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叶えば所詮、夢物語  作者: 4.1 1.2 4.2
37/41

違和感

 

 蜜柑の勇気ある提案によりオリエンスのギルド主催の大会に参加することになった真紅達は、翌日にはノルデンの街を後にし、オリエンスへと向かった


 移動手段としてオリエンスには馬車で向かわず、森の中を徒歩で向かうことにした。徒歩で向かう理由として、魔物を討伐し少しでもptを稼ぎたいからと言うことと、大会まで1ヶ月以上あるためわざわざ交通費を使わずとも大会の開催日に間に合うからという2つの理由があったためだ。


 そして、森の中では低層域で睡眠をとり中層域で魔物を仕留めながら向かう計画だ。


 しかし、森に入ってオリエンスまで迷子にならず、たどり着けるの? と思うかもしれない。しかし大丈夫。この異世界、ブルフラ大陸は円のような形をした大陸だと言われている。なので、コンパス片手に東を指す方向に向歩いて行けば森の中でも自ずとオリエンスに着くのだ。そしてオリエンスに着く頃にはptもそれなりに溜まっているだろう。



 なのだが………



 ノルデンを旅立ってから3日間。魔物が一向に姿を現さない。そしてその影響か、食糧にしようと思っていた動物達も姿も見えない。


 初心者討伐者なら、「魔物が出なくてラッキー」と思い 気を緩めそうだが、真紅達は違った。それは過去に今と同じような妙な静けさを体験しているからだ。


 故に下層域で睡眠をとる時も、1ヶ月前の野宿では2人で警戒をしていたが、今回は3人で警戒にあたっている。



 そんな不思議な雰囲気を醸し出している森を警戒しながら歩いていると、無駄に神経を使わされ余計疲れる。特に真紅は他のメンバーよりも疲れているだろう。


「真紅、ずっと()使ってるけど大丈夫?」

「うん、まだ大丈夫」


 真紅がこの事を知ったのはつい先日。周囲を警戒するあまり、集中し無意識に目を紅く染めてた時、いつもより周りの音が良く聞こえるように思えた。錯覚なのか、思い込みなのか。よって何故良く聞こえるのかわからぬまま、『良く聞こえる』と言う理由で、今も目を使い続けているのだ。


「キツくなったら、ウチらが警戒するからいつでも言うんだよ」

「大丈夫だよ。ありがとう、翡翠」


 翡翠には『大丈夫』とは言ったものの、真紅の現状はかなり厳しいものと言える。音が良く聞こえるようになってから、ほぼ休み無しで目を使っているため精神的疲労が溜まっている。


 だが目を解除する訳にはいかない。今の森の状況はかなり最悪だ。いつ何が襲って来るかわからない。森のこの静けさがそれを物語っている。そして、『自分しかみんなを守れない』と言う、真紅のこの想いがよりプレッシャーを自身に負担をかけている。


 そんな真紅は集中を切らさぬよう、仲間を守るため なんとか踏ん張っているのだが、そろそろ限界は近い。


 真紅は目を使い過ぎて倒れたりでもしたら、それこそメンバーにより負担をかけてしまう。そう悟り真紅は翡翠に警戒の交代を申し出ようと声をかけようとした時、真紅の耳に鈍い音が聞こえてくる。


 真紅の耳にそれが届くと、他のメンバーに合図を送り、止まるように促す。他のメンバーは真紅の合図を受け取ると、足を止め息を殺す。


「足音からして、かなりの巨体だと思う。だから見つからないようにやり過ごした方がいいと思う」

「わかった。真紅がそう言うなら、そうしよう」


 瑠璃がうまく事をまとめてくれ、早急な判断が出来た真紅たちは、謎の魔物に見つからぬよう忍び足で移動を始める


 が、



 歩き始めて数分が経った頃、真紅の耳に届いていた鈍い足音が急に聞こえなくなった。それはあまりにも突然だったため、違和感を感じた真紅は右手を上げ再び止まるよう促す。


 皆が足を止ま、メンバーの足音も消えた、真の静寂が辺りを包みこむ。そして鈍い足音が本当に聞こえないか確認してみるが、やはり聞こえてこない。


 だが、足音が途絶えてから数秒後。どこからともなく風を切る音が近づいてくる。真紅は必死に音の出所を探す。


 そして音の出所が分かった時、真紅は叫んだ


「奴は上だ!!」


 するとみんなは一斉に上を見上げる。見上げた先には、下から見ただけでも分かる巨体が風を切りながら落下して来ていた。


 皆はそれを見た瞬間、口を開く者はいなかった。



 そう、全員が死を悟ったのだ。



 魔物を受け止めても潰されて死ぬ。


 避けても魔物が落下した際の風圧によって飛ばされ、体を打ち付け死ぬ。


 仮に風圧から生き残ったとしても、すぐに捕まり死ぬ。


 これが、本能が出した決断だった。そして、死ぬ未来しか見えない真紅たちは



 《死を…………受け入れた》



 その日、生々しい音が森に響いた。



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