その勇者、姫の尻に敷かれて困っています。
突然書きたくなったものを...笑
勇者と言えば、一般的には魔物達を倒したりする、勇ましい者のことを指す。大体は、肝の太く、とても強い男性が勇者として選ばれ、そしてか弱い姫を救いに行くのだ、と書に書いてある。
まあ、言いたいこととしては、一体そんな嘘誰が書いたんだ、という話だ。
「リトぉ、あんた弱すぎじゃなぁい。」
目の前にいる女を見て、リトと呼ばれた勇者は初めて落胆した。今の体勢は、リトが長い間思い浮かべていた理想の体勢だったはずだが。どうしたわけだか、興奮はしなかった。無論、それもそのはず、女はリトを地面に押し付ける様な形で上に乗っており、強い力でリトを抑えていた。
もしそうでなければ、これは女が自分の上に乗っているという最高のシチュエーションだったわけだが。勿論、それだけではなく、それ以外にも不満に思う所はある。
「ったく、勇者が姫よりも弱くてどぉすんのよ。」
この女、勇者が助けるはずの姫なのである。
「勇者ぁ〜、昼ごは〜ん。お肉食べたぁ〜い。」
「僕は家政婦じゃないの。ほら、速く城に帰ろうよ。」
「帰りたくないもん!それに、いいの、ご飯作らなくって。」
私が死んだら、王様が大激怒だよぉ、と呟いてクスクス笑う姫を見て、リトはまだ王様とは仲良くしていたかったので、大人しくご飯を作り始めた。
リトは、小さな地方の村出身の勇者だった。小さな村で、またリトが王様と仲が良かっただけあって、盛大に送り出してもらった為、中々手ぶらでは帰れなくなってしまった。
そして、一番の問題でもある姫が、なんと幽閉されている城から出たくないと言い始めたのだ。こっちの方が、姫じゃなくて自然体でいれるから良いんだと。なんて怠け者な姫だ。また、助けなければいけないはずの彼女を死なせるわけにはいかないので、彼女がしない家事全般を、リトはほぼやっている。
勇者とは程遠い仕事だ。
「えぇ、私お野菜きらーいッ!」
「駄目、食べろよ、きちんと。」
「えええええ、しょうがないなぁ...。」
ぶつくさと文句を言いながら、彼女は昼ご飯の野菜炒めを突き始めた。全く、家政婦というより保育士と言ったほうが正しいぐらい、この姫は幼くて、子供っぽい。手にかかる姫だ。
「あー、待って、此処椅子ないんじゃん!」
大袈裟に彼女がそう叫ぶ。そして、リトの方を振り向くと、ニタァっと悪い笑みを浮かべて、「勇者さぁん、いつものあれやって〜!」と言った。
本当に、悪い姫だ。
リトは彼女の方に行くと、四つん這いになった。彼女が、その上に座って「やっぱり床は硬いからねぇ。」としみじみ呟いている。彼女曰く、椅子がないとご飯は食べられないらしい。リトは、必死に踏ん張っている。
リト・アルファン、齢17。職業は姫を助けるはずの勇者。姫の尻に(物理的にも)敷かれて、困っています。