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地球異世界で冒険をしよう!  作者: AZ
第1章 『フィールドデビュー編』
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閑話・ベテラン冒険者の思惑

本編の繋ぎとなるお話です。

番外と言うほどではないので、『閑話』とさせてもらいます。

「で、どうなんだ?」

「才能はそこそこ、根性は十分。だが1番の驚きはあの下半身だな」

「それについては、俺も驚いているよ。ただ小さいころから畑仕事や田植えなどやっていたという話だから……」

「自然に身に付けた…と言うわけか」

「だろうな」


 光太(こうた)が帰った後の秋太郎(しゅうたろう)の自宅の庭先。

 秋太郎(しゅうたろう)とキッドが真面目な顔で話していた。


「両手持ちの鉄の剣を片手で持って、盾を装備した状態でスムーズに歩き回れた足腰の強さ…。あれは、それを見るためだったのか?」

「半分はな。もう半分は体力測定ってところだったんだが…」

「思った以上に動けたということか?あの…バランス、下半身の強さは本物だ。誰でも持てるものじゃないし、作ろうと思って作れるものじゃない」

「お前がそこまで褒めるとは…ちょっと意外だな」

「これは褒めたと言うべきなのか?むしろ嫉妬かもな」


 キッドが口角を上げてニヤリと笑った。

 秋太郎(しゅうたろう)はそんなキッドを見てため息を吐く。


「ところで、明日連れてくる『冒険者』って…『彼女』のことか?」

「ああ…そうだ。是非にと頼まれていたからな」

「手綱たづなを光太(こうた)くんに任せるつもりか?」

「悪くない『選択』だろう?」

「ただの厄介払いだろう…?」


  秋太郎(しゅうたろう)の言葉に、またキッドが笑みを浮かべる。


「あの娘こには良い旅になると思うぜ」

「お前はどうするんだ?」

「あいつらを一定以上に鍛えたら、また旅だ」

「自由気ままな奴だ」

「と言うか、ここは他の鳥獣族(ちょうじゅうぞく)のテリトリーだからな。あんまり長居はできん」

「じゃあ、滞在期間は?」

「1ヶ月…と言ったところだろう」


 部族間での暗黙のルールというのは存在する。

 獣人族はテリトリーにうるさい部族が多く、特に同族同士の場合は話を通さないのはタブーでもある。


「じゃあ、今日遅れてきたのは……」

「挨拶回りさ。ここは鳥獣族が多くて敵わん」

「ご苦労様」

「それより、秋太郎(しゅうたろう)はいつまでいられるんだ?」

「明後日には出発だ。だから、キッド。ここを使ってもらって構わないぞ」

「それは助かる。ホテル代も馬鹿にならないからな」

「ただ、掃除はちゃんとしてくれよ」

「善処する」


 秋太郎(しゅうたろう)の言葉に苦笑するキッド。

 そんな会話を交わす2人のところに、2つの影が見えた。


「…あれは、シリウスじゃないか?」

「おいおい…マジか?」

「帰ってきたんだな、アイツ…」

「この3人が会うのは何年ぶりだ?」

「3年ぶりじゃないか?」


 近づいてくる2人を眺めながら会話する2人。


「よお!久しぶりだな、2人とも」

「シリウス、いつ戻ったんだ?」

「3日前だ。里の方に顔を出していたんでな」

「エルフの里か…。色々と気苦労が絶えないな、お前も」

「まあ…一族の掟だから仕方がない」


 ファンタジーな住人たちはそれぞれ独自の掟やルールを持つ場合が多い。

 中でも、エルフ族は掟だけでなく独自の文化からくる神が存在しそれを崇めている。

 とは言っても、それを多種族に押し付けるようなことはしない。

 だからこそ、エルフ内での掟は絶対視されているのだ。


「それで?何か用があってきたんだろう」

「ここに、風見光太(かざみこうた)という青年が来ていると聞いてきたんだが…」

光太(こうた)くんなら今日はもう帰ったよ。しかし、どうして彼を?」

「レクチャーの担当に選ばれてね。しかし、秋太郎(しゅうたろう)とキッドで見てくれるなら問題ないか」

