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地球異世界で冒険をしよう!  作者: AZ
第1章 『フィールドデビュー編』
3/33

プロローグ3

 長野県大町市平(ながのけんおおまちしたいら)・・・木崎湖と山間部の間に俺の自宅はある。

1反・・300坪の水田を5つ。きゅうり畑・トマト畑、ジャガイモ畑を保有する農家の生まれである。

うちの方針は、農家であることに誇りを持ち、男子が一人前の成人となったら自分だけの『道』を見つけるべし!という家訓まであるのだ。


 じいちゃんは水田、親父は畑・・・と言う風に、我が家では世代ごとに新たな取り組みをするのが習わしとなっているのだ。

 兄貴は頭が良かったので『農協』に務めている。

姉は入り婿を向かえ、婿であるお義兄(にい)さんはじいちゃんの弟子となって水田の手伝いをしている。


 俺は成人と認められるまで親父の手伝いをしてきたが、ついに進路について考えなくてはならなくなった。

 正直、今の俺はやりたいことが見つかっていない。

 足掻いているうちに時はどんどん進み、高校を卒業したらしばらくは家の手伝いをしながらゆっくりと考えようかと思っていたのだが・・事態は思わぬ方向に進むことになった。


「え・・?今、何て?」


 自宅の俺の部屋。

 早朝から兄貴と顔を合わせる俺の心境はいかなるものか・・。

 まだ、覚醒しきっていない頭で兄貴の一言を思い返した俺は思わず聞き返していた。


「だから、冒険者になれと言ったんだ」

「なれって・・そんな勝手に・・・」

「今、日本の食糧受給率はかなり低くてな。農地拡大が急務になっているんだ」

「いや・人の話聞こうよ」

「だが、農地を広げたくても余っている土地と言えばモンスターフィールドしかない」

「・・・・・・」

「お前だって自分でやりたいことを見つけるにしても、それを可能とする土地が必要だろう?」

「まあ・・確かにそうだけど・・・」

「つまり自分の土地は自分で確保しろというわけだ」

「無茶苦茶だな・・・」


 確かに、農家で何かをするのであれば土地は必要だが・・・。

 俺が農家をするとは限らないと思うんだが・・・。

 だいたい、兄貴だって厳密に言えば農家を継いだわけじゃねーし。


「それにお前が土地を確保できれば俺の昇進にもつながるからな」

「それが本音か!」

「悪いか?」

「開き直りやがった!?」


 確かに異変によって地形に大きな変動があった。

 俺の住むところは元々農家を中心とした場所だったのだが、異変によって変に土地が拡張し、多種族の集落や多種多様のモンスターフィールドに、ダンジョンの出現まであったのだ。


 とはいえ、冒険者か・・・。

 まあ、興味が無いわけじゃないが・・・。


「親父たちは何て?」

「頑張れってよ・・・」

他人事(ひとごと)だなー・・・」

「とりあえず、役所で冒険者登録してこいよ」

「マジかよ・・・」


 あまりにも突然の兄貴からの話に戸惑いながらも俺は市役所に向かった。

 それにしても、俺の家族・・・酷くね?


「冒険者ギルド(協会)にようこそ。冒険者登録でしょうか?」

「ええ・・・はい。お願いします」

「では、こちらの用紙にご記入ください」

「分かりました」


 氏名と年齢、住所に郵便番号に自宅の電話番号と携帯番号を書き込んで受付の女性を呼んだ。


「これで良いですか?」

「では、確認させていただきますね」


 書面に目を通す受付の女性。


「はい。結構です。それではまずこちらの『冒険者のすすめ』をお持ちください。帰ったら、必ず目を通してくださいね」

「ありがとうございます」

「では、風見光太(かざみこうた)さん。改めてご説明させてもらいますね」

「お願いします」


 そこからの説明は、ステータスの確認から始まり、ジョブ(取得職業)の変更と注意点の確認。

 初心者向けのフィールドと活動拠点の確認に、ベテラン冒険者から実践戦闘のレクチャーの日程。

 冒険者向けの保険の加入やその他の注意事項について・・・と1時間ほどかけて会話することになった。


 最後に・・固有スキルの確認となった。


「えっと・・・『アイテムボックス』と『スカウトスキルLV.1』と『解体(かいたい)スキルLV.1』に『調合(ちょうごう)スキルLV.1』って書いてあるんですが・・・」

「固有スキルを4つ持ち保持者・・・ちょ――ちょっとお待ちください」


 慌てる受付の女性。

 なんだ?一体どうしたって言うんだ?


 受付の女性が連れてきたのはどう見ても上司と思われる『おっさん』だった。


「お待たせしましたね、風見光太(かざみこうた)さん」

「あの・・何か問題でも・・」

「それも含めてご説明させていただきますので、奥の部屋までご足労願いますか?」

「はあ・・」


 ニコニコ笑顔での対応を見せるおっさんの後に続き奥の部屋に行く。


「まあ、お腰かけください。緊張なさらなくて大丈夫ですよ。周りに聞かせるような話ではないので、ここに来ていただいただけですから」

「そうなんですか?」

「説明を聞いて驚かれると色々都合が悪いんですよ。特に『君が』ですが・・ね」

「どういう意味ですか?」

「まず・・固有スキルについてですが・・・通常、1人が持つことができるのは多くて3つまでしか確認されていません」

「えっ・・・でも・・・」

「そうです。光太(こうた)さんは人類初の『4つ持ち』と言うことになります」

「はあ・・いまいち実感がないんですが・・・」

「ごもっともな反応です。しかし、問題はそこではなくてですね・・・」


 少し言いづらそうな雰囲気のおっさん。

 『問題』の言葉の重みをなんとなく感じる。


光太(こうた)さんの持つ3つの固有スキルは、すべて希少価値の高い『SSS』に指定される固有スキルなんです」

「――ええっ!?」


 思わず、大きな声が出てしまう。

 俺は慌てて口に手を当てて黙るが後の祭りである。


「こうなることを懸念して、この場所に通したのですから大丈夫ですよ」

「あ・・そういうことでしたか・・・」


 周りに聞かせたくない話と言うのはこのことだったのかと理解する。

 しかし・・・そこまでする必要性は何なのだろうか?


