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叶えば所詮、夢物語  作者: 4.1 1.2 4.2
38/41

迷子

 

「あぁ〜〜 腹減った〜」


 そんな某漫画誌の主人公のようなセリフを吐いている彼は、3日間 果物と水しか飲み食いしていない。


 そして、彼には動物が獲れない原因も大方の予想がついている。


「絶対、迷い込んで来てんだろ」


 下層域と中層域、中層域と上層域には厳密な区切りはない。だが、下層域の魔物が中層域に行けば中層域の魔物の餌食になるのは明白であり、それは中層域の魔物にも同じ事が言える。故に下の階層の魔物が上の階層に行く事は全くと言っていいほどない。


 だが、その逆で上層域の魔物が下の階層に現れるのはよく起こり、その度に討伐者が犠牲になり、ギルドから緊急依頼として張り出される。このように、階層違いの魔物が姿を現わすことを、討伐者の間では『迷い込み』や『迷子』なんて呼ぶ者もいる。


 よって、迷い込んだ魔物を討伐しないと、動物が獲れないうえ、討伐者はうかつに討伐依頼も受けれない。


 故に、迷子の討伐依頼は緊急性が高いため報酬が弾み、ギルド内に張り出されれば取り合いになるほど人気が高い依頼なのだ。


 だから余計おかしい


 なぜ3日たっても討伐されてない。なぜ動物が姿を現さない。考えるられる事は討伐者の依頼放棄。そして最悪の場合、依頼を受けた者の『死』。このどちらかだろう。


 だが、彼には次の討伐者が来るまで待つ事は出来ない。彼にとって、動物を狩れないという事は死活問題なのだ。


 よって、彼が出した決断が


「自分で討伐するしかないか……はぁ〜 めんどくさい」


 だった。


 そこから彼は全ての元凶たる魔物の討伐へと向かった。()を使い、音の聞こえるよう範囲を()()する。すると拡張した範囲のなかに数名の人を確認することができた。


 その数名は妙に慎重に歩き、足音を聞き取るのがやっとだった。


 彼は『何故周囲に何もいないのに、そこまで慎重になる』と思った。そこで彼は、何か理由でもあるのかと思い、音の聞こえる範囲を更に拡張させた。


 すると数人の他に、重みを感じさせる 鈍い足音が聞こえてきた。この足音が彼の目当てである魔物だ。そして迷子の魔物に見つからぬようにするために数人は、慎重に歩いてたいるのだと納得した


 そして彼は、数人の後をつけるように歩き続ける。


 すると前を歩く数人が急に歩くのをやめた。それと同時に目的の魔物の足音も消えた。それはあまりにも突然で、魔物自体 そこにいなかったのでは と思わせられるほど物音一つしなくなった。


 だが彼には魔物の場所が手に取るように分かった。その場所とは、すなわち空中だ。魔物は空高く飛び、前を歩く数人に奇襲を仕掛けているのだ


 後方から音で全て理解してしていた彼は、前で動きを止める討伐者の焦りや恐怖が伝わって来る。それを見かねた彼は、前を歩く討伐者を助ける決意をする。


 助ける決めた時の彼の行動は早かった。一心不乱に草木をかき分け、全速力で走った。だが想像以上に、魔物の落下速度の方が早かった。


『間に合わない』


 そう思った彼は、今度は下半身全体の筋肉の拡張する。するとみるみるうちに足が太くなり、まるで太ももが丸太のようになっている。


 そして筋肉を拡張した足で思いっきり地面を蹴ると、地面が足裏を中心に地割れを起こし 足がめり込んだ。その威力はさることながら、たったひと蹴りで数メートル進み凄まじい速さで前の討伐者に追いつく。


 追いついた彼は、足に引き続き 利き腕である右腕の筋肉も拡張する。腕も下半身同様、一気に太くなる。


 そして体を捻りながら腕な力を溜め、落下してくる魔物にタイミング良く 溜めた力を一気にぶつける。


 だが迷子の魔物。いくら筋肉を拡張したとて、絶対的力の差は縮まらない。それは彼自身が理解している事で、筋肉を拡張したとて致命傷を魔物に与える事は出来ない。


 故に彼は奥の手を使う。


 彼が使おうとしている奥の手。それは衝撃の拡張。衝撃とは物体ではない。故に目で見て能力を添付する事は不可能だ。


 しかし彼は違う。


 長年の実践とトレーニングでそれを可能にした。


 よって落下してきた魔物にタイミングよく合わせ、拡張した足で彼も空中に飛び上がり、拡張した利き腕に目一杯の力を込めた拳を魔物にぶつける。それして追撃するかのように、衝撃を拡張し更なるダメージを魔物に与えた。


 その日、魔物が奏でる生々しい音が森に響いた。


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