閑話②新族長の試練と神のクエスト
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「どうしてこうなったんだろうね?」
「…すまん」
「お主が謝ることはないのじゃ」
「だね。タダさあー…理不尽だなぁ…と」
「…すまん」
今、俺たちは爺ヶ岳の5合目にいる。
爺ヶ岳事態は標高2,699.82mと中々登りがいがある山だが、地球が拡張して以降は天候が常に悪く雪景色が1年中続いている。と、ここで気になっていると思うが俺たちはこの爺ヶ岳の山頂を目指すことになったのだ。何故かと言うと、それはエルフの族長会でゼノに対して『新族長への試練』が言い渡されたのだ。実際には『モンスターフィールド』を1つ落としてからのはずの『試練』だったのに…。
まあ、実力的には試練を乗り越えられると思われたのだろうが、何故か俺たち2人も一緒に…と言うことになったのだ。
「結構、強引だよね。エルフ族って…」
「体面の問題だろうな。これからメディアに取り上げられるのに『ただのエルフ』ではなく『新族長の証を持つエルフ』では大きく違うからな」
「だから、どうやっても証を手に入れさせたかったのじゃな」
「そう考えると分からくもないか…。ゼノって大切にされてるなー…」
つまり族長はただの『親バカ』だったと言うことだ。
子供に『拍』を付けてやりたかったのだ。エルフ族のためと言うのは詭弁。だって、自然と共に生きるエルフ族が世間体などに左右される謂れが無いのだから。
「どういうことだ?」
「え?気づいてないの?今、自分で言ったじゃん。『メディアに取り上げられるのに『ただのエルフ』ではなく『新族長の証を持つエルフ』では大きく違う』って。これはさ、ゼノがただのエルフとは違うって思わせたかってことだよ。つまり、実力に伴うだけの『実績』もあると言う『証明』を与えたかったんだよ」
「親父…」
「なんとも親バカじゃな」
「でも…俺は逆に気に入ったよ。人間だろうとエルフだろうと変わらない…親は子供を思っているって」
「…行くか」
「そうじゃな」
ゼノの顔つきが変わる。
『やってやるぞ!』って言う気合が満ちている。
俺とフィリィはそれを見て頷く。
頂上を目指し歩くと、まずは突風が吹き荒れて上手く前に進めなくなった。いや、突風と言うよりも暴風と言った方が適切かもしれない。
それでも、肉体強化された今の俺たちには『動き難い』くらいにしか感じないが…。
8合目まで来た辺りで猛吹雪に会う。
視界が吹雪で全く見えないが超感覚のおかげで方向感覚は狂うことはなく進める。
「やっぱり、おかしいよな?」
「何がじゃ?」
「この天候のことだろう?」
「うん。天気予報では吹雪になる要因が無いのに実際には吹雪が起きている。これって…自然現象じゃないってことじゃないかな?」
「誰かが起こしておる…と?」
「そう考えるのが妥当だろうね」
嫌な予感がする。誰もが思いながら口にしないのは口にした瞬間、それが『本当』になると思ったからだ。
そして、9合目に差し掛かったところで『ソレ』は突然起こった。
『神のクエストが降りました』
頭の中でファンファーレがなり、その言葉が響いた。
「…ウソ、だろう?」
「このタイミングで…か?」
「なんとも言えんのう…」
あと少しで頂上と言うところで『コレ』だ。
もう、この天候でバレバレだよ。結局、俺たちの願いは空しく散ったことを意味したのだ。
『頂上にいる『守護者』を倒し、『封印されし者』を助けよ』
内容が告げられたことで逆に冷静になれた。この聞こえた声は作られたモノじゃない。
肉声だ。つまり…。
「あの…神様ですよね?」
『……なんでしょう?』
「聞きたいことがいくつかあるのですが…?」
『そうですね。答えられることは答えてあげましょう』
「ありがとうございます」
神様は寛容だった。これはチャンスとばかりに俺は考えていた疑問をぶつけることにした。
「まずは、神のクエストのことですが…どうして前回では知らせが無かったのでしょうか?」
『前回は言ってみれば『突発イベント』ですよ。こちらが予期しない事態のモノでした。ですが、神のクエストと言ってよい内容でしたので、君たちには祝福スキルを与えたのです』
「なるほど…。では、通常はこのように神のクエストが降りると?」
『通常ならば、特殊な状況において神のクエストは降りますが…誰とでもと言うことはありません。伴う実力があってと言うことになります。ですが、君たちの様な特殊なケースで力を得た場合もその限りではありません』
「では…こちらが本命の質問なのですが…」
『何でしょう?』
「今のこの地球の状態は神様が行ったことなのでしょうか?」
『……』
答えられないか…。そうだよなー…。例え本当だとしても軽々しく言って良い内容とは思えないし。
『そうですね。全てを話すことはできませんが、この世界は幾つかの世界を1つに統合することで『助けた』と考えください』
「では、今のこの世界は大丈夫なんですね?」
『それは保証します。ただし幾つかの問題も残りました。それが、モンスターです』
「どういうことですか?」
『モンスターは少なくもこの世界に生まれることは分かっていましたが…強力な大型モンスターや特殊な能力を持ったモンスターが生まれてしまいこの世界に特殊な空間である『モンスターフィールド』や『ダンジョン』などが出来上がってしまったのです』
「じゃあ…本来は?」
『ここまで殺伐とした世界にはならないはずでした。なので、救済措置として『冒険者』と言う能力を作ったのです』
「…人類の脅威ではない…のですか?」
『どちらにせよモンスターは決められたフィールドからは出られませんからね』