「いや、俺は明後日には遠征に出なくてはいけなくてな」

「そういうことだ。レクチャーの件だが…お前ほどの実力者ならかえって一緒に手伝ってもらえた方が良いだろうな」

「まあ、そういうことなら…元々は俺の仕事だしな」

「助かる」


 初心者冒険者にとってベテラン冒険者の指導は何よりの宝だ。

 そしてそれは、指導者が多いほど良い結果を生む。

 普通に考えるなら1対1で教える方が濃密な指導ができるように思われるが、こと冒険者に関しては当てはまらない。

 冒険者にとっては、色んなベテラン冒険者から手解きを受けることは戦いの幅が増えることを意味する。


「それはそうと、隣の『坊や』は何だい?」

「里から頼まれたんだ。冒険者として手解きしてやってくれってさ…」

「ほぉ…、魔法力は十分だが、基礎体力は並み以下ってところか?」

「分かるか?魔法力だけならハイエルフ並みにあるんだが…他がなあ……」


 キッドとシリウスの言葉に、エルフの青年は肩を震わせている。


「確かに体力は無いかもしれませんが、『人間』よりはマシなはずです」

「ふーん。人間よりマシねぇ…。おい、秋太郎(しゅうたろう)光太(こうた)と同じ装備品あるか?」

「うん?ああ、あるぞ」

「じゃあ、この坊やに渡してくれ」

「…そういうことか。分かった」


 そういうと、秋太郎(しゅうたろう)は鉄の剣に革の盾と革の鎧を出す。


「それじゃあ、それを装備してその辺を歩いてみろ」

「…あの、これは両手持ちのロングソードじゃないんですか?」

「ああ、そうだ。それを装備して坊やの言う『人間』は10分間歩き続けたんだぜ?どうだ、楽勝だろう」

「え、ええ…。ら、楽勝ですよ……それから、坊やは止めてください。僕の名は『ゼノ』です」


 額に汗を浮かばせながら言うゼノ。

 鎧を着込み、盾、剣の順に装備する。


 エルフの特徴と言えば言わずと知れた『尖った耳』と『細身の長身』である。

 あとは容姿がイケメンなのはどういう遺伝子なのか(?)気になるところだ。

 それだけに毒舌だと、嫌みたっぷりに聞こえる。


「よし!じゃあ、この庭の周りを歩いてみろ」

「は、はい……」


 よたよたと歩き出すゼノ。

 何とか歩いていたが、一歩足を出すたびにバランスが崩れよろけながら進む感じになっていた。

 しかし、身体の向きを変えようといた瞬間、ゼノはおもいっきり足を滑らせて倒れたのだ。

 時間にして、約2分ほどだった。


「くっ…。た、立てない」

「どうした?もうギブアップか?」

「だいたい、両手持ちのブロードソードを片手で持つなんておかしいんですよ」

「言い訳だけは一人前だな。確かに、両手持ちのブロードソードを片手で持つなんて無謀だ。だが、これは実践ではなく、あくまで個人の身体能力を見るためのモノだ」


 キッドの辛辣な物言いにぐぅの根も出ないゼノ。


「ゼノ。これはあくまで、現段階でのお前の実力を見るためのモノだ。ここですべてが決まるわけじゃない。ここから、始まるんだ」

「そう言うことだ。次はブロードソードを両手で持って上下の素振り100回だ」

「…分かった」


 慎重にブロードソードを振るうゼノ。

 30回までは普通に振れていたのだが、31回からは目に見えて辛そうな顔になる。

 どうやら腕が釣ったようだ。


「そこまでだな」

「くぅ…っっ」


 ブロードソードを落とし、腕を庇うゼノ。

 単純な動きだけに、ちょっとした動きの変化に腕がつてこれなかったのだ。


「まったく…気を抜くからですよ」

「いっっ…」


 腕をマッサージし始めるシリウス。

 顔を歪ませながら、痛みに耐えるゼノ。

 結果として、素振りは31回で終わってしまった。


「まあ、腕が釣ったことを考慮しても40~50回が限界だったろうな」

「多く見積もってもそんなとこだろうな」

「初心者…ましてや魔法使いの僕に素振り100回と言うのが無茶なんですよ」

「ギリギリ及第点ってところだな」

「ちなみに、光太(こうた)は素振り100回やり遂げたぞ」

