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ろくばん
とりあえず、革靴を取りに戻った。
コンビニ袋に突っ込んで、スマホで電話をかけた。
「あのさ。今日はビジネスホテルに泊まることにするよ」
「そうなの? それがいいね。しっかりお風呂で洗ってきてね」
「分かった。明日帰るよ」
「がんばってね」
何をがんばるんだよ。こんなに冷たい女だとは思わなかった。
臭い、汚いを極端に嫌っていたからな。なんだかガッカリだ。
もう結婚はないな。同棲は終わりにしよう。
バケツの水は側溝に流して、ブラシは中に入れてドアの前に置いた。
きっと触れないから怒るだろうけど、明日帰って来てから片づけるか。
ビジネスホテルまでタクシーで行こう。もう、いっぱいいっぱいだ。
大通りで探すか。10月末だし結構冷えてきたな。雨で手足が冷たい。
あ----。犬の飼い主、今見たら何をするか分からんな。
沸々と殺意が沸き上がる。