その言葉で光太たちは安堵する。
『さあ、これ以上の情報はこれから君たちが神のクエストをクリアしていけば少しずつ教えましょう。どうします?神のクエストを受けますか?』
「…どちらにせよ、頂上まで行かなくてはいけない」
「そう言うことじゃから受けるのじゃ」
「それで、封印されし者って…神様関係じゃないですよね?」
『それはない。どちらかと言えば君たちの頼もしい『仲間』になるであろう『者』だ。だから助けることが大前提だね』
「仲間…か。じゃあ、絶対に助けよう」
「「おうっ(じゃ)!」」
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頂上に着くと、そこにはデッカイ巨人がいた。身体が透明でクリスタルっぽい。
「あれが…守護者」
「紛れもなく強いぞアヤツ…」
「最初から全開で行くぞ」
立ち上がる守護者。その大きさはジャイアントオーガをも軽く凌駕していた。
『ム――オオオオォォォォォン!』
「「!?」」
守護者が腕を振り下ろす。その瞬間、守護者が触れた大地が凍り付きながら俺たちに向かってくる。
クリスタルじゃない!アレは――…。
「アイスゴーレム!?」
「躱すのじゃ!」
「――くっ!」
驚いたものの攻撃を躱すのはそれほど苦ではなかった。
アイスゴーレム。だからこそこの爺ヶ岳が雪で覆われ、年中吹雪いていたと言うわけだ。
「ならば…『火柱』!」
『ブオオオオォォォォン!』
ゴウン!と火柱がアイスゴーレムを包み込む。
火柱が消えると同時にフィリィの連続の拳打がアイスゴーレムにヒットする。
「…ダメじゃ。効いておらん」
火の魔法は属性的に効果がある。しかし、物理攻撃にはかなりの耐性がある様だった。
「こうなると、武器の攻撃も効きそうにないな…」
「だが、火の魔法でも倒すのには時間がかかりそうだぞ?」
「考えている暇なさそうじゃぞ…」
「とりあえず、もう一度…『火柱』!」
『ブオオオオォォォォン!』
やはり、火の魔法は良く効いている。
だが致命傷には至らない。決定打に欠けるのだ。
「見ろ。溶けていたところが元に戻っていく」
「どうにかしてアイスゴーレムの身体を砕いて核を壊さないと…」
「それが1番難しいのう…」
何かいい方法は…。
あ…。1つだけあった。
「もしも…これができるなら勝機はあるかもしれない」
「あの…身体を砕けるのか?」
「たとえ砕けなくてもヒビが入れば…」
「足しかにそれならばチャンスはあるかもしれんのう」
「具体的には?」
「…『魔法剣』だ」
「「魔法剣!?」」
「ゼノの火の魔法をを俺の双剣にまとわせるんだ」
「出来るのか?」
「マンガでなら成功してたな…」
「…話している場合じゃなさそうじゃのう…」
「フィリィ、足止めを頼む…」
「…成功させるのじゃぞ」
そう言って、フィリィはアイスゴーレムに向かっていく。
フィリィはその身体能力を活かしてヒット&アウェイでアイスゴーレムを撹乱してくれる。
時間が惜しい。
「ゼノ…頼む」
「…分かった」
魔法剣。この世界でもそのスキルは存在する。だが、それが使えるのは『魔法戦士』などの『上級ジョブ』を持っていればの場合だ。しかし、今のこの地上で『上級ジョブ持ちは100人も満たない』のだ。
その中でも『魔法戦士』は7人しかいない。魔法剣は少なくても『戦士』と『魔法使い』のジョブをカンストしていないと使えないと言われている。光太は戦士系の初級剣術はカンストしているが、魔法使いには手を出していない。なので、これはある意味分の悪い賭けであった。
「…『火球』!」
「――グッ」
火球と言うよりも炎の塊が光太の双剣に当たる。それを何とか抑えようとする。
さすがは10倍の威力だけはある。何とか留めるのがやっとだ。
『抑えつけようとするのではなく、受け入れるのですよ…』
「…受け入れる。そうか…」
神様の声はありがたかった。抑えつけようと必死になったがこの炎は『味方』だ。
「……出来た。ゼノ。フィリィの援護を」
「分かっている。『火柱』!」
双剣には炎が纏い、何だろう?物凄い『威力』を感じる。俺の言葉でフィリィが距離を取ったのを見計らってゼノの『火柱』がアイスゴーレムを包み込む。
今だ!この好機は逃さない!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
雄叫びあげながら光太はアイスゴーレムに突っ込んでいく。
『火柱』が消え始めたところに『炎の魔法剣』を叩きつける。
『グオオオオオオオォォォッ!』
バキキィッ!とアイスゴーレムの中央にヒビが入る。
「今だ!フィリィ!!」
「ダ―――ッ!ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ」
俺の言葉とともに横にステップする。そこにフィリィが飛び込んできてあらん限りの拳打を撃ち込んでいく。ヒビが広がり亀裂が穴になったところでフィリィは俺と逆側にステップする。
「ゼノ、今じゃ!」
「――『火球』!」
10倍の威力の『火球』がアイスゴーレムのヒビの部分に当たる。
その瞬間、亀裂が無塵に走りアイスゴーレムの身体を粉々にした。
残ったのは空中に浮かぶ赤い球だけだった。
「トドメだ!」
光太が素早く龍炎(刀)で真っ二つに斬る。
そして、吹雪が止み始めて晴れ間が見えてきた。それと同時にアイスゴーレムがいた真後ろの『山』が氷の塊であることが分かる。
「あの中に人がいる」
それは、ブロンドの髪にパーカーの様なローブ服を着ている右手にはステッキの様な物を持っている。
溶けた氷の中から彼女を助けたのはフィリィだった。
『神のクエストのクリア、おめでとう』
それは、神様からの祝福の言葉だった。




