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ヤンデレ少女の弟子にされたんだが。  作者: ぱりぽり土鍋
第六章 女騎士と新たな魔導士
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双子の少女なんだが

 俺が城の会議室に向かうと、この城に来た時初めて出会ったキリッとした青髪の騎士風の女性、そして(いか)つい感じの、顔に横一文字に傷のあるおっさんがいた。


 女性は俺に気付くと、さっと席を立ち手を差し出した。


「セントマリア王国蒼薔薇騎士団団長、ネム・ラデア・フォッシェルンだ。横の男は副団長のレイ・ダン・ドルシェン」


 ネムさんの紹介に合わせて、厳つい男の人が軽く頭を下げる。


「魔術師協会セントマリア王国支部長――エドガー・ルナ・ライセラスだ」


 握手をしながらお互いに軽い自己紹介をする。


 この女性はネムさんというらしい。

 長い青い髪。真っ直ぐに俺を見つめる眼差し。

 凛々しくも女性らしさを失っていない顔立ち。

 元の世界では宝塚美人というやつに近いだろうか。

 男装が似合いそうなアレである。


「まずは、感謝を。卿のお陰で多くの城の命が救われた。

 到着早々、早速力を借りることになってすまない、ライセラス卿」


 ライセラス卿。

 俺がこの五年間で得た地位のことだ。

 片っ端から戦争に割り込んではそれを両軍を半壊させるほどまでに暴れまわっていたら、いつの間にかこんな地位を手に入れていた。


 魔術士協会の方は別件だ。

 また近いうちに話す機会があるだろう。


「気にしないでくれ。上からはネムさん……あ、いや、フォッシェルン卿の指揮下につけと言われている。好きにこき使ってくれていい」

「……心強い」


 俺の言葉にネムさんはふわっと少しだけその硬い表情を崩す。

 クールな女性が浮かべるそんな微笑みは、正直言ってかわいかった。


「それでは、ライセラス卿も一時的にわが軍の兵力として扱わせてもらうがいいだろうか?」

「ああ、構わない、ただ……」

「ただ……?」

「俺を使うなら、俺の周りに味方を近づけるな――全員殺す(・・・・)

「……?それはどういうことだ?」

「言葉通りの意味だ。手加減できない」


 こればかりは苦笑いを浮かべ、誤魔化すしかない。


「……難儀なものだな、卿も」


 ネムさんはそんな俺を見て、ふっと笑った。


「そう言ってくれて助かる。あと、俺はエドガーでいい。

 最近貴族になったばかりで、その呼び名だと歯がむずむずする」

「――なら私もネムでいい。よろしく、エドガー」

「ああ、ネム」


 その後、俺の戦術的戦闘力などを詳しく聞かれた後、作戦は追って知らせる、とその場は解散となった。



 ***



「……すごい数だな」


 今、俺は城の頂上から敵軍を見下ろしていた。


 今、この城をぐるりと取り囲んでいるガルガンチュア帝国の兵は、およそ8000。


 城を囲む堀の外に待機し、その包囲網はネズミ一匹通しはしないだろう。

 それが正方形であるこのサキエル城を完全に取り囲んでいる。


 正門側には約2000

 右辺、左辺、裏側にはそれぞれ1000。


 残りの3000がそのさらに周囲を円状に取り囲んでいる。

 そこには兵糧を積んだ馬車が見えた。


 俺が来た時は、ちょうど敵の特殊な兵士たちが奇襲して来たタイミングだったようだ。

 魔獣兵というらしい。

 今回のセントマリア王国への侵攻において脅威となっているガルガンチュア帝国の新兵器のようだ。


 ―――バサバサバサ。


 その時、俺の上空で何かが羽ばたく音。 

 そして、俺の視界に降りる影。


 それに俺は顔を上げた。

 それは―――。


「……エドガー様、遅れてしまい申し訳ございません」

「やっほ~~、エドガー!」


 それは二人の小悪魔――その背から蝙蝠の羽根を生やした、二人のメイド(・・・)だった。


 透明なほど白い肌に、プラチナブロンドの髪のサイドテール。

 そしてそのサファイアのような青い瞳の美少女メイド二人。


 ――俺の待ち人であり、俺の従者(・・)でもある。

 

