カエネーツ王国の暮らし
ここはカエネーツ王国。
動物たちが暮らす王国。
そこには様々な動物が足を引っ張り合いながら
暮らしていました。
僕はポンド。
コーギーっぽい足の短い茶色い犬。
僕の仲間は真っ黒なカバのマウーゴと、
白猫のフロウタ。
そして、おちゃめなネズミのサウビレ。
この足を引っ張りあう王国で唯一
表向き助け合って暮らしています。
僕たちの仕事は、隣町のアミロザマまで
毎日荷物を運ぶ単純作業です。
僕たちの王様であるノースリバ国王に仕える
大臣のゾエタンから毎日渡された荷物を
運んでいます。
今日もゾエタンの一言で一日が始まります。
「今日はこれだから」
ゾエタンはこの言葉しか言いません。
「よろしくね」とか「頼むよ」なんて
言葉はありません。
僕たちはその言葉を求めているのに。
報酬は食べ物と決まっている。
そんな言葉は必要ないのでしょう。
かける言葉の大切さなど分かっていないのだから。
今日の荷物はなにかわわかりません。
いつもみかん箱程度の黒い箱を1匹につき
1個渡されます。
ゾエタンからは中身を見るなとは言われていません。
でもこの王国で暮らすものは絶対に見ません。
見ることへの好奇心などもっていないのだから。
この仕事はとにかく大変です。
片道20kmある道のりを目的地の倉庫まで
ただただ歩いて運ぶだけなのですが、
道中では必ず足の引っ張り合いが
起こるのです。
僕たちはいつも4匹で歩いているのですが、
理由があります。
1匹で行動していると別の動物が
足を引っ張りにくるのです。
その筆頭が蛇のオオズと
その部下で熊のアップ、豚のスレッドです。
この仕事の説明としてこの黒い箱を届けて
報酬をもらうためには順位付けがあり、
全10匹が参加するなか下位の3匹は
報酬をもらえないのです。
僕たちが4匹で行動するのは理由は
このルールの対策です。
4匹で行動すれば最低でも1匹は
報酬を得ることができる。
そのために表向き協力しているのです。
4等分すれば食べ物はとても少ないですが
生き残ることができますから。
さて蛇のオオズはなにをしてくるのか。
ただ単純にしゃべりかけてきて
足を止めさせます。悪口を延々としゃべります。
ただそれだけですがしゃべり相手にならないと
嫌われて標的にされてしまいます。
実はこの蛇のオオズ、部下にも嫌われています。
他9匹すべての動物にももれなく嫌われています。
でも毎日報酬を手にしています。
なぜか。
なぜかだれもオオズに逆らわないのです。
ただ昔からいるという実績と、この国の歴史を
知っているというだけで、
王様のノースリバも
大臣のゾエタンも。
それどころかオオズの言うことを真に受け
他の動物たちを非難してくるのです。
僕たちはこのオオズのせいでただただ歩いて運ぶ
ルールに変更され歩いているのです。
僕は犬だから走れるのに。
オオズは部下のアップの背中に乗り
毎日アップに箱を2箱担がせて
1位を取り続けています。
道中でもオオズは僕たちに嫌がらせの言葉を
浴びせてきます。
「足があるやつは歩けていいよな」
「俺は足がないから困るよ。」
「お前らしっかり働けよ。ああ忙しい」
オオズはアップの背中にいるだけなのに
自分はだれよりも仕事をしているように
僕たちを怠け者とののしります。
そしてノースリバに告げ口をするのです。
「またマウーゴが仕事してないぞ」
オオズの標的はマウーゴです。
オオズは毎日のようにマウーゴの悪口を
言い広めます。
「あいつは箱すら満足に運べないくせに、
ペチャクチャ話すだけだな。」
「あいつのまわりもノラばかりだな。」
最初のうちはノースリバやゾエタンも相手に
していませんでしたが最近は一緒になって
マウーゴを非難しています。
マウーゴは歩くのが遅いです。
しかし仲間への優しさは一番です。
オオズはそんなマウーゴが大嫌いです。
自分が一番だと信じているから。
マウーゴに以前聞いたことがあります。
「なぜマウーゴの方が強いのにやり返さないの?」
マウーゴは言いました。
「相手にしてもみんなが生きづらくなるだろ?」
「大丈夫。やるときはやるさ。」
僕はそんなマウーゴを見てこう思いました。
マウーゴのおかげで標的にはならないなと。
僕は安全だ、と。
僕たちは表向き協力しています。
いつか裏切られてしまう可能性はあるのです。
なぜならオオズが明日でいなくなるから。
オオズはアミロザマに移動します。
この仕事で1位を10連続でとったものは
アミロザマに移動できるのです。
アミロザマに何があるのかは知りません。
ただオオズは嬉しそうに言ってました。
「やっとアミロザマにいける」と。