「に、人間にしてはやる方じゃないか。だが、現時点では劣っているかもしれないが所詮は人間。僕の才能の前に遠く及ばないはず…」


 光太(こうた)が素振り100回をやり遂げたと聞いて、動揺を隠せないゼノ。

 だが、その言葉でキッドの額に青筋が浮かぶ。


「まだ、『所詮は人間』とか人種で差別する言葉を吐くか…。いいか?そんな言葉を吐いているうちはお前は光太こうたには一生敵わないだろうぜ」

「そうですね。エルフの中には『人間』に対する評価が低く言われてますが、それは人間が我々と違い特別な能力を持たないことや信仰の薄さを蔑んでのコトが大きいでしょう。しかしそれは、考え方の違いでしかない。それを受け入れない我々の方が器が小さいとも言えますね」

光太(こうた)は種族の違いなど気にも留めず平等に接していた。もちろん、種族ごとの文化の違いや考えの違いを知っての上でな」

「ある種の権力者となっている大人の人間の非礼は俺も嫌いですが、全ての人間がそうではないということは知っておくべきですね」

「確かに…僕の考えは一族が持っていた印象をそのまま口にしたもの。恥ずかしい行為をしてしまった」

「とはいえ、急に考えを変えろと言っても酷ってもんでしょうか…。何か良い方法は無いものか?」

「パーティとして組ませるってのはどうだ?」

「それが1番現実的ですかね…」


 植え付けられた思想というものは、簡単に拭い去れるものではない。

 それは、シリウスにも分かっていた。

 シリウス自身も、人族に対する偏見を取り去るのに1年以上かかったからだ。


「パーティと言うことは、僕とその…光太(こうた)と言うのが組むってことでしょうか?」

「あと、俺んとこの娘っこも含めて3人で…だな」

「つまり3人パーティってことですね。バランスは良いかもしれません」

「しかも、人族、人虎族ワータイガーにエルフ族だしな。上手く噛み合えば結構良い線いくんじゃないか?」

「ですが…パーティとして機能させるには不十分ではないでしょうか?」

「そうか?」

「できれば少しでも慣れる機会を増やしたいですね」

「…『慣れ』ねぇ。ふむ…」


 シリウスの言葉にキッドが何やら考え出した。

 そして、ふと目に入ったのは秋太郎(しゅうたろう)の家だった。


「…秋太郎(しゅうたろう)。この家、何人くらい住めるんだ?」

「5~6人は大丈夫なはずだが…」

「そうか…。で、光太(こうた)はどのくらいの頻度で通えるんだ?」

「確か、1月から自宅学習になるから卒業式までは事実上休みみたいなもんだな」

「今は2月の中旬だから…半月程は大丈夫なわけか…これは、いけるんじゃないか」

「おい。それって、まさか…」

「ああ、強化合宿をするぞ」


 キッドからのいきなりの提案。

 まるで名案が浮かんだと言わんばかりに、腰に手を当ててふんぞり返る。


「合宿か…。良い考えかもしれないな。ゼノ、合宿の用意をしにいったん帰るぞ」

「分かりました」

「明日、朝9時に集合だ」

「了解した」

「俺も、お嬢に伝えないといけないからこれで帰るぜ。秋太郎(しゅうたろう)光太(こうた)に伝えに行ってくれ」

「オーケーだ」


 こうして、光太(こうた)の知らぬところで話は決まるのだった。

ゼノのステータスです。


氏名:『ゼノ』

年齢:『67歳』

ジョブ(取得職業):『魔法使い(まほうつかい)』


LVレベル:1

HP(生命力数値):(26/26)

MP(魔法力数値):(102/102)

SP(技能力数値):(6/6)

AKT(攻撃力):2

DEF(防御力):5

AGI(素早さ):7

MAT(魔法攻撃力):27

MDF(魔法防御力):18


技能スキル:『―――』


魔法スキル:『初級火炎魔法』『初級水泡魔法』『初級風撃魔法』『初級地形魔法』


固有スキル:『アイテムボックス』『天雷魔法スキルLV.1』『魔法力増強スキルLV.1』

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