。」

「ムッ…失礼だな貴様、この僕が男に見えるとでも?」

「オーケーしょうがない、ならば揉んで確かめようか。」

「しょうがないのは貴様の脳だ!しょ、初対面の女にいきなり何を言う!?」

「か、片乳だけ!片乳だけでいいから!いや、後生だからボハッ!!」


 暗殺美、怒りの一撃!

 賢二は2・3回転して壁にメリ込んだ。


「あ、アンタ誰さ!?その賢二君らしからぬセリフのオンパレードは何さ!?」

「なっ、偽者なのか!?いや、僕は何が本物かをまず知らぬが…!」

「フッ…いいや、本物だよ。拙者は本物の…ド変態だ!!」


 確かにそこは揺るぎなかった。


「あっ…思い出したさ!さっきの流れ…そしてその一人称…アンタ『ウザ界』にいた変態仙人さ!」

「む?おぉ!どこかで見た乳だと思えば、そのサイズにして七十…」

「そ、それ以上言ったら二度と覚めない夢を見ることになるさ!」

「よし、じゃあ揉んで良いな。よく言うだろう?“乳繰り合うも多生の縁”と。」

「袖振り合えや!勝手に自分の都合のいい方に持ってくなさこの変態!」

「違う!ド変態だっ!!」

「だ…だからその顔でそういうセリフはやめろって言ってんのさー!」


 勇者だったら確実に録画する光景だった。


「チッ…どこまでもフザけた小僧だ、馬鹿にしおって…。早々に殺す!」


 乱入者のあまりのキャラに圧倒されていたオロチだったが、ようやく慣れてきた様子。

 凄まじい殺気が偽賢二を襲う。


「ほぉ、拙者を殺すと…?素晴らしい、殺せるもんなら…揉ませてみぃー!!」


 偽賢二は本来のオッパイ仙人の姿に変わった。

 暗殺美はちょっとホッとした。

 オロチはどうしていいかわからない。


「やっぱりアンタだったのかさこの変態ジジイ!って、なんでアンタが賢二君のカッコしてんのさ!?」

「小僧はまだ修行途中でのぉ。仕方なく師匠である拙者が揉みに来てやったというわけよ。」

「アンタなんかが師…!?こ、今度会ったとき彼が少しでも影響受けてたらアンタ殺すさ!」

「殺すぅ?ほほぉ~、それは楽しみなことだなぁ!」


 爺さんは“生乳を揉むまで死ねない呪い”を掛けられている。


「いいや、その前に僕が殺すっ!やれぃパジリスキュ!!」

「キッシャアアアアアアア!」


 パジリスキュの攻撃。

 だが爺さんに動じる気配はない。


「ほぉ、また随分と懐かしい珍獣を連れとるね。ま、拙者の敵ではないがの。」

「zzz…」

「な…にぃ…!?オイ、なぜ寝ている!?起きろパジリスキュ!」

「氷雪系魔法〔氷点下〕…。ま、蛇ごときを冬眠させるにはこれで十分だわい。」


〔氷点下〕

 賢者:LEVEL8の魔法(消費MP110)

 バナナで釘が打てるかという実験のために開発された割に、超強力な氷結魔法。


「い、いつの間に…!そうか、わざとフザけた振る舞いで敵を油断させ…」

「違う!ガチだっ!!」

「くっ…ふぅ、いかんいかん。僕としたことが先ほどから少し取り乱しすぎだ。」

「いや、それが人として正常なリアクションさ。アンタは間違ってないさ。」

「冷静に、慎重に…僕が貴様を葬ろう。どれだけ時間がかかろうともな。」

「やれやれ仕方ない。長期戦はちと困るが…少しばかり、揉んでやるかのぉ。」


 もちろん卑猥な意味で。



 こうして、揉むか揉まれるかの壮絶なバトルが始まった。


「くっ、なんという奴だ…!僕の攻撃を全て、あらゆる魔法で相殺とは…!」

「カハッハー!悪いのぉ小娘、これでも『大魔導士』とも呼ばれとってのぉ!」

「なぜそっちをメインに名乗らないのか疑問でならないさ。」

「ば、馬鹿な…!あらゆる魔法を極めた者にのみ与えられる名を…だと…!?」

「いつの世も、真実というのは往々にして残酷なものだよ。」

「自覚はあるようでなによりさ。だったらもうちょっと自重しろさ。」

「やれやれ…恐らく『仙人』という名もダテではないのだろう。貴様、何百年生きている?」

「三千年だわい。」

「こ、ことごとく規格外な…!フッ、だがいい。その長き人生も…ここまでだ!」

「シャアアアア!!」

「むっ、おやおや目覚めおったか蛇っこ。さすがは伝説に数えられし化け物よ。」

「いくぞパジリスキュ、“装備化”!!」


 大蛇は姿を変え、オロチの鎧と化した。

 凄まじいオーラがオロチを包み込む。


「なっ、なんてこったい…!」


 さすがの爺さんも驚いたのか、動揺のあまり杖を落とした。

 これまでに無かった反応だ。


「ハッハッハ!ほぉ、やはり怖ろしいかそうだろう!これぞ我が究極の装備…『蛇王の鎧』!」


「露出が減った…!」


 オロチはヒザから崩れ落ちた。



 そこから先は、一方的な展開だった。


「食らえエロスの権化!我が必殺の三連撃…『毒蛇の剛拳』!『縞蛇の螺旋撃』!『鎖蛇の絞首掌』!!」


ドガシッ!

