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~勇者が行く~  作者: 創造主
第四部
136/196

【136】修練の章

~修練の章:賢二編~


僕は賢二。今のところまだ生きてます。

先生の遺した魔法〔武者修行〕で送られた先には…なぜか頭にオッパイが付いた、見るからに変態オーラの漂うご老人が。

もしかしてこの方が、僕の新しいお師匠様ということ…?何かの間違いであってほしい…。


「あ、あの…アナタは一体どなたですか?ただ者じゃないのはわかりますが…」

「フッ、聞いて驚け?何を隠そう…『オッパイ仙人』とは、この拙者のことよ!」


 積極的に隠すべき通り名だった。


「まぁ、『十賢人』と呼ばれた時期もあったがのぉ。」

「え!じゃあアナタもかつて、人神大戦で活躍された英雄なんですか!?って、思わず聞き流したけどとんでもない通称をお持ちで!」

「いかにも。職業は…聞いて驚け?なんと究極のレア職、『ド変態』だわい!」

「僕は…どうすれば…」


 賢二はどうしようもない。


「む?なんだい驚かんのかい、つまらんのぉ~。」

「いえ、驚きを通り越してなんかドッと疲れが…」

「まぁ安心せい小僧、心配せんでも拙者がみっちり魔法を仕込んでやるわい。」

「あれ…?なんで僕が修行でここに来たってわかったんですか?」

「先ほどの光、〔武者修行〕だろう?久しぶりだが見ればわかる。」

「えっ、見ただけで!?いや、でも職業は変態さんだと…」

「お前さんは聞いたことないかな?“男は三十まで童貞を守り抜くと、魔法使いになれる”と。」

「いや、それはその手の方々が自分の心を守るためのアレでは…?」

「まぁ確かに三十程度ではなぁ。だが…齢三千を超えた頃から、こう呼ばれるようになるのだよ。」

「さ、三千!?」


「全ての魔術を統べる者…『大魔導士』とな。」


 爺さんに幸あれ。



過去の英雄らしいオッパイ仙人さんは、なんと三千年以上生きてるのだそう。

お師匠様も結構なお歳でしたが“夢の四桁は無理かも”とか言ってたし…そう考えるとなおのこと三千の凄さがわかります。


「三千年…ですか。さ、さすがに寿命ってことはないですよねぇ?」

「いや~、まぁ“半不死の呪い”をかけられていてのぉ。死ぬに死ねんのだて。」

「は、半不死…!?なんか『魔王』的な人が欲しがりそうな力ですね…」

「いやいや、そんな良いものでもないわ。終わりあるからこそ人は輝けるのよ。」

「あ、でも“半”ってことは、死ぬ方法もあるって意味ですよね?」

「ふむ…」


 賢二の問いに、急に黙り込んでしまったオッパイ仙人。


「あっ、いや、言わなくていいですよ!?弱点ですもんね、言えるはず…」

「いいや、聞いてくれ。そしていつの日か、その時がくるのであれば…導いてほしい。拙者の呪いを解くには…」

「そ、その方法とは…?」

「乳を…」

「え…?」


「生乳を…生乳を、揉めさえすれば…!!」

「そ…それはなんというか…いろんな意味で残念ですね…」


 賢二にはどうしようもない。


「だがまぁ全てはこの日のためと考えることにするわい。のぉ我が愛弟子よ。」

「えっと、でもこう言っちゃなんですが、死なないのならアナタが戦った方が確実なのでは…?」

「不死とはいえ衰えはある。もはや長時間の戦闘に耐えうる身ではないわい。」

「ハァ…やっぱり…僕ですか…」

「凄まじい逃げ腰だのぉ。何か嫌な記憶でもあるのかい?」

「むしろ他に無いです。」


 賢二にも幸あれ。



仙人さんは不死身っぽいので、もしかしたら代わりに戦ってもらえるんじゃ…と淡い期待を抱いてしまったのですが、どうやらやっぱり僕が頑張らなきゃいけない状況みたいです。逃げたいなぁ…。

