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天然石に愛された娘  作者: 月森杏
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第22章

タイトル変更しました!

 

 瑠璃たちは店の中の倉庫に戻ると、力を失った石たちをテーブルの上に並べた。

 それはキラキラとカットされた水晶だったり、六角柱が連なるクラスターだったり、原石のままの大きな石だったり、大きさも種類も様々だった。

「どうしてこんなに種類がバラバラなのかしら?」

 卵形のムーンストーンを手にしながら、瑠璃は不思議そうに小首を傾げた。

「ほんと、不思議ですねぇ」とロージィがハート型のローズクォーツを撫でる。

「もしかしたら、試していたのかも知れないですね。どの石から力を奪うことが出来るか、どうかを……」

 マールが難しそうな顔をして、テーブルの上を見回した。腕を組んで考え込んでいる姿が、こんな時なのに可愛いなと瑠璃は思った。

「そうね。全ての石に対してその力が使えるなら、もっと被害が増えているはずよね」

 クリスティが確認するように石を手に取った。


 瑠璃は卵形のムーンストーンを優しく握りしめて、祈るように意識を集中した。すると卵形の石を包んだ手のひらに熱を感じてきた。人肌よりも少しだけ温かい。

「瑠璃さま!」と言うマールの声を聞いて、瑠璃がゆっくりと目を開くと、目の前の自分の手の中にある石が淡く光だした。

「マール、これって……」と瑠璃がゆっくり手のひらを開くと、マールとクリスティとロージィが覗き込むように近づいてきた。

「瑠璃さま、やりましたね!力が戻っています」

 マールたちが嬉しそうにくるくる回った。

「瑠璃さま、ありがとうございます」

「瑠璃さま~」

 みんな嬉しそうだ。


 気をよくした瑠璃が次々と石を握りしめる。大きいものは手のひらを当てて包み込む。マールたちも協力して、瑠璃と一緒に手のひらから力を注ぎ込む。

 やはり大きいものになると、それなりの時間がかかってしまい、瑠璃たちはだんだん疲れてきた。

「瑠璃さま、少し休んだ方がいいんじゃないですか?」

 マールが心配そうに瑠璃の顔を覗き込む。

「お顔の色も優れないようですし……」

 ロージィの声も少し震えている。

「大丈夫よ。そんなに疲れてないわ。こうして座っているだけなんだし……助けなくちゃいけない石たちは、まだまだたくさんあるんだから、みんなで頑張りましょう!」

 瑠璃が無理ににっこり笑うと、クリスティがそんな瑠璃の頬を優しく撫でた。

「瑠璃さま、お体の魔力がだいぶ少なくなっています。このままでは、瑠璃さまが倒れてしまいます」


 クリスティが力なく首を横に振った。

「私には魔力のことはよくわからないけど、もしかしたら、みんなにもたくさん負担をかけているのかしら?ロージィも何だか元気がないみたいだけど……」

 瑠璃が心配そうにロージィの方を窺うと、ロージィは申し訳なさそうに俯いた。

「すみません。瑠璃さま。私はもともとの力が皆さまより少なくて。もっとお役にたてると思っていたのに」

「大丈夫だよ、ロージィ!みんな少し力を使い過ぎてるだけだから。そうだ!これから森に行って力を補充してこよう。こんな状況なら森のみんなも協力してくれると思うし、瑠璃さまには自然と力が集まってくるはずだから」

「マール、それいい考えだわ。休憩にもなるし、さっそく森に行きましょう!」

 クリスティが嬉しそうに叫んだ。


 石の精たちが嬉しそうにくるくる回っている横で、瑠璃は少し悩んでいた。

「勝手に森に行ってもいいのかしら?月人さんの邪魔にならないかしら?」

「大丈夫ですよ、瑠璃さま!」

「そうそう!森と言っても村の近くですし、月人たちが向かっている森の境は遠いから、全く問題ありませんよ。むしろ瑠璃さまの体調が悪くなっていたりしたら、月人にめちゃくちゃ怒られちゃいます」

 マールが恐ろしそうに首を振るので、瑠璃は思わず笑ってしまった。

「笑い事ではないんですよ。月人は滅多に怒らないけど、怒ると怖いんですから……」

 石の精たちが何故か遠い目をしてうんうんとうなづいた。

「前に怒られたことがあるのかしら?」と瑠璃は心の中で思った。


 瑠璃が力を補充させるために森に行きたいとセレスに告げると、セレスは呆気なく了承してくれた。

「力を失った石に力を込めるには、相当なパワーを必要とすると思います。瑠璃さんのように森から力を貰うことが出来るならそれも仕方ないことです。でも瑠璃さんはこの世界の人ではないのですから、何が起こるかわかりません。今は月人が側にいないのですから、充分に注意が必要です。決して森の奥まで行かないように。村からあまり離れてはいけませんよ。あなたたち、瑠璃さんのことを頼みますよ」

 了承してくれたが、しっかり注意は受けた。

「任しておいて!何があっても瑠璃さまは僕たちで守るよ!もっとも僕たちがついていて、森で何かがあると思えないけどね」


 扉をすり抜けて飛び出していくマールを、瑠璃は重い扉を開けて慌てて追いかけた。

「セレスさん、いってきます」

「瑠璃さん、気をつけてね」

 瑠璃が手を振ると、セレスは見えなくなるまで見送ってくれた。

「ルーナのお祖母さんはすっごくいい人だけど、ちょっと心配性なんだよね」

 マールが瑠璃の周りをくるくる飛びながらそう言うと、「そう言えば……」とロージィがつぶやいた。

「最近、ルーナの姿を見ませんね。前はよく森にも来ていたのに……」

「……あいつ、何かおかしいんだよ!瑠璃さまにも失礼なこと言うし、お祖母さんの手伝いも全然してないみたいで」

 マールが苦々しそうに言うと、ロージィが首を傾げた。

「変ですねぇ。前はとてもいい娘だったのに……」


 瑠璃たちが歩いて行くと、森の石たちが嬉しそうに声をあげた。瑠璃にも、その小さな綺麗な声がオルゴールの音色のように聞こえた。

「みんな、喜んでいるね」

「わあ、森がキラキラ光ってるわ」

 瑠璃が見上げると、森から金色に光る粉のようなものがふわふわと舞い落ちてくる。

 両手を挙げると、その金色の光る粉が瑠璃の中にスッと吸い込まれていく。

「……綺麗ね。すごく不思議だけど、何だか体が温かくなってきたわ。それにとっても幸せな気持ち……」

 瑠璃が目を閉じて意識を集中していると、不意に後ろから寒々しい気配が漂ってきた。


「驚いたな。そんな便利な力を持つ人間がいたとはな」

 その声は暗く憎しみに溢れていた。

 瑠璃は振り返ろうとしてガックリと膝をついた。

 突然、目の前が真っ暗になって立っていられなくなったのだ。

「瑠璃さま~!」

 マールたちの声がだんだん遠くなっていった。


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