「・・・固有スキルに関してはどの程度ご理解いただけていますか?」

「えっと・・・通常のスキルと違って、効果能力みたいなモノだってことくらいしか・・・」

「通常はその程度の認識で間違いではありません。しかし・・・光太(こうた)さんの場合は少し事情が異なります」

「と言うと・・・?」

「固有スキルはそれ事態は秘密になっておりませんので問題にはなりません。ですが、光太(こうた)さんの場合は事情が異なります。固有スキルには『ランク』がありますて、『SSS』から『SS』、『S』、『A』、『B』、『C』と6段階に分けられております。また通常、固有スキルは『アイテムボックス』を外せば1つか多くて2つまでが持てるものですが・・・『2つ持ち』であってもランクの異なる固有スキルしか持てない・・と言うのが今までの認識だったのですが・・・」

「俺の固有スキルは全部『SSS』でしたよね・・・」

「ただでさえ、人類初の『4つ持ち』であるというのに、固有スキルのランクがすべて『SSS』と言うのはある意味周りに知られるのは危険なのです」

「危険・・・ですか?」

「我々、役所の人間には『守秘義務』がありますので秘密が漏れる心配はありませんが、どこで聞き耳をたてられているか分かりませんからね」

「他の冒険者には知られない方が良いと?」

「それだけ、光太(こうた)さんの固有スキルは凄いモノだということです」


 この後の説明を聞いての俺の感想は、一言で言うと『信じられない』であった。


 まず、俺の持っている固有スキルについてはこうだ。


『スカウトスキルLV.1』

 日本で言うところの『勧誘』と言う意味のスカウトではなく、元来の本当の意味である『探し出す』や『見つけ出す』の意味を持つのがこの『スカウトスキル』である。

 『感知・感応』に『能力・性格』に至るまで『全てを知り尽くす』ことができるのがこのスキルのスゴイところである。

 もっとも、『LV.1』では効果範囲が低いらしいが、『SSS』に指定されるだけあって有用なスキルである。


解体(かいたい)スキルLV.1』

 モンスターを倒した後で『素材』と『食料』に分けたり、血抜きや部位ごとに切り分けたり鮮度を保たせるなどができる。

 また、『素材アイテム』の『採取・採掘』も『解体』と言う認識になっている。

 つまり、『完成された物をバラバラにする』と言うのが、『解体スキル』の意味するところである。

 『LV.1』では、モンスターでもレベルの低い部類や鮮度を保たせる時間の短さ、素材アイテムもランクの低い物しか解体できない。


調合(ちょごう)スキルLV.1』

 2つ以上のモノから新たに1つのモノを作り出すことができるのがこのスキルの特徴である。

 薬の調合から、香辛料や調味料の調合、素材アイテムを調合して効果アイテムを作り出すこともできる。

 つまり、『物と物を混ぜ合わせて新たなモノを作る』のが『調合スキル』の意味するところなのだ。

 『LV.1』では、ランクの低い物しか調合できない。


 信じられないが、聞けば聞くほどどのスキルも希少価値が高いのが分かる。

 しかも、ある意味、冒険者には喉から手が出るほどのモノであることも理解できた。

 だがそれは、自分にとって有用であると同時に危険であることも分かってしまった。


「周りにバレないようにしないと・・・」

「ステータスを盗み見るようなスキルはないので、黙っていればバレませんよ」

「つまり、口を滑らさなければ・・・ってことですね」

「それが良いでしょう」


 話しが終わり、俺は席を立つ。

 なんだか、どっと疲れたよ・・・。


 市役所を出て、背伸びをして息を吐く。

 あー・・・青空が眩しいわ。


 とりあえず、冒険者としての一歩を歩むことができた・・と言えよう。

 まあ、問題は山積みなのだが・・・。

 でも・・・今日はもうゆっくりさせてほしい。


 とにもかくにも、俺・・・風見光太(かざみこうた)の冒険は始まろうとしていた。

ようやく長かったプロローグも終わりました。

では、光太のステータスを載せておきます。


氏名:『風見光太(かざみこうた)

年齢:『18歳』

ジョブ(取得職業):『戦士(せんし)


LV(レベル):1

HP(生命力数値):(32/32)

MP(魔法力数値):(10/10)

SP(技能力数値):(16/16)

AKT(攻撃力):7

DEF(防御力):9

AGI(素早さ):5

MAT(魔法攻撃力):5

MDF(魔法防御力):6


技能スキル:『初級剣技(しょきゅうけんぎ)』『初級槍技(しょきゅうそうぎ)』、『初級斧技(しょきゅうふぎ)


魔法スキル:『―――』


固有スキル:『アイテムボックス』『スカウトスキルLV.1』『解体(かいたい)スキルLV.1』『調合(ちょうごう)スキルLV.1』



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