でも、仙人さんは話してみると悪い人ではなさそうなので、それだけは救いです。


「そうかい、無印も逝きよったか…。まぁ若き者に託せたんだ、本望だろうて。」

「最期まで狙ってましたけどね、若いエキスを。」

「で、無印にはどう仕込まれた?それなりにはやれるんだろうなぁ小僧よ?」

「あ、ハイ一応…。禁詠呪法を使えば、ある程度の魔法は使える感じです。」

「禁詠…?あ~駄目駄目、あんなもんは邪道も邪道。身を滅ぼすよ、もう使うでない。」

「え!でも今の僕じゃ、普通にやったら強力な魔法なんて…!」

「いやいや、そう捨てたものでもないぞ?お前さんは大きな力を秘めておる。」

「大きな…力?いや、自分の実力くらいわかってるんでそんな嘘は…」

「嘘でもなんでもないわ。うまくいけば、拙者より十倍早く仕上がるだろうて。」

「いや、三百年とか途方も無いですごめんなさい。」

「ならば乳を揉むがいい。男の力の源は、いつの世も乳に始まり乳に終わる!」

「三千年間始まってない人にそう言われましても…」


 賢二は結構キツいことを言った。


「な、何を言う!服の上からとはいえ、邪神の乳を揉んだことくらい…!」

「えっ!そ、それは凄まじいですね…。主にモラル的な意味であり得ないです。」

「まぁなんにせよ、遊んでいても仕方ない。叩き込むぞ、時間ある限りのぉ。」

「え、あ…ハイ!お、お願いします!」


 果ては『賢者』か『変態』か。




~修練の章:盗子編~


アタシは盗子。今のところまだ生きてるよ…。

先生の遺した魔法〔武者修行〕で送られた先には、一番会いたくない奴がいたの。

アタシ…生きてまた勇者達に会えるのかなぁ…?何かの間違いであってほしい…。

逃げたい。超逃げたい!でも…今回役に立てなきゃ、ホントに駄目な子だよね…。

よしっ!こーなったら頑張ってみちゃうよ!ソボーに色々と教わって、絶対強くなってやる!


「て、てゆーわけだから、アタシを鍛えて強くして!お願いだよソボフッ!!」


 ソボーの平手打ちが炸裂!

 盗子は華麗に宙を舞った。


「ウゼェ。」

「い゛、痛いよ゛ぉ…!で、でもっ!でも負けないもんね!今回ばかりわふっ!」

「クセェ。」

「クサくないから!打撃なら修行と思って割り切れるけど、言葉の暴力ばふっ!」

「テメェ…状況わかってほざいてんのかぁ?俺様を誰だと思ってやがるよぉ?」

「わかってるよ大悪党でしょ!?でもね、アンタなんかにビビッてたらガバッ!」

「…上等だぁクソジャリ、物分りの悪ぃテメェに…叩き込んでやらぁ。」

「え!ホントに!?ホントにアタシに技を…」

「“究極の恐怖”…ってやつをなぁ!!」


あ、うん…死ぬかも。


 “かも”じゃないかも。



なんとか修行をつけてもらうつもりが、普通に殺されそうな状況に。

う、ううん違う、これはきっと修行フラグ!歪んではいるけど、きっとソボーなりの…


ズガァアアアアアン!!


「ちょ、ままま待ってよソボー!こんなハードな修行じゃ、死んじゃうってば!」

「だぁれが修行っつったぁ!?たぁっぷり可愛がって、殺してやるぁ!」


ドガァアアアアアン!!


「うわーん!こんな殺傷力の高い愛のムチ聞いたことないよぉー!」

「安心しろぉ愛は無ぇよ!もちろん憐れみもなぁ!食らえ『双剣二連撃』!!」


ビシュ!シュバッ!!


「ひぃいいいいい!死ぬ!やっぱ死ぬ!逃げなきゃ死にゅうううう!!」

「チッ、雑魚の分際でちょこまかと…!潔く死ねやクソジャリーー!!」


ズドドドドドドドドッ!!


「ゼェ、ゼェ、で、でもコレ、繰り返して、れば、結構な、修行に、なるよね!」

「あ゛ぁ?馬鹿かクソがぁ、逃げ回ってるだけの奴が何の役に立つよぉ?」


チュドォオオオオオン!!


「む、ムキィー!アタシだって…アタシだってぇ…!食らえ、『双剣二連撃』!」

「なっ…!?」


 だが何もおこらなかった。


「テメェエエ!!」


 代わりにソボーがおこった。



その後、ソボーにボッコボコにされつつも、なんとか三日生き延びたアタシって凄いと思う。

でもこのままじゃ確実に殺されちゃう…。なんとか交渉で…つまるところお金で、命の保証を…!


