閑話⑤獣人のお祭り
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大宴会と言うよりもお祭り騒ぎだった。
あちらこちらで出店が出ていて、思い思いに食べ歩いている。物々交換の国なのでお祭り時はタダで食べれるようだ。
「スゴイ賑わいだね」
「しかも、食べ放題に飲み放題。そのうえ、射的に輪投げ、金魚すくいに鰻釣り…遊び放題!」
「これが全部タダ…獣人、侮れないな」
「ガウガウガウガ…」
「フフ…ガル、慌てずとも肉は逃げんのじゃ」
「ガハハハ…大いに食い、大いに飲め!今日は祝いの席だ」
「まさか、フィリィが有名人になっちゃうなんてね…お姉ちゃん、鼻が高いわ」
「おばあさまが生きておられたらさぞお喜びになっていただろうな」
「ああ…。フィリィはおばあちゃん子だったからなぁ…」
「そうね。言葉使いもお母様ソックリだもの…」
フィリィのあの言葉使いはおばあちゃんの口癖だったらしい。
確かに、フィリィ以外は普通の喋り方だ。
「お姉ちゃんはまた出て行っちゃうの?」
「うむ。妾はもっと強くなりたいのじゃ。おばあさまが目指していた『拳王』になるのじゃ」
「母上は冒険者になりたっがっていたからなぁ…まあ、強さを求めるのは獣人の性とはいえ難儀なものだ…」
どうやら、フィリィのおばあさんは冒険者に憧れていたらしい。その夢を引き継いだのがフィリィと言うわけだ。
「それにしても『拳王』とは…スゴイ目標だな」
「超級職だよね?確か…」
「しかも、初級職は全部使いこなせてなお、中級職を3つはカンストしていないと超級職は現れないと言うことよ」
「それって…超級職になった人いるってこと?」
「噂では世界に3人いると言うことじゃ」
「いるのかよ…」
「あくまでも噂よ」
アメリカ・ロシア・中国に1人ずつ超級職を極めた者がいると言う…。しかも全員が軍人上がりの冒険者であると言うことだ。だが、あくまでも噂と言うことになっている。なぜ隠しているのかは不明。その上で、超級職を得られる条件の噂だけが先行したと言うわけだ。ちなみに日本では上級職までしか判明していない。
神のクエスト…その存在が明らかになった今、僅か5年で『超級職者』が出たと言うのが満更『噂』に過ぎないうのは言えなくはないだろうか?しかも、『祝福スキル』の存在が超級職に影響したとも考えられる。
「ただの夢物語じゃないってことか…」
「特に、僕らの様な長寿者ならなおさらにね…」
エルフや獣人は人類と違い寿命が長い。なら、超級職を得られる可能性は高いわけだ。
「話しは変わるが…帰ったらどうする?」
「まだ国のイベントまでには日数がある。実力不足を補うためにもモンスターフィールドでもっと経験を積まないと…」
「後は…仲間を増やすことね」
「仲間か…こればっかりはなぁ…」
正直な話、仲間になるのにレベルや実力など関係はないと思っている。問題は『仲間の絆』である。
エリナが仲間になって思ったのだが、相性と言うモノがあるということを知ったのである。
最初は神様に新しい仲間になると言われたのがあって誘った。しかし、仲間にして分かった。エリナ個人と仲間として行動してみてたった数日だと言うのに最初から仲間だったかの様な感覚になったのだ。こういうことってあるだな…と3人で話したのだった。
「話しはまた明日でいいでしょ?フィリィお姉ちゃん、お祭り楽しもうよ」
「そうじゃな。これから『3日3晩』続くお祭りじゃからな。楽しみ尽すのじゃ」
「…え?3日3晩…続くの?」
「…ありえん」
「えー。楽しそうじゃん」
「うちの女性陣は強者揃いだな」
「そうだね…」
3か3晩続くお祭りを楽しもうとする女性陣に戦慄する光太とゼノ。それにしても獣人の国のお祭り…侮りがたしである。
「さあ、行くかのう」
「ま、待って。引っ張らないでよ、フィリィ」
「…やれやれ。エリナ、僕らも行こう」
「ええ。思う存分楽しむわよ」
それから、ほとんど睡眠を取ることなく獣人のお祭りを堪能することになった。
それにしても獣人の活気と言うか活力は凄いものだ。3日3晩のお祭りをアッサリとこなした上、そのまま通常の暮らしをしているのだ。光太・ゼノ・エリナの3人はお祭りが終わったと同時に倒れるように眠りに就いたと言うのに…だ。
結局4日目は寝て終わった3人と1匹だった。
「それで、妾たちを呼んだのはどういう理由じゃ?」
