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全世界の覇者。  作者: 治崎 龍也
第1章 「べクトラム学院編」
10/15

兄と弟。

兄と弟がぶつかる。

勝つのは兄か。弟か。

破壊者と破壊者になろうとするもの。

破滅か。芽生えか。

べクトラム学院上半期学内順位決定戦準決勝。


第9話「全世界の覇者」

「兄と弟」

どうぞ!!

清水家。

それは古きから存在している家系である。

清水家の長はかならず破壊者出なければならない。

全てを破壊する殺意。その意思こそが全てだった。

その中で子供が2人産まれる。

紳助。と名づけられた兄と。

凛馬。と名づけられた弟だ。

2人は幼少期とても仲がよかった。

しかし、清水家では破壊者を養わなければならない。

選ばれたのは兄の紳助の方だった。

それからというもの。兄の紳助に施された教育は教育と言うにはとてもおぞましいものだった。


まず、殺意を教わる。実際に殺意を向けられ。

これが殺意だ。と。

そして次に殺し方を教わる。ナイフを握り。

初めは動物を狩る。

そして、最後に教わったのは人の殺し方。

どこをどうすれば死ぬか。徹底的に叩き込まれた。

それは幼少期の少年が受ける教育としてはあまりにも残酷であまりにも衝撃が強かった。


しかし、少年には才があった。

殺しの才能。本来であれば養ってはならない才能。

しかしそれは完全に養われた。


更には。肉体改造まで施され。少年はもはや。

人間ではなかった。少年は清水家の歴史の中で。

()()()()()()という、兵器になった。


それを哀れに思った母親の香織は。

せめて弟だけはと。凛馬だけは守ろうとした。

しかし、それが兄を。紳助を完全に狂わせた。


おぞましい教育を施され。最愛の母から見捨てられ。

心の中は空っぽになった。しかしそれはすぐに埋まった。弟への憎悪として。


兄は思った。弟さえ。凛馬さえ居なければ。

俺は母さんに見捨てられることはなかった。と。

そして兄は完全に破壊者となった。

全てを壊す者。全ての破壊者。それが今の紳助だ。



弟は思っていた。兄のようになりたいと。

紳助のように強く気高くなりたいと。

香織はいつも稽古でボロボロになる

凛馬に言っていた。お兄ちゃんは強いわ。

凛馬もきっと強くなるわよ。と。


しかし、現実は甘くない。弟には才がなかった。

弟には闘いの才能はない。幸い知恵の才能はあったが

清水家ではそんなものは無意味でしかなかった。

闘いの才に秀でていない者など。清水家には廃棄物でしか無かった。

けれど、母だけはそれを認めた。

あなたの知恵は必ず役に立つ。と。


香織はいつも稽古の終わった後のボロボロの凛馬に

いつも紳助の話をしていた。お兄ちゃんは凄いわよ。

だとか。お兄ちゃんの闘ってるところはかっこいいわね。だとか。兄を褒めていた。もちろん。弟も褒められていたが闘いの事は一切なにも言われなかった。


弟は思った。兄のように強くならなきゃ。

そうしたら僕も母さんに褒めてもらえる。

そして、弟はバハムートに選ばれた。

バハムートは自身で使用者を選ぶ。

バハムートが選んだということは

バハムートの力を使いこなせると判断したということ。しかし、誰もそれを認めようとしなかった。


弟を匿った母親は清水家から追放された。


そして凛馬は地下牢へ幽閉され。

そして紳助は最強の破壊者になった。


因縁の歯車が再び動き出す。


準決勝。第2試合まで残り30分。


「凛馬。作戦はあるのか?」


「いいや、全くない。強いて言うならあれを使うこと」

あれとはバハムートを変幻自在に操る技のことだ。


「あれって意図して使えるのか?」


「いいや、絶対無理だね。今まではピンチで発動してたけど条件はどうなんだろう。」


「多分、あの条件はお前が清水家の血を全力で出すことだろうな。」


「ん?どういうこと?」


「多分。破壊者になることだろう。清水家の破壊者としての血を支配しろ。それがトリガーだ。」