「てゆーわけで、ちょっと話を聞いて!アンタにも悪い話じゃないからさぁ!」

「テメェの声が気分悪ぃ。」

「なんでいっつも喋る権限すら無いの!?こう見えてアタシってば高貴な家柄の子だよ!?」

「あ゛ぁ?なんだぁテメェの家じゃ“クソ”のことを“高貴”っつーのかぁ?」

「畏れ多いよ!実はアタシ『皇女』様なんだよ!?超お嬢様なんだってばー!」

「ッ!!?オイちょっと待てやぁ、テメェ…今なんつったぁ?」


 ソボーの目付きが変わった。


「だーかーらー!超お嬢様なの!まぁこのほとばしる気品とか見ればわかると」

「そうじゃねぇ!皇女ってこたぁテメェ…あの『皇帝』のガキだってのかぁ!?」

「皇帝…?いや、アンタ何言ってんの?アタシの本当のお母ちゃんは『天帝』だってば!て・ん・て・い!」


 盗子は『皇帝:帝雅』のことを知らないため当然話は噛み合わないわけだが、ソボーは事情を察したようだ。


「…ヘッ、そういうことかよ…面白ぇ。いいだろぉ、マジで鍛えてやらぁ!!」

「え!いいの!?イジメじゃなくてまともに鍛えてくれるって意味だよね!?」

「その代わりテメェ、確実にあの男を殺せぇ?テメェがやることに意義がある。」

「へ?あの男って…?わ、わけわかんないけど…なんでその人を…?」


 なぜか急に気が変わったらしいソボー。

 機械仕掛けになっている顔の右半分を、同じく機械化された左手でさすりながら悪い笑みを浮かべている。


「ガハハハッ、復讐だぁ!あの野郎への借りは…腐るほどあってなぁ!!」


 頑張れ盗子。拒否権は無い。




~修練の章:絞死編~


私は絞死。当然のようにまだ生きています。

父の遺した魔法〔武者修行〕で送られた先には、見るからに怪しい姿の医師がいました。

私はこの人から何を学べばいいのでしょう。何かの間違いであってほしい…。


「というか、多分間違いなので帰ります。さようなら。」

「どういうわけなのかわからんが…まぁ待ちたまえ凶死君の子よ。」

「違います。私には『絞死』という、特に気に入ってもいない名前があります。」

「呼ばれたいのか違うのかどっちかね?まったく困ったところはソックリだよ。」

「どうやら父を知る方みたいですが、私にはアナタの力は必要無い。」

「フッ、そうはいかん。凶死君に頼まれているのでね。」

「頼み…とは…?」

「うむ…。生きていれば自分が教えただろう、様々な恐怖を叩き込んでくれと。」

「よそでやってください。」

「確かに、私が教えられる武技は無い。だが…キミを強化する薬なら作れる。」

「…それは少々気になるお話ですね。効果は?」

「辿る道は二つ。副作用に耐え切れず死ぬか…強大な力を得て、死ぬかだ。」


 結局死ぬそうです。



第一印象通り、医師はただの変人でした。一瞬でも興味を持った私が馬鹿でした。


「というわけで、やっぱり私は帰ります。もし引き止めたら無残な姿にします。」

「ふぅ、やれやれ…だから待ちたまえよ。物静かに見えて意外と短気な子だ。」

「無残な姿にします。」

「フッ、だがまだまだ甘いな少年。凶死君なら事後報告だが?」

「くっ…!いちいち父と比べるのはヤメてください。育てられてないですし。」

「だがキミを案じていたのは確かだよ。その証拠にほら、これを預かっている。」

「そ、それは…『遺言玉』…!」


<遺言玉>

 遺言を遺すために使われる魔法の玉。

 『電影玉』とは違い、対象者が死ぬまで内容を見られない特性を持つ。

 最初は青いが、作った者が死ぬと赤に変わる。


「最後の戦地へと向かう前だよ。もしもの時のためにと預かったのだが…ね。」

「赤い…ということは、ホントに死んでるんですね…。まぁ、いい気味です。」

「…見るかね?」


「イヤです。」


 賢明な判断だった。



変な医師が取り出したのは、父のものだという遺言玉でした。

とっても見たくないですが、見ないと話が進まないので仕方なく見ることにしました。


「ハァ、やれやれ仕方ないですね…。さっさと済ませてしまいましょう。」


 絞死は遺言玉を割った。

 煙が立ちこめ、そして教師の姿が現れた。


「久しぶりですね絞死。まぁまだ小さかったアナタは覚えてないでしょうが…」

「こ、これが…この人が私の父…なんですか?」

「その通りです。」


 なぜか教師が答えた。


「いや、普通に答えないでください。え、これって録画専用では…?」

