閑話④獣人の国・ビーストリア
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エリナが新たにパーティに加わり、光太たちはフィリィの故郷に向かっていた。マムシ坂と呼ばれる急坂を上ると新たな増えた大森林が広がる『獣人森』がフィリィの一族が…いや、多種の獣人が暮らす森なのだ。
「それにしても、ガルの装備が間に合ってよかったよ…」
「まさか、ガルの装備品の調整がこんなにかかるなんてな…」
「じゃが、かなり良い出来ではないかのう」
「まさか、胴回りの装備品まで作ってくれるとは…ジャックさんに感謝だね」
「ワウッ」
エルフの集落に行く日になって、急にジャックさんからガルの装備品の調整でガルをしばらく預からせてほしいと言われ、置いていくことにしたのだ。
「お待たせー」
「エリナ。連絡は取れたかい?」
「まあね。両親は心配のしの字もしてなかったわ。まあ、姉貴はそれなりに心配してくれてたけどね」
「2年間も連絡が取れなかったのに…放任主義にもほどがないか?」
「冒険者になるって決めた時から家には帰らないって言ってあるのよね。実際4年間帰ってないし…」
「じゃあ、高校卒業してから…」
「帰ってないわね」
「どういう家族なんだ…」
「まあ、そんなに考え込まないでよ。そう言う家族って思ってくれればいいから…」
「…俺たちの仲間になるのにも簡単に答えたとは思ったけど…」
「どうやら、あまり物事を深く考えない性格のようじゃのう…」
爺ヶ岳の件と言い、一度決めたらどこまでもみたいな猪突猛進な性格らしい。
「ねえ…気になってたんだけど…エリナってハーフなの?」
「ん?いや、純粋なアメリカ人よ。ただ、日本育ちなだけ」
「赤みがかった金髪に蒼い瞳だからヨーロッパ系かと思ったよ」
「よく間違えられるよ。でも自分としては日本人として扱ってもらいたいね」
「まあ、エリナはエリナじゃからな。それで良いのじゃ」
「だね」
「だな」
「ワウッ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
まだパーティとして戦闘経験はないが、絆だけは深まっていくのだった。
森の奥深くを進み、みちすがら山菜やキノコを採取しながら歩くこと2時間。ようやく光太たちは獣人の国に着いたのだ。
それは確かに『国』といて良いほど建物が並び、多種の獣人が行き交うところだった。
「ようこそ、獣人の国『ビーストリア』へ」
「まさか森の中にこんな立派な建物が並ぶところがあるなんて…」
「それにこの賑わい…俺の町なんて目じゃない程だぞ?」
「獣人は結束力が高いからのう。家族意識が強いんじゃよ」
どう見ても大町市よりも規模の小さい国であるはずなのに人口はどう見てもこちらの方が多いように感じられる。建物は石造りのものが多いがどれも結構な高さがある。奥の方に見える石材と木材の混合の屋敷のような建物が見える。
「どうやって生計を立てているのかな?」
「この近くにモンスターフィールドがあるのじゃ。そこに『ダンジョン』もあるしのう」
「…もしかして、独自に?」
「そうなるのう。別に皆が冒険者になりたいわけじゃないからのう。食べていくために…というヤツじゃ。それに、ここのフィールドに出るモンスターは木崎湖のよりも弱いモンスターじゃしのう」
元々多種族とはある一定の線を引いて共存関係にある。それは種族ごとの考え方があるからであり、宗教や信仰もあるのだから当然であろう。だから、モンスターフィールドに対する考え方も種族によって違うのも当然なのだ。つまり、獣人たちにとってモンスターフィールドは生きるための糧となる場所なのだ。
「ここでは物々交換で交流しているし、何かあればみんなで助ける…そう言う風にしてここは成り立っているのじゃよ」
「だからこそのこの賑わいってわけだね。人類も見習え…だね」
「でも、フィリィはどうしてわざわざ冒険者になったの?」
「獣人族は力で強さを証明するのじゃよ。特に王族なると色々とのう…」
「フィリィって人虎族って言ってなかったっけ?」
「そう言うようにと言われたのじゃ。妾の種族はあまり知られるのを良しとしなくてのう。すまんのじゃ」
「まあ、事情があるなら聞かないでおくよ」
「それがエチケットってやつね」
そんな会話を入り口でしているとコチラに気づいた獣人たちが騒ぎ始めた。
「おい。フィリィ様のお帰りだぞ!」
「フィリィ様のご帰還だ!」
「ガレオン様をお呼びしろ!」
「マリフィナ様もだ!」
「いや、みんな呼んで来い!」
「宴だ!祭りの用意だ!」
