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天然石に愛された娘  作者: 月森杏
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第23章

タイトル変更しました。


本日2回目の投稿です。

 

 その頃、月人たちはただひたすら歩いていた。

「ターキー、ほんとうにこんな奥の方なのか?道からも外れているから、俺たちだと普通に歩くしかないんだが……」と月人が少し息を切らしながら、前方を飛んでいるターキーに声をかけた。

「うん。ごめんね。もう少しだから頑張ってね」

 ターキーが申し訳なさそうに振り向いた。

「ここまで来たのは始めてだけど、枯れてる木はあるし、水晶の塔もなくて寂しい所なのね」

 ルチルが恐々と周りを見回した。

「僕もさっきのターコイズのおばあさんの所までしか来たことないから……でもあの黒っぽい岩山に『竜の洞穴』があるって聞いているよ」

 そう言ってターキーは前方を指差した。


 森の木々は疎らになり、前方には、採掘された跡のように黒く尖った岩が露出した岩山が現れた。張り出した木の根を避けながら道を進んで行くと、目の前の岩壁に大きな穴が開いていた。

「これが『竜の洞穴』か。まるで採掘場の跡地みたいだな。スピネル、ここでも採掘していたのか?」

 月人の問いにスピネルが首を振った。

「いや、俺の記憶ではこんな所で採掘していたなんて聞いたことがない」

 一緒に来た男たちも口々に同意する。

「自然にできたようにも見えないし、ずいぶん深いようだが……」

 月人が一歩足を踏み入れると、「気をつけろ!」とスピネルが声をかけた。


『竜の洞穴』は思ったよりも高さも広さもある洞窟だった。入口は全員が揃って入っても余裕だったが、奥に行くに従って狭く折れ曲がっているようだった。

 辺りが暗くなると、ヘルメットに付いた水晶が強い光を放った。

「じゃあ、気をつけて進もう!」

「待て!俺が先に進む。こう言う場所は俺たちの方が慣れている」

 歩き出そうとした月人の前にスピネルが進み出た。

 月人は大人しく先を譲った。


 穴道はゆっくりと蛇行して、少しずつ下っているようだった。

 注意深く足元を探すが、ブラックトルマリンらしい結晶は見つからなかった。

 ターキーとルチルに確認しても、石の精の気配は感じられないと言う。

 前方から冷たい風が吹いてきた。

「何処かに出口があるのかも知れないな」

 スピネルが後ろを振り返った。声が洞窟に反響して響く。

「やはりこれは採掘によって出来た穴ではないな。坑道ならば何本もの横穴があるはずだ。こんな風に一本道のはずがない」

「そうだな。俺もそう思う」

 スピネルの言葉に後続の男たちも同意する。


 月人の側でパタパタと飛んでいるターキーとルチルがブルッと体を震わせた。

「何だかすごく変な感じ。体の奥がぞわぞわするよ」

「ほんと、何か気分が悪いわ」

「大丈夫か?お前たち。ほら、つかまれ!」

 そう言って月人はターキーとルチルを抱きかかえると、嬉しそうにぎゅっと抱きつくふたりの背中をポンポンと優しく撫でた。

「あれっ?月人、胸のところが何か光ってるよ」

「あっ、ほんと……何だかホッとする光だわ」

 月人が胸元を見ると、ポケットに入れた瑠璃のブレスレットが淡く光っていた。


「瑠璃さん……」月人は瑠璃の穏やかな笑顔を思い出した。

「無理してないといいけど……」瑠璃を巻き込んでしまったことに、月人は後悔していた。そもそも何故自分は瑠璃を『水晶の森』に連れて来ようと思ったのかと。

「ねぇ、月人。ちょっとだけ瑠璃さまのブレスレットに触っちゃダメかな?」

「ねっ、お願い!」

「しょうがないな。絶対無くすなよ。瑠璃さんの大切なものなんだから」

 月人はふたりの可愛いお願いに逆らえなくて、胸ポケットからブレスレットを出すと、ターキーとルチルの手にしっかりと握らせた。


 ターキーとルチルはブレスレットを両手でしっかり持つと、うっとりした表情で見つめた。

「瑠璃さまの波動のエネルギーを感じるわ」

「うん。温かい光だね」

 月人もブレスレットを光を見ていると、穏やかな気持ちになって疲れが取れるような気がした。

「……疲れ?そんなに疲れていただろうか?」

 月人はそう思って後ろを振り返った。後ろを歩く男たちは、暗い目をして疲れきったように歩いている。

「スピネル!」そう呼びかけると、振り返ったスピネルも目に力のない疲れきった表情をしていた。

 これはおかしいと、月人は思った。日頃、こう言うことに慣れている男たちが、こんな風に疲れきってしまうものだろうか。そして、この目。


「みんな、ちょっと止まってくれ!」

 月人は男たちを呼び止めると、丸く円を描くように座らせた。その中心に瑠璃のブレスレットを持ったターキーとルチルを座らせると、男たちに向かって言った。

「ターキーたちが持っている、瑠璃さんのブレスレットを見るんだ!」

 男たちは訳がわからないと言うように首を傾げた。

「どうしたんだ、月人。んっ?そのブレスレット、光っているな」

「ああ。みんな、おかしいと思わないか?このくらいの行程で、お前たちがそんなに疲弊するものなのか?気がつかないうちに、ここのマイナスエネルギーに影響されているんだと思う。だから、瑠璃さんのブレスレットに宿ったエネルギーをわけて貰うんだ」

 スピネルがハッとしたように周りの男たちを見た。

「確かにそのようだな……」そう言ってスピネルは大きく息を吐き出した。


 しばらくの間、男たちは焚き火に当たるように瑠璃のエネルギーを浴びていた。

「不思議だ。温かい……」

「疲れがスッと引いていくようだ」

「何となく不安だった気持ちが落ち着いてきたよ」

 男たちが口々に感想を述べる。

「いつの間にマイナスエネルギーに影響されたいたんだろうな。恐ろしいな」

 スピネルがポツリと口にした。

「ああ、ほんとにな。ここに瑠璃さんのブレスレットがなかったら、気づかなかったよ」


 温かな光に充分癒されて、「そろそろ、行こうか」と言うスピネルの声に、男たちが立ち上がった。

 ターキーとルチルは、居心地のいい月人の腕の中に戻った。

 元気を取り戻した足どりでしばらく歩いて行くと、何度目かの角を曲がったところで遠くに光が見えてきた。

「出口だ!いったい何処に出ると言うんだ」

 先導するスピネルの足どりが若干早くなった。


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