「そういう所がまさしく凶死君だよ。他にも…」

「余計なことを言うと地獄の扉を内側から開けますよ、相原先生?」

「ふ、ふむ…冗談に聞こえんから怖い。」

「ところで私に何か用ですか?今さら父親ヅラとか凄まじく迷惑なんですが。」

「アナタがこれを見ている…それは私の力が必要だということを意味しています。違いますか?」

「お断りします。私は誰の力も必要としない。」

「ありがとう。アナタならきっと、素直に応じてくれると信じていました。」

「くっ、都合のいい時だけ…!」

「フフフ…さぁ、授業の時間です。」


 地獄の扉が開く予感が。




~修練の章:無職編~


ワチは無職。気づけばどっぷり巻き込まれていた地球での大決戦。困ったけどやるしかないです。

今のワチじゃまだまだですが、半年もあるなら…ワキスメル大佐さんの教えによって覚醒するか、鼻がもげるかどっちかです。いや、もげるのは確定かもですが。


「でも背に腹は…って感じなので捜してるですが、太郎さん…大佐さんは?」

「ん?あ~…ほら、好きじゃんあの人?シャワー。」

「あぁ…なんとも報われない行為ですよね…」


 大佐はかなりの綺麗好きだった。


「ところで中佐殿!これからどう修行するッスか?目指すものは何なんスか?」


 下端は無職に『中佐』と呼び掛けた。

 なんと無職は、『無職』の分際でなぜか階級を与えられているようだ。

 なにかの嫌がらせだろうか。


「目指すものです…?えと、大まかに言うなら『社会人』です。もう夢は見ないと決めたですよ…」

「フッ、じゃあ僕が育ててあげようか?こう見えて僕、レベル70だしね。」

「いや太郎さん、『遊び人』のレベルが高いのはプラスかマイナスかというと…ですよ?」

「だったら自分が『戦士』のコツを教えるッス!力任せに武器を、こうっ!!」


 特にタメにならなそうな太郎と下端。

 そこに召々とライも合流してきた。


「ボクでもいいよ?ヤル気は全然ないけど暇だしね♪」

「いやいや、ここは王に仕えニャい『王佐』のアタチが…!」


ワチ、これでも上官なのに…。


 無職は自信すら持てない。



残された数少ない隊員の方々は同情をたくさんくれたですが、まったくもって強さには繋がらない感じです。

やっぱりここは、大佐さんにお願いするしかないですよ。少しでも強く…ですよ!


「というわけで、お…ゲフッ!お、お願いです大佐さん!ワチをもっと鍛えてほしいですよ!」


 防護マスクを被っているにも関わらず、苦しさを隠しきれていない無職。

 その苦しみの元であるワキスメル大佐は、切れ長の垂れ目に金の短髪と口髭…そして見るからに軍人らしい屈強な肉体を持つ巨漢。首元や袖口からは、なにやら紫色の瘴気のようなものが漏れ出している。


「ん?ん~しかしねぇ、私は総合的には鍛えてきたが特に個性は無いしなぁ。」

「いや、お気づきでないだけで大変なモノを持っちゃってるですよ…?」


 なんと、大佐には自覚が無かった。


「それに残念だが、キミには既に…私の技術はほぼ全て見せてしまっている。」

「え、じゃあもしや大佐さんに教わることはもう無いのです…?」

「いや、そうじゃない。そうじゃなくてキミには…凄まじくセンスが無い。」

「今ワチ、夢も希望も根こそぎ断たれたです…」

「いくら見せても覚えられない…弟子としては致命的だ。最悪だね!アハハ!」

「た、大佐さん…ワチらが使ってる一割でいいから、気を使う努力を…」


 大佐は嗅覚以外も鈍感だった。


「だがしかし、諦めるのはまだ早いよ。諦めなければ望みはある!」

「ほ、ホントですか!?ワチもまだなんとかなるです!?」

「もちろんさ。私だって、努力で今の地位を築けたんだ。」


 それは“才能”のおかげだった。


「と、とにかく!どっからでもカモンですよ大佐さん!もうどんな試練にも耐えちゃうですよ!」

「フッ、いいだろう。あ、でもその前に…息が切れるしその防護マスクは外しなさい。顔は狙わないから大丈夫。」

「いや、それはちょっと。」


 無職は死ぬかもしれない。




~修練の章:戦仕編~


オイラは戦仕。暗黒神の手下、金隠のひょうたんに吸われて亜空間に閉じ込められて、変な王女に追い掛け回されて…。なんともツイてねぇ毎日ぜよ。

けど逃げようにも、女に泣かれちゃ振り切れねぇ。本当なら早いとこ盗子サンと合流して、彼女を守らなきゃなんねぇってのに…!