大騒ぎだ。ゼノの時を大きく上回る騒ぎだった。
どんどん拡大していくフィリィ帰宅の一報で獣人たちが集まってくる。
そのうち、フィリィの帰宅に対して大声援が送られ始める。
「スゴイな…」
「今さらながら凄いパーティに入っちゃったみたいね」
「すまんのう…」
「まあ、良い予行演習だと考えようよ」
「どういうこと?予行演習って?」
「えーと…あと2週間くらいしたら俺たちメディアデビューが決まってて…」
「…はい?」
俺はエリナに今俺たちが置かれている状況を教える。
冒険者ギルド・国や市の意向で『冒険者の代表』として扱われ、メディアに取り上げられること。約1年間は色んなイベントに参加することが決まっているのだ。
もちろんパーティメンバーに加わったエリナも強制参加になるわけで…。
「…まあ、目立つのが嫌いなわけじゃないが…正直、関係性の薄いアタシが一緒で冒険者ギルドが良く納得したわね?」
「逆だったみたいだよ」
「どういうこと?」
「人数が少な過ぎる方が信憑性に欠けるらしい。3人パーティでジャイアントオーガを倒したと言う方が『作られた話』っぽく感じられるから、人数が増えた方が『それらしい話』なるってさ」
「…なるほどね。そうなると、もう少しメンバーを増やしたいところね」
「でも…誰でもいいわけじゃないからさ…」
「それはそうね。でも、いろいろ聞かれても話し合わせられないわよ?」
「公式には3人パーティとガルで討伐したことは正式に受理されていることだからエリナは本当のことだけ喋ればいいみたいだよ。ただし、聞かれなければこちらから進んで言う必要もないってさ」
「いかにもお偉いさんの言いそうなことね。まあ、それなら協力するわ。アタシの夢も叶うかもしれないし」
「夢?」
「外国に…と言うか世界を周りたいのよね」
「それは大きな夢だな」
「世界か…妾も行ってみたいのじゃ」
「まあ、イベント関係で行く可能性はあるかもね」
そんな会話をしていると、人垣が割れて身長はゆうに2メートルを超える白金髪の虎男に白のドレスを着た女性。その後ろに青年が2人と女性が2人(うち、1人はどう見てもフィリィより年下。)が現れた。
「父上、母上。兄様方にお姉様、ラティ…ただいま戻ったのじゃ」
「フィリィ~。父は、父は寂しかったのだ!」
「抱きつくな、なのじゃ!鼻水が付くから止めるのじゃ!」
「アナタ…」
スパーンとハリセンで白金髪の虎男の頭を叩いたのは白いドレスの女性だった。
笑顔でハリセン…手慣れてますね。しかし、それ以上に父親の威厳はどこに?意外にも周りの獣人たちはこの光景を普通に受け入れている。つまり日常的な行動と言うわけだ。
「すまないね。父は家族のことになると感情が抑えられないんだ」
「いつもは威厳ある獣王なんだけどね…」
「ようこそ、ビーストリアへ。フィリィのお仲間さん」
「風見光太です。よろしくお願いします」
「エルフのゼノです。お見知り置きを…」
「如月エリナよ。よろしくね」
「ワウッ!」
「彼は白狼のガル。俺たちの大事な仲間だ」
「俺は長男のガヴェル・ノエルだ」
「次男のレオーネ・ノエルと言います」
「長女のユシリィ・ノエルと申します」
「三女のラティ・ノエルです。10才です」
「母のマリフィナ・ノエルです。お会いできて光栄よ、皆さん」
「父のガレオン・ノエルだ。娘は誰にもやらんぞ!」
「アナタ…」
「父上…」
スパン!スパン!とどこから出したのか?マリフィナだけでなくフィリィまでガレオンの頭をしばいたのだ。
「…こんな父ですまないね。歓迎するよ、皆さん」
「祭りの用意だ!」
「盛大に盛り上げよ!」
「「オオ―――ッ!!」」
ガヴェル、レオーネの言葉に獣人たちが応え、どんどんと祭りの用意が進んでいく。
光太たちはただ立ち尽くして、用意が終わるのを待つだけだった。
それにしても…とんでもない親バカっぷりを見せるガレオンに苦笑するしかない光太たち。
フィリィが恥ずかしそうにしているのが印象的だった。
―ガル<白狼種・狼神>ー
LVレベル:38
HP(生命力数値):(2538/2538)
MP(魔法力数値):(787/787)
SP(技能力数値):(1102/1102)
AKT(攻撃力):249
DEF(防御力):293
AGI(素早さ):204
MAT(魔法攻撃力):255
MDF(魔法防御力):268
―宝玉の胸当て<胸全体を覆う装備品。8色のクリスタルが埋め込まれており、魔法耐性効果がある。>・炎爪<右の前足に付けられる炎のエンチャントが施された装備品>・雷爪<左の前足に付けられる雷のエンチャントが施された装備品>―




