幸せ一周忌
僕はどれだけ報いることができるだろうか。
今日は僕の一周忌だと教えてもらった。
母親たちとの会話を終え、レーナに抱かれながら広い部屋に入った。
辺りには、僕の親族、レーナの親族、メイド、執事、親友たち、地域住民、この国の王族、貴族、他の国の王族に大使、人間、魔族、獣人、エルフ、ドワーフ、鬼、天翼族、竜人、ドラゴン、ホビット、妖精、精霊、天使、悪魔、神族、他にも多数の多種多様な種族。
僕のためにたくさんの人が集まってきている。
みんな黒い服を着て暗い表情。
こんなにも僕のことを思っていてくれたなんて。
嬉しい、だけど、多すぎ!来すぎ!どうして!
集まってくれた人たちに驚きながら見渡しているとレーナが声をかけてくれた。
「ユキの人徳だよ」
「うう?」
僕は訳がわからず声をあげた。
こんなに関わり無かったと思うけど。
「ユキが亡くなった原因なんだけどね、前の魔神のせいなの。ユキに惚れた魔神が、私に嫉妬して結婚式の次の日に自らの命と共にユキと消えたの。
如何に魔神でも、ユキを連れ出したりどうにかしたりなんてできなかったから、魔神自身を触媒にした禁忌な方法を使ったみたい」
「ああううううううう!?」
僕が亡くなった理由って魔神の嫉妬!?
なんだそりゃ。
「前の魔神は悪辣卑劣俗悪で、そんな魔神がいなくなって、ありとあらゆる生き物がユキを救世主と呼んでいるだよ」
「あああああああああああああああああああ!?」
救世主!?
「それでなのかわからないけど、その魔神の穴をうめるようにして、ユキは魔神なんだよ」
「ううううううううううううう!?」
ま、魔神んんんんん!?
「元々ユキが男性だったころから英雄とか呼ばれてたんだから、救世主なんてそんなに変わらないでしょ」
「あう?」
そうだったの?
まじで?
はらほろひれはれ。
聞いたことない。
適当に依頼こなしてただけだよ?
「レーナちゃん、今日はユティが元気だね」
突然聞き慣れた暖かい渋い男の声が聞こえた。
お父さんだった。
黒い髪に黒い目が特徴的。今日は黒い服も着てるから黒づくし。
あれ?なんだかちょっとやつれてない?
大丈夫?
あ!僕のせいか。
僕がお父さんのことを考えていると、レーナは笑顔で僕を見ながらお父さんに返事を返す。
「そうなんだよね。ユキ君」
「ゆっ、ユキ?」
驚愕をあらわにした顔でレーナを見る。
そんなレーナはそんなお父さんの表情を意に介さず僕に向かって一言。
「ユキお願い」
「あい」
この機会待ってました。
ここはそうだな。
あれでいこう。
お父さんならこれで絶対に伝わる!
秘伝の技ニッポンチャチャチャ!
「いっおん!あ!あ!あ!
いっおん!あ!あ!あ!
いっおん!あ!あ!あ!」
どうお父さん?
「そ、それはまさか!日本チャチャチャ!?
それはユキにしか教えていないはず。
ゆ、ユキなのか!?本当に!?」
ぷるぷると手を震わせこちらに近づけた。
「あう!」
「そうか」
震えた手。だけど、大きくて暖かい優しい手。その手で僕の頭を優しく撫でる。
お父さんはひとしきり撫でると手を離した。
続いてくるっと回って広間に集まった人を見渡す。
そして叫ぶ。
「回転寿司!」
みんなが声の持ち主を見る。
こんな時に何を、という顔をお父さんに向けている。
「ユキがユティに転生して戻って着たあああ!宴だぁああああ!」
歓喜の叫声だった。
その場にいた者は、その届いた言葉の意味を理解し始めると、
次第に僕の方を見る。
僕も目一杯叫ぶ。
「あいいい!」
曇り空のような表情から快晴に変わった。
みんなは割れんばかりの歓声をあげる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
その中でちらっと見たお父さんの顔は、涙でくしゃくしゃだった。
でも笑顔だった。
誤字脱字等なにかありましたら、ご指摘いただけると幸いです。