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素足の指の間から柔らかいものが出てくる。
そう、小学生の頃にあった食育の一貫で、田んぼで稲を育てたりした。
田植えの時に素足で入った感覚と同じ、指の間から何かが出て来ていた。
信じられない。
ここにも犬のうんこがあった。
直に踏んでしまった。
この感触は有り得ない。
臭いのと、現実逃避で啞然としてしまった。
右足の裏にべっとりと付いたのが、はっきりと分かる。
素足の裏のうんこを、その辺のアスファルトに擦り付ける。
ちょっとは取れたかな。だけど、指の間のは無理だ。
スマホを取り出して電話をする。
「ヒカル。お願い。バケツに水を汲んできて」
「駅に行ったんじゃないの?」
「お願い。助けて。好きだよ。愛してる。だから助けて」
「どうしたの? すごく変だよ。分かったから。
バケツに水を汲んで行けばいいんだね?」
小雨に打たれながら、うんこを踏んだそのままでアパートへ歩き始めた。