表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ少女の弟子にされたんだが。  作者: ぱりぽり土鍋
第五章 ヤンデレ少女、至福の時……!
93/168

アリサ6

エロい表現注意

 そして、その日の夜のこと。


「……んぅ」


 ふっと目が覚める。

 真夜中。

 辺りはまだ暗い。


「……くぁ……」

 

 エドが寝ている。

 安らかな寝顔。


 それを見て、ほっと安心する。

 目が覚めた時、一番初めに見るのが愛しい人という幸せ。

 それを今まで痛い程噛みしめてきた。


「……ぅくっ」


 ぎゅぅっとその私の思考に反応するように、エドガーの左手がぎゅぅっと私の魔臓を握り締める。

 その切なくなるような圧力に、ぷるぷる、と震える私の体。

 

 ――もし今してしまったら、どれほどの間抜け面をエドに晒してしまうかわからない。


 そんなくだらないことを考えてしまう。

 

 ――今日は絶対にいつも以上に反応してしまうだろう。魔臓をぎゅむぎゅむと握られながら、子宮を責められたら、もう、どうなってしまうかわからない。

 

 私はそろり、と布団から抜け出し、ぺたぺた、と冷たい床を歩いていく。


「……どこいくんですか、アリサさん」


 セルティが、布団から身をおこし、こちらを眠そうに見た。

 私は軽く首を竦める。


「……ちょっとエドに内緒でやることがあって」

「私も少しお話があるので、いいですか?」

「……ええ、もちろん」

「ありがとうございます」


 そして、私達は二人、リビングではなく、私の地下の実験室へと向かった。



 ***



「……それで話って何かしら?」

「……ふふ。私達が話すことなんて一つしかないじゃないですか」


 くすくす、と可笑しそうにセルティが笑う。


「……ふぅん」


 その普段エドの前では見せないような、感情の籠っていないセルティの目。

 私に何の興味も抱いていない、そんな目。


 ――ま、でもこんなものだ。

 実際、今私も冷めた目でセルティを見ていると思うし、実際、セルティなど、あの人に比べたらどうでもいい。

 エリーだってそうだろう。

 所詮、私達は一人の男をそれぞれ愛しているだけにすぎないのだから。


 正直、あの人と繋がれさえすれば、それ以外必要なものはないのだ。


「……ま、そうよね」


 ――そう。


 私達の共通点?

 それは簡単。

 それは一人の男から与えられるすべてに、心の底から溺れてしまっているということ。

 一人の男との会話、触れ合い。その全てが、私達にとって、狂ってしまいそうなほどの至上の美酒である、ということ。


「で、エドに何か?」


 私は机に座り、魔道具を起動。

 机の上にある板が光り、そこにいろいろな図形や文などが表示されていく。

 それはエドの世界にあった“パソコン”という物によく似ていた。


「エドガーさんに抱かれて、どうでしたか?」

「……別にどうだっていいじゃない」

「よくないです。だって気になるでしょう?エドガーさんが他の女をどんなふうに抱いたか、とか」

「……幸せだった」

「ふふ、私もです」


 特に動じることなく、ふわり、と微笑を浮かべるセルティ。

 私はなんとなく恥ずかしくなって、クッキーを一つつまむ。


「私、初めての時なんですけど、緊張か嬉しかったからかエドガーさんにがっちり組みついちゃって。でもエドガーさんってば……」

「……ふ、ふぅん」

「エドガーさんのいつもと違った野性的な表情と、強引さ。そしてエドガーさんから絶え間なく与えられる痛みと快感、それを簡単に超える程の、今、私自身が求められている、この人を満たしてあげられている、という悦び。あまりにも凄くて、最後は気絶しちゃいました」

「……」


 あ、あなたの初体験話なんて興味ないわよ……!

 と思いながら作業をしつつも、耳を傾けてしまう。


 私の時を思い出しながら。

 ……そんな風には求めてくれなかった。

 そう思った瞬間、寂しい気持ちが心いっぱいに広がる。


 あの人は優しくしてくれた。

 蕩けそうなくらい優しく。

 エドと体が溶け合って一つになるんじゃないかと思うくらい。


 ――でも。

 セルティの時のような彼を、自分に見せてはくれなかった。

 それが少しだけ悔しかった。


「……で?私とエドの相性でも探りに来たの?それとも私の見つけたエドの弱点とか」


 ――でもそういう話も面白そうだ。

 何より、エドのことを話すのは、心に味わってはいけない充足感を感じてしまう。


 エドとの性生活を他人に話すなど、エドに対する裏切りだ。

 ――でも、私と、エリーと、セルティ。この三人の間なら許される。


 エドの話はなんでも楽しいが、こちらはそれに加えて、今までとは違ったアクセントを加えてくれることだろう。


「いえ、私が見つけたエドガーさんのちょっと気になった点を話そうかと」

「……!な、なによ……?」


 エドの弱点なら網羅しているはずだ。


 ――隅々まで味わったから。

 ……文字通り隅々まで。

 エドがどれだけ嫌がっても我慢しきれなかったから。


 だが、それはきっと三人とも同様のはず。


 ――ならなんなのだろう?


