●ⅠⅩ
あわてて持っている懐中電灯を点けて、ヒカルがいた方に向けた。
ヒカルがこちらを向いたが、うんこ人がいない。
どこに行ったんだ? 隠れる場所はないぞ。
「いなくなっちゃった」
「そうだね。とりあえず、家に入ろう」
こっちも逃げないといけない。
遠くからパトカーなのかサイレンが聞こえてきた。
家に急いで入ると直ぐにヒカルからバットを取り上げ、袋に入れて押し入れに隠した。
「さっきのうんこしてた人は男みたいだったと思うけど。どうかな?」
「男だよ。おしり丸出しでうんこしてたから頭にきちゃった」
「皮ジャン着てたよね」
「そうだね。このあたりでは見ないような感じだね」
「どこに行ったのかな?」
「消えたみたいに感じたよ?」
「だけど、あんなに力一杯殴ったらダメだよ。死んじゃうよ」
「ごめんなさい。許せなかったの」
「ひどい怪我じゃないといいけど」
ヒカルは草野球では代打で出ている。
バットコントロールが上手いのと足が速いからだ。
だけど、ボールは取れず、投げれず、守れないからレギュラーには出来ない。
殺りたい気持ちは昨日の事で十分理解できるから、もう責めるのはやめよう。
しかしあの男はなんだろう? 分からん。謎が残ったな。




