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ヤンデレ少女の弟子にされたんだが。  作者: ぱりぽり土鍋
第一章 異世界召喚とヤンデレ魔導士
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ボスと戦うんだが

 まず、アリサにマジックバックから取り出した魔獣の骨を10本放り投げると、アリサはそれを固めるように、長さ1.5m幅30cmほどの大きさの氷の長剣を10本作り出した。

 魔力の含まれた魔獣の骨が氷剣の芯となっているので、丈夫なうえ、魔力も通しやすい。


「エド、使って」

「助かる」


 俺はそれらを空中に浮かべる。

 これなら攻撃には申し分ないし、いざという時には壁にも使える。

 ナイフで翼を切るなんてことはナイフの強度的にも難しいからな。


「作戦通りいきましょう。私が片方の翼の根元を凍らせるわ。エドはそこに全力をぶつけて叩き折って」

「了解」


 そして俺は10本の魔獣のナイフ、追加でマジックバックから取り出した2本の長剣も俺の周囲に浮かべる。

 計22本。

 これで戦闘準備は万全だ。


 アリサの魔力の届く距離は俺の約2倍。


 俺が前衛、アリサが後衛。

 俺の魔法は、俺の目に映るすべての物を操る。魔法すら俺の物とできる。いや、してやる。

 そして、俺の目に映らない物は、アリサが凍らせカバーする。してくれる。

 心配はない。

 俺達は最高のコンビだ。


 お互い呼吸を整え、頷いた。


 もう戦闘が終わるまで話すことはない。


「――行くぞ」


 俺はそう呟くと一気にドラゴンの右側面に向かって全力で走った。


 今できる最高の速度、力で剣を飛ばすイメージを作る。


 (俺の全力で叩き折る!)


 ドラゴンに近付きながら、氷剣10本を一気にドラゴンの翼の根元まで飛ばした。


 ブォンブォンと空気を潰しながら飛んでいく、俺の武器。


 そして翼に氷剣が届く瞬間に――翼が凍りつく。


 (――完璧だ、アリサ)


 凍り付いたドラゴンの翼に俺の武器が届き、氷剣1本1本がゴリゴリと凍らされたドラゴンの翼を削っていく。


『――ガァァァァァァァ!!!』


 突然自身を襲った魔術と翼を貫く剣に驚き、ドラゴンが目を覚ます。


 だが、10本の氷剣が通った後には、もう翼は本体から離れていた。


 ズシィン……とドラゴンの羽根が1枚、根元から崩れ落ちる。


『――ガギャアアアアアアア!』


 洞窟に響く轟音。


 一瞬で翼を失ったドラゴンは、その痛みで我を忘れたように暴れ始めた。

 ドラゴンの腕は宙を掻き、その尾は地面に叩きつけられ、その咆哮は鳴りやまない。


 ――だが、その間も俺たちは攻撃の手を緩めない。


 ドラゴンは洞窟で生活をしているため視力が弱いのか、俺達をまだ見つけられていない。

 ここであともう一撃は入れたいところだ。


「……次だ」


 俺は次の攻撃のためドラゴンを観察するが、反対側の羽根を狙うことはせず、先ほどからほとんど動かないドラゴンの右足に狙いを定める。


 (尾と腕は無理だ。未だに激しく振り回されている。ただ右足を正確に狙うためには尾と腕が邪魔だ。足が正確に狙えない。もっと近づかなければ!)


 ――ゴッ!


 尾が地面に打ち付けられ、岩の破片が飛んでくる――が、ナイフで弾き飛ばす。


 この程度は問題ない。しかし、腕、尾の攻撃に当ってしまえば即死は間違いない――!


「――エド!行って!あなたは私が守る!」


 (アリサ!)


 その言葉を聞いた瞬間思考を切り替え、俺は全力でドラゴンの右足に向けて接近する。

 ドラゴンの攻撃を気にする必要はない。

 右足までの距離を一気に詰める。

 あと少し――!


 ――ゴヒュゥッ――!