「……やっと来たか」


 二人はふわり、と俺の隣に降り立ち、ぱさり、とその羽根をたたむ。


「――ファラ、ただいま到着いたしました」


 シックな長い袖、長いスカートのメイド服を着て、右にサイドテールを寄せたその大人しそうな少女は静かに頭を下げ。


「――フェリ、到着!寂しかっただろ、エドガー?」


 半袖のミニスカートのメイド服を着た、左にサイドテールを寄せたもう一人の少女は、生意気そうに腰に腕を当て、こちらを見てニヤついている。


「――言ってろ」


 目下に広がる敵の大軍を見下ろしながら、俺は口を開いた。


「――今回は数が数だからな、お前らも手伝え」

「……ありがとうございます」


 それにファラは丁寧にお辞儀をし、感謝を述べ。


「へぇ、わかってんじゃん!」


 フェリはファラとは対照的にぐりぐり、と俺の胸を人差し指で押しながら嬉しそうに笑った。


「ようやくボクの出番!最近暴れさせてくれなかったからな――、腕が鳴るなぁーー!――いひッ!」

「ご期待に沿えるよう尽力いたします」


「……ぁぁ」


 俺に心酔しているような態度のファラと、悪い友人の様に絡んでくるフェリ。


 双子というのにこれほどまで性格に違いが出来るのはなぜだろうな……そう思いながら俺は二人を見つめる。


 違いと言えばサイドテールの方向だけの、そのそっくりな二人を。


 ***


 この双子。


 ファラとフェリはニンゲンではない。

 俺と同じ。

 人の皮を被った魔獣――いわば、魔人(・・)である。


 人の意識を失い暴れまわっていたこいつらを魔力を発散する相手としてしっかりぼこぼこ(・・・・)にした後、無理やり従属の契約を結ぶことで俺の魔力タンク(・・・・・)とした。


 俺が引っ張り出すための魔力タンクではなく、俺の過剰な魔力の受け入れるための魔力タンクとして。


 ベロニカは既にその器一杯の魔力を持っているためそれはできなかったが、こいつらは十分な魔力を受け入られる器を持っていたため、ほぼそのために契約は結んだと言っても良い。


 契約を結んだ時、最悪魔力タンクとしての働きをしてくれればあとはある程度自由にさせておくつもりだった。


 だが二人はなんやかんやと言って俺から離れようとはせず、今では俺の助手――片腕のような存在として働いてもらっている。



 ***



 ふと残り一人の、俺と契約した少女に意識がいく。


「ベロニカは?」


 いつもなら真っ先に俺の元へとやって来るあいつ(・・・)がいない理由を、二人に聞いた。


「ベロニカ様はアンジェ様(・・・・・)に残るように言われて……」

「泣き叫んでたね」


「……そうか」


 思わず俺からこぼれる溜め息。

 ベロニカがどうせまたくだらないことをしでかして、アンジェに叱られているのだろう。


 アンジェとは、今の俺の家を任せている女性のことだ。

 家事だけでなく、文字通り家を守ること自体も任せている。


 その立場上、現エドガー・ルナ・ライセラス卿一派において、実質俺の次に発言権があると言っても過言ではない。

 と言ってもその一派は俺、この双子、ベロニカ、アンジェの五人だけだが……。


 アンジェは堅実で、それでいて家族(・・)に優しい、そんな素敵な女性である。

 俺も留守の家を任せられるほど信頼している。


「……ということは、今回は三人か」


 コクリ、とそれにファラが頷いた。


「それと――レティシア(・・・・・)からは?」

「はいはい~、これだね」


 ぽす、とフェリから渡される手紙。

 その封を無造作に切る。


 ――そこにはこう書かれていた。


『現時点を以て、サキエル城におけるセントマリア王国軍の騎士、兵士の全指揮権をこのエドガー・ルナ・ライセラスに譲渡する。


 セントマリア王国 女王 レティシア・ライラ・セントマリア』


 それは王女からの証書――殺しの許可(・・・・・)だった。


 この証書を双子より受け取った瞬間――ネムには悪いがここ(・・)はもう俺の戦場となった。


 ――お前は後は見てるだけでいい。


「それじゃ、お前ら――」


 高級そうなその証書を折りたたんで俺は立ち上がる。


「――殺るか(・・・)

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