 もしかして、エドの内に眠る、特別な衝動を掘り起こすことに成功した、とか?

 エドがとっても興奮するような変態的な行為を見つけた、とか?


 だが、次にセルティから飛び出したのは、全くの真逆。

 ――そして、新たな嵐(・・・・)の幕開けでもあった。




「――エドガーさんの魔獣化(・・・)、進行してきてるとは思いませんか?」


 

 ***



 今、エドは私の氷の中で眠っている。

 地下の一室。


 眼を冷ませば自身で砕けるようになっている、内側からの衝撃に脆い氷。


 昔、エドと会う前。

 エドをこちらの世界に呼び出す前に、もしエドが錯乱した時用に編み出しておいた技だ。


 氷の中、エドの右腕からは血が溢れ。

 左腕はそのまま。


「――エドガー」


 そっとそれに触れて、一人語り掛ける。


「――あなたは幸せだった?私のほんの少しでも、幸せだった?」


 エドが来てから、私はいつも幸せだった。

 いつも。

 どんなときも。


 おはようを言うだけで幸せだった。

 おやすみなさい、を言うだけで幸せだった。 

 エドを見つめているだけで幸せだった。

 エドに笑顔を向けられるだけで幸せだった。


 ――でも、あなた(・・・)は?


 無理やりこちらの世界に連れてこられたあなた(エド)は?


 こんな風になるまで傷ついただけなんじゃないか。

 辛い思いをしてるだけなんじゃないか?

 

 エドは、ボロボロ(・・・・)だ。

 

 ……いつも。

 この人はいつも(・・・)ぼろぼろ。


 私はいつも幸せだったけど、エドはいつもぼろぼろ。


 エドは自分の腕を切る瞬間、死人のように暗い目をしていた。

 ――それが、本心なのだろうか。


「……エドと話せないだけで、こんな簡単に苦しくなるのね……」


 ――気持ち悪い。

 エドと一緒にいても、一緒にいられていない、この状況が気持ち悪い。


「……アリサさん、エドガーさんは?」


 ぼぅ、とエドを見つめていると、部屋の隅から幽鬼のように少女が起き上がり、ふらふらとこちらへとやってきた。


「――まだよ」


 そう一言告げると、セルティはこくり、と頷いて。

 エドの前でぺたり、と座り込んだ。


 その胸には強く強く、エドの切り落とされたばかりの右腕を抱き締めたまま。


 ――あの時から片時も離そうとはしない。

 その血に汚れた少女は、ぼう、とエドを見上げた。

 少しの間でこんなにも憔悴しきってしまった私達。


 こんな弱い弱い私達が、エドのために一体何ができるというのだろう。

 エドに何をしてあげられるのだろう。


 私達は、ただエドに縋りつくだけの、とっても哀れな、人のココロに飢えた乞食。

 

 ――笑えない。


「……アリサ様、私、もしエドが死んだらどうしようって考えたことあったんだけど……」


 セルティの隣にぺたん、としゃがみ込んだエリーが言う。


 髪はぼさぼさ。

 目には隈。

 狼の耳は力を失い、だらり、と倒れている。


「――簡単だね。絶対私も一緒に死んじゃう」

「……」


 無言。


 私もセルティも答えない。


 答えない?

 ――違う。

 この場合は、否定していない(・・・・・・・)

 ――これが正しい。


「……!!!」


 その時、私のおなかの底から何かがこみ上げる。


 そして。


「――オぐ」


 ――びちゃびちゃ。


 私は、吐いた。

 エドが苦しんでいるという状況で、何もできない私が気持ち悪くて。

 エドにとって私が何なのか、考えるのが辛くて。


「エド……えどぉ……」


 そして、また私は泣いた。


 ***


 夜は、巡る。

 そんな私達に関係なく、何度も何度も。


 そして―――。


 ある朝、目を覚ましたら。


 ――エドがいなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