「これから人間世界で有名人になる我が娘を住民たちに会わせたいと思うのは当然であろう?」
「むう…。まあ、分からなくもないがのう…」
「と言うよりも、住民たちが騒いだのよ。これは栄誉あることだからって…」
「我が国から日本を代表する冒険者が出たとなれば住民が騒ぐのも無理はあるまい?」
獣人の国・ビーストリア代表として日本の冒険者の代表と言う栄誉。
強さを重んじ、何よりお祭り好きな獣人たちならばフィリィに一目会いたいと思うのは無理からぬこと。
その思いに応じてフィリィたちを国に呼んだと言うのが今回の経緯である。
「それにしても、良い仲間を得たのだな…フィリィ」
「最高の仲間じゃ」
「確かにみんな良い子ね」
「3日3晩のお祭りに付き合ってくれるんだ。悪い奴等のはずがないさ、母さん」
「だが…冒険者の強さとしてはどうなのだ?」
「ガウェル兄様…それぞれ得意分野は違うのじゃが、ほぼ互角じゃろうかのう」
「それは獣化を使わなくてってことね?」
「無論じゃ。じゃが獣化を使ってもガルに勝てるかどうか…」
「神格化しておるのだ。敵わなくても仕方あるまい」
「そうなのじゃがな…。しかし、違った意味でじゃが…光太も油断ならん相手じゃな」
「人間の少年がか?」
「光太の戦闘センス…そして、発想力の豊かさは脅威と言えるじゃろう。その上、ヤツは諦めんのじゃ。一度、戦いが始まれば最後まで勝つために行動する。それは恐怖と言えるレベルなのじゃ」
「…面白い。目に見える強さを超えるモノを持つ者か…これは鍛え甲斐がありそうだな…」
「父上?」
「お前たちが自分の能力を持て余しておるのはなんとなく分かったからな…」
「…見破られておったか。しかし、どうするつもりじゃ?」
「儂、自ら稽古をつけてやろう」
「本気か?」
フィリィの言葉に頷くガレオン。
次の日から3日間。獣人が管理するモンスターフィールドと洞窟型ダンジョンでモンスター狩りとガレオン自らの戦闘特訓で祝福スキルの能力に振り回されない程度に鍛えてもらった。
それは、過酷と言う言葉をはるかに超えるものだった。傷つけば回復魔法で治して特訓再開を繰り返すと言うある種の拷問のようなものだ。
以外にもエリナがこの特訓で戦闘の血に目覚めたようで、法術士だと言うのにわざわざ戦士に職業を戻してまで戦闘経験を積んだのだ。『治癒使い』と『法術士』のスキルをカンストしているとはいえ、思い切った選択であるのは確かだった。
「能力に振り回されない…程度までは何とかなったな…だがこれは、緊急処置にすぎん。本当に能力を使える様になるには日々の努力とレベル上げは必須だろう」
「じゃのう。こればかりは日々の努力をするだけじゃ」
「そうだね。遠回りかもしれないけど…基本から鍛え直すよ」
「僕もだ」
レベルや能力は確かに飛躍的に上がった。しかし、順当に上がったものでないのでまだ身体が追い付いていかないのだ。だからこそ、基本から徹底的に鍛え直そうと言う考えに至ったのだ。
「それが良いだろう。今のお前らではエリナにすら敵わんぞ」
「んー…確かに、動きが硬い感じがあるわね」
「個々の強さは確かに3人の方が上であろうが…総合的にはエリナの方が動きが良い。これは、お主たちが自身の能力に振り回されておる結果だな」
「感覚や行動に微妙な違和感があるのよね。これはモンスター相手じゃ見つかりにくい欠点よ」
「そうだな。モンスターは知能が低いから単純に行動するものが多い。だから、思考を巡らす人種が相手だとちょっとした動きの悪さでも弱点となってしまうのだ」
超感覚や急激なレベルアップによる『弊害』。それは、能力の高さに自身のこれまでの感覚が追い付かず思った通りの動きができないと言うこと。今回の特訓で能力を発揮する「入り口」には入ることはできた。だが、ここから先はまだ『序章』にすぎず、『本番』にすら届いていないのだ。
「1年間、みっちり基礎となる肉体作りをするのが良いのだが…そうもいかんか」
「気長にやるしかないわね」
「まずは技や魔法をちゃんと使える様になることが先決だな」
「そのためにもやることは山済みだよ…。基礎体力作りにスキルの向上、モンスター狩りで経験値稼ぎ…その上、メディア活動か…」
「とりあえず…拠点に帰るのじゃ」
「そうだね」
こうしてフィリィの里帰りは終わりを迎えた。
メディア活動まで残り1週間。光太たちは実力の上げるために行動するのだった。




