表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ少女の弟子にされたんだが。  作者: ぱりぽり土鍋
第三章 二人の魔導士の弟子
39/168

俺の相棒なんだが

 人間の心とは。

 一体何で決まるのだろうか。

 性善説と性悪説。


 人間の本性は善である。

 人間の本性は悪である。


 この二つの考え。

 俺はこれを陳腐なもののように思う。


 善や悪。

 その根本的な基準は誰が決めるのか。

 社会か?世界か?自然か?

 それとも自分自身がそうと決めたらそうなのか。

 他人に被害を出してしまったら悪なのか。

 それとも自分が社会的な犯罪を犯していても、自分が富と名声を得られるのであれば、それは自分からしてみれば善となるのか。


 結局は善であるか悪であるかなど、そんなもの、判断する人によって大きく違ってくるだろう。


 話を戻そう。

 そもそも、もとは善だったからなんだ?もとは悪だったからなんだ?


 これは俺の一つの考えに過ぎないが、人とは、幸せであれば次第に他人を思いやることのできる、余裕のある性格へと近付き、その身に試練を受け続ければ、自分のことばかり考え、他人を気遣う余裕がなくなってしまう生き物だと思っている。


 こういう言葉がある。善良な人とは、ただその人が愚かなだけか、未だに試練を受けていないだけだ、と。


 善と悪。

 自身の中でそのバランスをうまくとりながら人は生きている。


 生まれたばかりの頃は、普通なら周りから愛を。幸せを与えられて育っていく。だから善の方向へ傾いて行くが。年を取ればとるほど、人はそれぞれ試練を受けて、皆同じように他人へと少しづつ冷たくなるか、またはそれを理解した上で他人へと優しくなれるのだろう。


 その善悪のバランスの一部がどこかで崩れてしまった人。


 それが狂人と呼ばれるのではないかと思うのだ。



***



「……エドガー、いつまでだらだらしてんの?」


 ソファーにうつ伏せになって考え事をしている俺にエリーがブスッとつぶやく。


「この世の心理について考えているのだよ、エリー君……!」

「……意味わかんないし……あとソファーの下が掃除できないから、はやくどいてよ」


 若干ドヤァ……としながら俺は言うが、それにお構いなしにぐいぐいと箒の柄で俺の頬を押すエリー。


「ふぉっとふらいいいひゃろ?(ちょっとくらい、いいだろ?)」

「だめ。はやくどいて」


 だんだん吊り上がっていくエリーの眉に、そそくさと俺は自室へと退散した。


「まぁ、最後はここに落ち着くわな……」


 俺の目の前の相棒(オフトン)にそう告げる。 


「うおぁぁぁ……」


 何とも言えないため息を上げ、そして両手両足を広げ、布団にダイブした。


 ――だが。


「キャッ!」


 ベットにダイブした俺を迎え入れるのは柔らかな相棒(オフトン)ではなく、何か別の生き物(・・・)


 ちょうど俺の飛び込んだあたりが、もぞもぞと蠢いていた。

 よく見ると、布団が人一人分ほど、盛り上がっている。


「まさかな……」


 パサリとかけ布団を持ち上げると ――先客がいた。


 髪と肌は雪のような美しい白。

 その目はルビーのように赤く輝いている。


 ――アリサだ。


 アリサが身を縮こまらせるようにして、俺の布団の中に埋まっていたのだ。

 恐る恐るそのダンゴムシのような体制を解き、そろそろ、と俺を見上げて呟く。


「……見つかっちゃったわね……しょうがないから、帰るわ」


 のそのそ、と布団から顔を出し、しょんぼりとベットから降りるアリサ。

 そのまま黙って俺の横を通り過ぎようとするが、丁度俺の横を通り過ぎかけたところで、俺はアリサの肩を掴む。


 ……できるだけ笑顔を浮かべようとする俺だったが。


「何してたんだ、アリサ?」


 引く突く俺の頬。


 ――失敗する。

 きっと俺が浮かべた笑顔はとてもぎこちないようなものだろう。

 自分ですら、今の自身の顔がどのようになっているか想像がつかない。


「な、なんでもないわ」


 ――そして俺と全く目を合わせようとしないアリサ。


「……」


「何してたんだアリサ?」


 ニ回目。


「……エドは、気にしなくていいわ」

 

 アリサには答えようという意思はないようだ。

 アリサは殻にこもるように、深々と白いウサミミの付いたフードを被る。


(こいつ……ッ!)


