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無能力者の冒険

 異世界に飛ばされた僕は勇者として帝国に招かれた。


 この世界は突如魔界から攻め込んできた魔族の軍勢と戦争をしている、強大な力を持つ魔族に人類は劣勢にさらされていたのである。

 


 最後の希望を胸に勇者召喚をした帝国。


 何の力を持たない僕は帝国のお偉いさんに罵倒された……。


 どうやらチートもハーレムもない仕様らしい。


 僕はわずかなお金と装備をもらい帝国から追い出された。


 はじめは生きるために必死だった。


 なんで僕がこんな目に合うんだ、と。


 魔物もたくさんいた。


 何度も死にかけた。


 でも、少しずつ少しずつ魔物を倒し、街の人の頼みを聞いたり、冒険者ギルドで仕事をしたり、異世界での生活に慣れてきた。


 そんな僕にも仲間ができた。


 身体強化しかできない僕の事をいつも馬鹿にする女エルフ。


 悪徳領主を成敗したときに館にいた奴隷の獣人の女の子。


 僕の師匠であり良き友人となった女戦士。




 僕は必死だった。


 こんなにも必死に生きたことがあっただろうか?


 いまだ異能力は身体能力強化のみだ。


 でも今は剣が使える。


 魔法が使える。


 レベルが上がる。


 強くなっていく自分が実感できた。




 山でオーガを討伐、盗賊たちを討伐、船で航海の旅にでる、ドラゴンと戦う、魔王を倒すためのオーブを集める、オーブの守護者との激戦、空高く自由に駆け巡る飛空艇、帝国との和解、魔王との最終決戦……。



 僕、いや俺は異世界で、10年の歳月を過ごした。


 最後の決戦が始まる。

 俺たち人類は力を合わせえて魔王城に攻め込んだ。

 

いがみ合っていた帝国と王国、エルフとドワーフと人間、異世界人という俺を通してつながった絆。

 飛空艇が空をかけて爆撃をする。

 エルフの極大魔法が飛び交う。

 人間の騎士団たちが怒号をあげて戦う。


 総力戦だ。


 

「やっとここまでこれたな……」


 異世界で成長した俺はたくましい成人男性になっていた。


「さっさと倒して家に帰るわよ! ……魔王を倒したらご褒美をあげるわ……絶対帰らせないんだから!」


 相変わらずツンツンしているけど少し柔らかくなった女エルフ、プリム。美しい顔が赤くなっている。


「主様……この命は主様のもの……主様がいる場所が私の居場所……」


 美しく成長した獣人の娘、リサ。狐みたいな耳が頭に、お尻にはしっぽが生えている。

 興奮しているのか耳がぴくぴくしている。


「おう! レン! お前のおかげでここまでこれたんだ! 最後まで気合でいこうぜ!」


 ビキニアーマーで筋肉隆々ながらムチムチとした女性の魅力が溢れる女戦士、アイシャ。おれ剣の師匠。今では剣聖の称号を得ている。


「ああ、俺たちは最高の仲間だ! 魔王を倒すぞ!」


 俺は魔王を倒したら異世界に帰らなければいけない事を伝えてある……。


 俺は……帰りたくない……。


 こいつらと一緒にいたい。


 こいつらは冒険をしつつ、俺がこの世界に残れる方法を探してくれていた。


 方法は見つからなかった。

 でもこの世界は魔王の脅威にさらされている。

 魔王を倒さない選択肢なんてなかった。


 魔王との闘いは激戦だった。


 俺の剣と魔法の連撃、エルフの後衛からの支援魔法と攻撃魔法、女戦士の絶大な威力の攻撃。


 死闘は長く続いた。


 俺の魔法剣が魔王の胸を貫く。


 エルフが6個のオーブを投げつける。


 オーブが光り輝き、魔王がオーブの中に封印された。


 ついに俺は魔王を倒した。


 俺はボロボロになった仲間たちのもとに駆け寄った。


 抱きしめようとしたその時、見覚えがある魔法陣が俺の足元にあった。


 光に包まれる。



 俺はゆっくりと目を開けた。




 そこは学園の裏山だった……。


 俺は叫んだ。


「うおぉぉぉぉぉ!!!!!!! なんで! なんで帰ってきてしまったんだ!

俺は……俺は……」


 俺は昔の軽率で馬鹿な自分を本気で許せなかった。









 落ち着きを取り戻した俺は状況を整理しようとした。


「俺は……異世界から帰ってこれたのか。ここは裏山であの女と一緒にいた場所だ」


 身体をまさぐる。スマホで日時をチェックする。自分の顔をみる。


「学生服を着ている……あの時から時間が過ぎていない……顔もあの時のまま……いや、あの時よりはマシな面だろう」


 甘えていた自分をぶん殴りたい。

 あの頃の俺はもういない。


「異世界……もう一度あの女にあえれば異世界へ行けるのか?」


 この世界に未練はない。


 だが、異世界でおかしいと思ったことがある。


 異世界の魔物が、この世界のダンジョンから出てくる魔物と全く一緒だ。


「もしかしてつながっているのか?」


 異世界もこの世界も不思議な事が満ち溢れている。


「少しの希望があれば……賭けてみるか……」


 俺は新たに決意を胸に秘めた。


「必ずお前らとまた出会う! それまで待ってろよ!」


 俺のこの世界での冒険が始まった。








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