「破壊者に……なる。か、まぁ。戦いの中で模索していくよ。」


「それもいいが相手は神威だ。気を緩めるなよ。」


「うん。気を緩めるつもりは無いよ。本気で行くさ。」


「そうか。応援してるぞ。」


「うん。行ってくる。」


「ああ。行ってこい!!」


神牙は思い切り背中を叩く。


「勝ってくるよ!神牙!!」

凛馬はステージへ向かって歩き出す。

その背中は神牙が出会った頃より

遥かに大きくなっていた。


「お前はどこまで強くなるんだろうな。凛馬。」

神牙は少しにやけながらそう呟く。

「もっと、俺を楽しませてくれ。べクトラム学院。」



準決勝。第2試合。清水紳助VS清水凛馬。


兄と弟がステージへはいる。


「久しぶりだな。出来損ないの雑魚。」

紳助は弟を嘲るように殺意の目で睨みつける。


「ええ。お久しぶりです。」

凛馬はあえてスルーして会釈した。


「少しは強くなったんだろうな。退屈させないでくれよ。清水家の汚物が。」

紳助は鼻で笑いながらそう言った。


「はい、貴方を出鼻をくじくくらいはさせてもらいたいです。」

凛馬は笑いながら言った。


「なに。?あまり、調子に乗るなよ。フッ。まぁいいか。死なないように気をつけろよ。」


「はい、気をつけます。」


「両者位置について。デバイスを起動してください。」


「ドラゴンナイトデバイスON。装備。神器。ブリューナク。」


「ほう。神器か。少しは()()()()()。」

紳助は笑いながらデバイスを構える。


「ソードマスターデバイスON。装備。神器。神威。」

そこに現れたのは1本の刀。

しかし刀はまだ鞘に収まっている。


「ユニークデバイスに神威か。確かに規格外だな。」

神牙は紳助のデバイスがユニークだと気づいた。

ユニークデバイスとはその使用者しか使えない。

神牙のオールデバイスもそうだった。

今の神威は鞘のままだが。

神威は鞘から引き抜いてからが本領である。


決闘準備(デュエルスタンバイ)!!」

審判から合図が来る。


5。


4。


3。


2。


1。


決闘開始(デュエルスタート)!!」


開始の合図。しかし、2人は1歩も動かない。


「どうした。凛馬!!さぁ、こい!」

紳助が煽る。


「貴方こそ、なぜ抜刀しない。」


「汚物などに神威を使う価値はない。鞘に収めたままでいいだろう。」

紳助は更に凛馬を煽った。


「そう。ですか。なら、僕から行きます!!」

凛馬の目に闘志が宿る。


「ああ。こい!」

紳助は鞘のままの神威を構える。


「顕現せよ!!神魔を喰らう龍。バハムート!!」


「グルァァァァ!!!!」

黒き漆黒の体。紅き翼。神と悪魔を喰らう龍。

バハムートが現れる。


「何年ぶりだ。バハムート。さあ!!こい!!」


兄と弟がぶつかる。


「ブリューナク!神速光(ゴット・レーザー)!」


「そんなもの効かん。」

紳助は全てをかわし。

かわしきれないものは鞘のままの神威で弾いていた。


新崎先輩でもかわせなかったものを。

なんて反応速度だ。

「なら、これはどうだ!!ブリューナク!水の惑星(プラネットマリン)!!」

そう言うとブリューナクの先に大きな水塊が出来ていた。

そしてそれを紳助目がけて投げ飛ばす。


「ほう。だが。そんな技。俺には無意味だ。」

そう言うと紳助は鞘のままの神威を構える。


「斬。」

プラネットマリンは真っ二つになった。


「流石としかいいようがないな。やっぱり奥義しかないか。」


「どうした!!こんなものか!!」


「まだまだ!!奥義!!」

凛馬はブリューナクをかかげる。

そうすると、ブリューナクを軸にして渦潮が出来る。

破滅の海流(バースト・クレアント)!!」


「これは。少しまずいな。」

そう言うと抜刀の構えに入る


「させるか!!いけぇぇぇ!!!!!」

凛馬は紳助目掛けて渦潮の海流を飛ばす。

しかし、()()()()


「抜刀。神威。」

ゴォォォォン!!!