「アリサ……俺に言えないことをしてたのか……?幻滅したよ」


 そういって、辛そうにその場を立ち去ろうとする俺。

 その瞬間、ちら、とアリサの様子を確認する。


「――ま、待って!」


 今度は俺の肘をアリサがはしッ!と掴んだ。

 俺はそのまま足を止める。


「……どうしたんだ?アリサ先生?」


 ニヤニヤとしながら俺は振り返ると、アリサは悔しそうにプルプルと震えていた。


「ちょ、ちょっと待って、エド。何か誤解してない?」

「……でもな、アリサ。アリサが話したがらないならこの話は終わりにするしかないだろ?」

「……何でもいいでしょ」

「なんでも?何をしていたかってきいたんだがなぁ……?そうかそうか、わかったよ、アリサ」


 アリサの腕を振りほどき、リビングの方へ再度向かおうとすると、後ろからドンと衝撃がくる。

 丁度俺の腰辺りに、アリサが後ろから抱き着いてきた。


「いう……ッ!から……ッ!」


 アリサは俺の腰に顔を埋めるようにして、顔を隠す。

 だが、その耳が真っ赤に染まっていることから、顔もそうであろうことはバレバレであった。

 いつもの大人びたアリサとは全く違ったその態度。

 それに俺は面白くなって強気に出る。


「ほう……?何をしていたんだ?」


 俺の言葉に――。


「その……私は……」


 つっかえつっかえ。その整った唇からゆっくりと言葉を紡いでいくアリサ。


「エドの……布団の中で……ッ!」


 そしてそこまで言った瞬間――!


 ――ガチヤッ。


「何やってんの……アリサ様とエドガー……」


 そこに現れたのは、我が家が誇る、ケモ耳少女。


 そう、俺達の様子を見に来たエリーが、登場したのだ……!


 救世主(エリー)の到来ににハッと顔を上げ、アリサがそのままててててー、とエリーの方へと向かっていく。


 するとアリサの態度は一転。

 今度は仁王立ちでこちらをふふん、と見上げてきた。


「――エド!あなたの負けね!」


 勝ち誇ったようにそう宣言するアリサ。

 

(いや、勝ちとか負けってなんだよ……)


「……はいはい、そうだなー。アリサの勝ちだなー」


 アリサのその変わりように呆れ果てながらも、当初の目的を思い出していそいそとベットへと向かう。


(さて、昼寝の続きと行くか……相棒)


 と思ったのだが。


「エドガー。どぉこいくのかな?」


 エリーががしりと俺の肩を掴む。


 俺は振り返らず――いや振り返ろうとせず、それに答えた。


「た……体調が悪くなったから少し寝ようかと……」

「嘘でしょ、エド?」


 アリサも、エリーに味方する。


 だめだ……二対一では勝てない……すまない……相棒(オフトン)……ッ!


 俺はエリーとアリサにそのまま、連れていかれた。


 ***


「それじゃぁ、エドガーは庭のお掃除たのむね。雑草とか凄い生えてるから、それもささーとやっちゃって」


 エプロンを外しながら言うエリー。


「わかったわかった」

「また呼びに来るから、それまでお願いね、エド」

「ああ、頼むな」


 アリサとエリーは二人で今から地下室に潜ると言う。


 実は最近、二人でこそこそと何か地下でやっていることが多い。

 アリサが言うには、ちょっと新しい研究材料を見つけたから、だとか。


 まぁ二人が頑張っているのは俺にもわかる。


(――それなら俺も、俺のできることをやろう)


 そうして庭掃除へと鎌と箒と籠を担いで、玄関を出る俺だった。


 ちなみに庭掃除はアリサとエリーが晩めしに呼びに来るまで、つまり辺りが暗くなるまで続いた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