「っつーわけで、オイラ急ぐんぜよ!頼むからいい加減離してくれよアンタ!」


 そんな心底迷惑そうな戦仕の両腕に絡みつくのは、彼を幽閉しているウザ界の王女『鰤子』。

 自分の顔面が兵器並みの破壊力であることに対する自覚が全く無い、ある意味ワキスメル大佐と似たタイプだった。


「えぇっ、スリーサイズ!?そんなの言えないよぉ~!キャッ☆」

「いや、“話せ”じゃねぇぜよ!しかも悪ぃけど凄まじく興味無ぇ情報ぜよ!」

「ウフ☆戦仕様ったらシャイなんだからっ♪」

「天国の父ちゃん…オイラ、生まれて初めて女を殴っちまいそうぜよ…」

「どこにも行かないよね戦仕様ぁ?まぁどこか行こうにもこのウザ界からは…」

「フッ、オイラもただのんびりしてたわけじゃねぇ。今なら…やれるぜよ!」

「えっ…そ、その篭手は…!」

「そう、この『雷神の篭手』の力をもってすれば」


「こ、婚約腕輪…!?」


 戦仕はグーで殴った。



その後、王女から逃げ続ける毎日を送っていると、ふいに目の前の空間が歪んだんぜよ。んでもって、気づけば元の世界に…。

状況はよくわかんねぇが、なんにせよ救われたわ!これでやっと目的を果たせるぜよ!


「さーて、じゃあ早速盗子サンを探しに行くかな!待ってろよ盗子サ…」

「おっとぉ、そりゃあ駄目だな。今からお前にゃあ、壮絶な試練が待ってるもんでなぁ。」


 戦仕が振り返ると、そこには拳造が立っていた。


「えっ…お、お師さん!?そうか、アンタが空間を引き裂いてくれたんだな!けどなんでお師さんが地球に…?」

「ま、緊急事態ってやつよ。だからお前を強くする。死の一歩先までな。」

「いや、一歩“手前”までにしてくれよ!じゃねぇとそれ“修行”じゃなくて“処刑”ぜよ!」

「今回ばかりは余裕無ぇ状況でよぉ、お前への教えは…これで最後かもな。」

「どっちが死ぬ方向で話してるのかによって意味が全然違うが…」

「あ~、まぁどっちもだな。それほどヤベェ状況だっつーことよ。」

「そ、そんな事態かよ…。まさか噂の神さんどもが大暴れしてんのか!?」

「悪ぃが俺は独身だ。」

「誰もアンタのカミさんの話はしてねぇが…まぁモテねぇ理由はわかるぜよ。」

「さてと、んじゃまぁ始めるかねぇ。どんだけ成長してるか…楽しみだぜ。」

「お、オウ!任せろ見せてやぶべらっ!!」


 戦仕は処刑されかけた。



久々に会ったお師さんだが…やっぱし強ぇ。まだオイラが敵う相手じゃねぇぜよ。

けど、近づきてぇ…!いいや、最後ってんなら超えてやるのが男ってもんだ!


「ゼェ、ゼェ、ちくしょう…!オイラじゃ…オイラじゃ駄目なのかよ…!」

「フッ、いや?そう悪かねぇよ。その篭手もあるしなぁ、地力は十分さ。」

「ほ、ホントかよ!?まだやってける道はあるって意味なのか!?」

「あとは技だが…まぁ取っておきを仕込んでやるよ、ウチの“究極奥義”ってやつをよぉ。」

「究極…あの伝説の技を、ついに教えてもらえんのか!やったぜぇ!」

「だがよ、半端は許さねぇぜ?例えば女は殴れねぇとか甘ったれたこと…」

「それはもう大丈夫ぜよ。禁はこの前破っちまった…もうどうにでもなれぜよ!」

「そりゃ堕ちる時はとことん堕ちる奴の発想だぜ?やっぱやめとくか?」

「オイラは、もう立ち止まらねぇ!立ちはだかる壁は…この拳で全部、ブチ砕いてやる!!」



 その頃…大魔王が静養している城に、とある訪問者が。


「だ、大魔王様!自分を『女神』とほざく不届きな輩が…!超不届き者が…!」


 現れたのは、五百年前の十二神の一人『女神』とのことだが、なぜか応対した兵士は納得がいっていない様子。


「ん…?あ~、そういうことね。いや、いいんだよ彼女で。入れてあげて。」

「いや、ですがしかし…!え、“アレ”が…!?」


「ひっさしぶり~救世主ちゃん♪会いに来たよん♪この女神…鰤子ちゃんが☆」


 まさかのミスキャストだった。

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