 そこで左方から尾が風を切りながら飛んでくる。

 この大きさのものを操作するのは不可能、だが――。


「――ッ!」


 突如、俺の側に分厚い氷の壁ができる。

 それを空間魔法で左にぶっ飛ばし、尾を弾く。


「――エドッ!」


 次は右から腕。


 今度はアリサの作ってくれた氷剣を全て重ね、盾に使う。

 防御することはできたが、バギョギョギョッ、と何本か氷剣が折れた。

 そこを俺は斜めに転がるようにして通り抜ける。


「――よしッ!」


 やっと右足の元に辿り着いた。


 攻撃できるのは一瞬。

 すぐに先ほど弾いた尾が戻ってくる。


「――らぁッ!」


 俺は背中の長剣を交差させるように、ドラゴンの関節の奥へねじ込んだ。


『――ギャォォォォォォォ!!!』


 上級魔獣の牙で作った剣だ。

 アリサの師匠が残していったものらしい。

 ドラゴンの皮膚をもやすやすと貫く鋭さに、それの元の持ち主の恐ろしさが垣間見える。

 ぐぴゅり、とドラゴンの足から血が噴き出す。


「――追加だ」


 長剣を抜いた後、その傷口にナイフをぶち込む。

 これで右足の神経、健はズタズタだ。

 もう右足は動くまい。


(もう用はない。この場から離脱する)


 俺はそのまま右足を通り過ぎ、ドラゴンの腹の下を潜ってドラゴンの左側に転がり込む。


『アギャァァァァァ!!!』


 苦痛に苦痛が重なりドラゴンの絶叫はさらに大きくなる。


 これでドラゴンは右の翼と足を失った。

 ドラゴンの体は大きくバランスを崩し、右側に倒れこみ、それにつられてドラゴンの首も地面に落ちる。


とどめだ(・・・・)


 俺はそのままドラゴンの頭部に長剣の狙いを定めようとした――が、その時。


『――ッ!』


 ドラゴンと、目が合った。


 ――ドラゴンも(・・・・・)また俺を視界(・・・・・・)に収めるこ(・・・・・)とに成功する(・・・・・)


 その(まなこ)は怒りに赤く染まっていた。

 その眼光だけで人を殺してしまえるのではと思うほどに。


『――ゴァァァァァァ』


 俺が気付いた時には、ドラゴンの魔術は発動されていた。

 俺の周囲の地面が盛り上がり、土流が俺を飲み込もうとする。


 必死に俺の頭が打開策を考える。

 

 ――どうすればいい!?


 そこで、俺は自分の魔術でアリサの氷壁をずらしたことを思い出す。

 目の前のこの土砂もできないわけがない。


 ――やれるはずだ!俺の魔法で!


 正面の土砂が左右に自分を避けていくのをイメージし、放つ。


 (――よし)


 俺の前を避けていく土砂。 

 俺は魔法で目の前の土砂の流れをずらすことに成功し、何とかやり過ごす。


 だが、ドラゴンの魔法は止まらない。土砂は2波、3波と俺を襲う。俺の視界は土砂で塞がれドラゴンを視認できない。攻撃できない。ひたすら土砂の対処のみをし続ける。


 今は絶好のチャンスのはずだ。

 ドラゴンは体制を崩し、頭も容易に狙える状態のはず。


 どうにか攻撃するチャンスを――!


『グギャァァァァァァァ!!!』


 ドラゴンの悲鳴と共に、土砂の勢いが突然止まる。


「――エド!」


 アリサの声が聞こえる。


 俺は勢いの落ちた土砂の中、迷わず正面に突っ込んだ。

 ドラゴンをその視界に収めるため――そして、決着をつけるため。


 土砂を抜けた先のドラゴンは、その残りの手足が極大の氷で封じられ、右目が氷塊で潰されている。

 

(さっきの悲鳴はこれか――!)


 アリサの作ってくれた一瞬の隙――逃しはしない。


 走りながら長剣を飛ばす俺と、右目を損傷しつつも、残る左目を頼りに俺を魔術で狙うドラゴンの視線が交差する。


(勝負は一瞬――ここで決めるッ!)


 俺の長剣がドラゴンの左眼の奥までぶち込まれたのと、土砂が俺を襲ったのはほぼ同時。


 俺は土砂の勢いのまま吹っ飛ばされた。


 だが、上空に吹っ飛ばされながらも俺は見た。

 ドラゴンの全身から力が抜け、倒れていくのを。

 そして、アリサが俺に駆け寄ってくるのを。


(……アリサ、お前は本当に、最高のパートナーだよ)


 地面に勢いよく叩きつけられた衝撃で、俺は意識を失った。




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