ギャルルルッ!

ズギュゥウウウウウウ!


「おっとっと、うおっと!危ないのぉ…全部食らってもうたボヘェエエ!」

「なんで紙一重で避けたっぽい流れで全部食らってんのさ!?アンタ何がしたいのさ!?」


 オロチが繰り出す攻撃を、余すことなく食らいまくる爺さん。

 なぜ避けないのかは、何かしらを揉もうとする形状で固まっている両手が物語っていた。


「隙あらば揉む…!そのために生きてきたと言っても過言ではブホッ!」

「過言であれさ!命懸けでアホやってんじゃ…って、大袈裟に血ぃ吐きすぎじゃないかさ…?」

「ふむ…ま、長生きしすぎたツケだの。もはや戦闘には体がついてこんのだ。」

「アタシらもアンタにはついてけてないさ。」


 キャラや見た目のせいで、いまいち本心がわからないオッパイ仙人。

 だが冗談では済まない深手を負っているだけに、戦える体じゃないという話は嘘ではなさそうだ。


「賢二君の師匠だとか大魔導士だとか言ってた割に、防戦一方なのはなんでさ?まさかホントにただ揉みに来たのかさ?」

「む?だから言うたろう、拙者はもはや戦えんのよ。戦う力は…次の世代に残してきたわい。」

「次の世代…賢二君…戦う力………ホントに戦う力だけかさ?」


 暗殺美は気が気じゃない。


「ま、逃げるがよい小娘。今の拙者じゃ倒せはしまいが、心を折るくらいはできるだろうさ。」

「アンタ…死ぬ気かさ?…というか、どう折る気かによっては敵の方が心配さ。」

「死にはせん…いや、死ねるなら、それはそれで本望よ!行けぃ!!」

「くっ…!後ろ髪ひかれるけど…仕方ないさ!」


 暗殺美はオロチを見捨てた。




 そしてさらに時が過ぎ…爺さんが肉体的に、オロチが精神的に限界を迎えた頃。

 二人の戦いは意外な結末を迎えようとしていた。


「ハァ…ハァ…な、なんてことだ…なんたる…ことよ…!」


 息も絶え絶えに、狼狽するオッパイ仙人。

 逆にオロチはただ静かに…呆然と立ち尽くしている。


「まさか…まさか攻撃の最中…手が滑り、胸元に手が入るとは…!!」


「ッ!!!!!」


 まさかの“ラッキースケベ”が発動していた。


「生乳…そうかあれが、あれが!生・乳・の・感・触・か!!」

「くわぁあ゛あ゛あ゛あ゛っ!!ぼ、ぼぼ僕としたことが…なんたる不覚…!」

「これで…呪いが解けるわい…。そうか…拙者はやっと…死ねるのか…」

「えっ!そんなことで解かれる呪いなんて…って、でも本当に体が透けている…だと…!?」


 オッパイ仙人は全身から神々しい光を放っている。

 とても爺さんが乳を揉んだ末の光景には見えない。


「感謝するぞ小娘よ。ようやく満ち足りた…これで眠れるわい。」


 そして爺さんは、拳を握った右腕を高々と突き上げた。


「もはや我が生涯に!一・片・の・悔・い・Aカップかぁ………」


 爺さんは一定層の女性を敵に回した。


「くっ…悔やむな失敬な!ってなんだその手は!?両手で具体的にサイズを表現するな!」

「ん?片手で足りるか。」

「死ねぇええええええ!!死んじゃええええええ!!」


 半泣きで殴りかかるオロチ。

 だが消えかけの爺さんに当たることはなく、攻撃は空を切った。


「やれやれ、あれだけ苦労した三千年…それがこうも簡単に終わるか…」

「死ねっ!死ねぇっ!!」

「それはつまり、拙者は…ようやく役目を終えたということだろう。」

「くそっ、当たらない!当たらないぃー!」

「それが今ということは、拙者がこれまで生きた意味とは…」

「うわーん!もうヤダァーーー!!」


 オロチはキャラ崩壊が著しい。



「成すべきは成した…後は任せるぞい、我が…愛弟子よ……」



 そう言い残し、オッパイ仙人は消え去った。



 オロチは泣きながら帰った。

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