刀身に雷が落ちる。そして雷は刃となる。

バースト・クレアントはかき消された。


「出たか。神威。」


「まさか、お前ごときに抜刀させられるとはな。少し見くびっていたようだ。ここらが本番だ。行くぞ。」

そして神威を天へ掲げる。

「鳴り響け雷鳴。そして全てを蹴散らせ。」

天井に黒雲が広がる。


「ま、まずい!!水塊の繭(すいかいのまゆ)!!」

凛馬を水で出来た繭が包む。


「無駄な足掻きを。くらえ。落雷(サンダーボルテージ)。」

黒雲から無数の雷が凛馬に向かって落ちる。


「しまっ!!」


もう遅かった。水塊の繭は水属性の技。

落雷は雷属性の技だ。

単純に考えて相性は。最悪だった。


直撃。そして感電。

「くっ。うぁぁぁっ!!!バハムート!!喰らえ!!」

バハムートは凛馬の指示に従い落雷を喰らった。

そして。

「バハムート!!落雷(サンダーボルテージ)!!」


「ほう。吸収して、跳ね返すか。だが、自分の技に負けるわけがないだろう。」

紳助は華麗にかわし。かわせないものは神威の目にも止まらぬ剣技で斬った。


「さすがだ。こーなったらあれを使うしかない。」


「ほう。まだ奥の手があると?良いだろう。見せてみろ!!」


「その発言後悔させてやる。覚悟しろ。」

凛馬は自分に語りかける。心の中で。

全ての神経を心へと集中させる。

()()()()()()()()()()()()()


やぁ、もう1人の僕。

俺に何の用だ。

君の力を貸して欲しいんだ。

ふざけるな。お前みたいなやつに誰が貸すか。

仕方が無いでしょ?君の力がないと僕はあの人には勝てない。

なぜだ。分からない。何故そこまで()()に執着する?

勝ち。?僕はそんなものには興味が無い。

なんだと?じゃあ、なんの為に力が欲しい。

破壊者を()()()()()()()

そうか。気に入った!!力を貸してやろう。存分に使え。


「よし。準備は出来た。」

凛馬はやけに落ち着いていた。


「妙だな。なんなんだこの溢れ出る力は?」

紳助は神威を前に動じない凛馬にも驚くが。

凛馬は冷静なのに湧き出る力を感じてさらに驚く。


「さぁ、本当の闘いだ。」

声が変わっていた。


「誰だ貴様。」


「俺は俺だ。神魔を食らう破壊者。清水凛馬だ。」


「お前が清水家を名乗るな!!そして!破壊者は!1人でいい!!」


「まぁ、そんなカッカするなよ。()()()。」

凛馬の声は二つに分かれていて。重なっていた。

「さぁ、倒してやる。」

2人の凛馬は笑った。


「たくっ。何が変わったと思えば声だけか。拍子抜けだな。すぐ終わらせる。」

紳助は神威を構える。


「………」


「神威。雷滅斬(らいめつざん)。」

自分の目の前で8連撃。そして完成した斬撃を凛馬に飛ばした。


「纏え。バハムート。」

バハムートが鎧と化す。そして凛馬に纏う。

斬撃を直撃。しかし、凛馬は無傷だった。


「それは、琉尊の時の。」


さらに驚愕なことが起きる。


「装備。龍槍・バハムート。」

今、バハムートを鎧として装備しているのにさらにバハムートを槍で装備した。


「どうなってる?」

紳助は困惑する。

だが、そんなもので破壊者は動じない。


「さぁ、やろうか。兄さん。」


「兄と呼ぶな!雑魚が!!」


「神威!雷滅斬・改!!」

さっきの2倍、16連撃を飛ばすが


「喰らえ。龍槍・バハムート。」

凛馬が槍を前に突き出すと雷滅斬・改が吸収された。

そして、放出される。

「龍槍・バハムート。雷滅斬・龍改!」

同じ16連撃。しかし、威力は2倍。


「なっ!くっ!!!」

紳助はガードするが少し飛ばされる。

「やるな。」


「まだだ。奥義。龍槍・バハムート。」

凛馬はバハムートを地に刺す。

「奥義・破滅の大地(グラウンド・エンド)。」

地面がひび割れて、そこから光が出る。


「何だこの光は。くっ!まさか!!」

ひび割れた地面から爆発が起きる。

「くっ!!!!!」

――バァン!!

紳助はステージの壁まで吹き飛ばされて、黒煙が立ちこめる。


「やったか。これで終わりだな。」


「フッ。フフッ。フハッ。フハハっ。ハハハハ!!!」

紳助の笑い声がステージに響く。


「なにが、おかしい。」

凛馬はすこしイラつきを含みながら。


「おかしい?そんなわけが無いだろう!!」

紳助は顔を上げて目を開き告げる。

「久しぶりだ!!!こんなに熱いのは!!やっと!やっとだ!!この学園に来てやっと!!!」

そうして、興奮を抑えるように。

()()()()()()。」


凛馬は戦慄する。それは

紳助に攻撃が効いていないから。否。

紳助が笑っていたから。否。

解は1つ。それは紳助に目にやどっていた感情。

それは殺意。殺す意思。いまの紳助は完全に殺す気だった。


「こ゛こ゛か゛ら゛た゛!!!お゛ま゛え゛を゛こ゛ろ゛す゛!!」

果たして、これは人なのだろうか。

凛馬はそう思った。殺意だけが心に宿り。

殺すためだけの力。真の破壊者。

これが清水の教育を受けたものの末路だと悟る。


「秘奥義で蹴りをつける。秘奥義!!」

凛馬は秘奥義の構えに入る。


「いいだろう。秘奥義!!」

紳助も秘奥義の構えに入る。


「まずい!!凛馬その選択は間違えだ!!」

神牙は焦りながら言うがその声は届かない。

秘奥義には戦闘の経験が著しく現れる。

つまり、凛馬はどんなに強い秘奥義を使っても。

紳助の経験の上にたつ秘奥義には勝てない。


「龍槍・バハムート!!!!破滅の槍!!」

そう言って、龍槍バハムートを、思い切り投げる。


「そんなのものは効かない。秘奥義。」

紳助は殺意の目で正眼に神威を構える。


「はぁ。神威。秘奥義。雷・斬(らいきり)。」

そうして、龍槍を粉々に砕いた。

さらに一瞬にして凛馬の脇腹に刀身が当たる。


「なっ!!!」


「頑張ったな。だが、まだ俺には勝てないぞ。()()。」


「今、名前っ。」


「雷!!!」

神威の刀身の雷が凛馬の体全体に伝わる。


「うわぁぁぁぁ!!!!!」

凛馬はその場に倒れる。


「審判。俺の勝ちだ。」

そう言って紳助は神威を鞘に収める。


凛馬の心の中。

あはは。負けちゃったね。

ああ。そーだな。

ごめんね。せっかく力を貸してくれたのに。

いや。俺もだ。存分に貸してやれなかった。

強くなろう。

ああ。強くなるか。

“それでいつか必ず倒す”


「いつ……か……倒す。」

凛馬は拳を固く握り締め。掠れた声で紳助に言った。


「ああ。楽しみだ。」


「WINNER!!清水紳助!!!」


「凛馬!!!大丈夫か!!」


「あはは。負けちゃった。とりあえず今は寝るや。」

そうして凛馬は眠った。


「一応回復しておこう。全回復(フル・ヒール)。」


「やぁ、転校生。」


「最後、なぜ殺さなかった。」


「悪いな。弟を簡単に殺せるほど冷酷じゃないんだ。」


「なっ!!それは!」


「次の試合、楽しみにしてるぞ。決勝戦は三日後だ。」


「ああ。凛馬の仇は俺が取る。」


「やれるものならな。」


「覚悟しておけ。べクトラム学院1位。清水紳助!!」


「ああ!!心にとめておこう!!」

そう言って紳助はステージから出ていった。


「さっきの言葉の意味。俺にはわかったぞ。1位さんよ。」



本当はわかっていた。母さんが俺を愛していた事を。

俺はただ。凛馬が羨ましかったんだ。ただそれだけだった。凛馬より。俺の方がよっぽど子供だな。


「強くなったな。凛馬。俺は嬉しいぞ。」

何故か少し掠れた声で。

目を熱くしながら言ってしまっていた。


こうして、兄と弟をしばる鎖は解かれた。

そしてついに最強と最凶がぶつかる。

破壊者と超越者。壊す者と越える者。

2つの強大な力がぶつかり合う時。

待つのは破滅か。それとも何かの始まりか。


次回。「全世界の覇者。」第10話(最終話?)

超越者と破壊者。

お楽しみに!

「全世界の覇者」第9話。

「兄と弟」を読んで下さりありがとうございます。

作者の治崎龍也です。

※ネタバレを含みますので先に物語をお読みください。

今回は凛馬と紳助の兄弟それぞれ思いの話や。

戦闘シーンなどを書いてみました。

この話は2番目の見どころなのでかなりよくできたと思います。

ぜひ、読んで下さりましたら感想をください。

ブクマとかくれると嬉しいです。


最後に

「全世界の覇者」第1章完結まであと1話です。

最後まで走りますのでどうか。

最後までお読みください。


読んで下さりありがとうございました!

ちざきりゅうやでした!!

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