報告と義務
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体力的には問題はなかったが、異様な疲労案が出てヘトヘトになって冒険者ギルド(協会)に着く。
騒ぎの中、受付の1人が光太たちに気づいた。
その顔は驚きの表情だった。まあ、ガルを連れていれば当然か。
「あ、あの…その子供は?」
「え?そっち?えっと…木崎湖のモンスターフィールドの第2エリアでジャイアントオーガに襲われているところを助けたんですが…」
「そばに冒険者のパーティはいませんでしたか?」
「いました。ただ…全員ジャイアントオーガによって殺されました」
「何人いましたか?」
「えっと、死体を回収してきました。人数は5人です」
それを聞くと、受付の人は奥へと入っていき、年配の男性に何やら話していた。
こちらを見た男性職員がやってくる。
「パーティ・ルーキーブレードの御3方ですね。悪いが、ついてきてくれるかね」
「…分かりました」
「あ、子供はこちらの職員が預からせてもらいます」
「では、お願いします」
受付嬢に言われ子供を預け、男性職員の後を追った。
着いたのは『会議室』だった。
「すまないね。他の冒険者の手前、こんなところまで来てもらって…」
「いえ、それは構わないんですが…」
「色々と聞かせてもらいたいが、周りには聞かせたくなくてね。まずは遺体を確認させてもらえるかな?」
「ここに出していいんですか?」
「お願いする」
「分かりました」
アイテムボックスから遺体を出す。
人数と人相を確認する男性職員。
「…確かに手配書の人物たちだ。ここだけの話にしてもらいたいんだが…彼らは子供を誘拐してはボスモンスターの前に囮として出して、その間にボスモンスターの隠している宝箱を盗むと言う犯罪を繰り返していたんだ」
「そんな…それじゃあ、囮に使われた子供たちは…?」
「全員、死亡している」
「くっ…。同じ冒険者として情けない…」
「怒りがこみ上げてくるのじゃ」
「こんな恥知らずな冒険者がいるなんて…」
その冒険者たちは死んでいる。だからと言って、彼らの犯した罪が償われたわけじゃない。
「あの…報奨金が出るんですよね?」
「今回の功績はそれだけの価値があるからね」
「その報奨金を遺族の方たちに渡してもらえませんか?」
「それは良い案じゃな」
「まあ、少しでも遺族の方たちの慰めになれば…」
「君たちのその気持ち、ありがたく頂戴するよ」
同じ『冒険者』と言う立場として、それで許されるわけじゃないだろう。
でも、遺族に何かしたいと言う気持ちが行動に移させたのだ。
「次に、ジャイアントオーガに遭遇と言うことだったね?」
「はい。第2エリアである岩場エリアを1キロほど歩いた場所で子供に迫るジャイアントオーガを見つけたんです」
「その時は子供たちを救いだして逃げることだけを考えていました」
「じゃが…ジャイアントオーガは強い上に早かった。すぐに追いつかれたのじゃ」
「それで、戦うことに?」
「逃げ切るための時間稼ぎと言うのが本音です」
「まずは子供だけでも助けるべきだと考えて第1エリアに子供を運び、モンスターに襲われないように岩で覆ってから戻りました」
「よく咄嗟にそこまで考えたね。だが、最善の策と言えよう」
「ありがとうございます。ですが、戻って報告して逃げることになったのですが、第1エリアまであと100メートルと言うところで、ジャイアントオーガの一撃で吹き飛ばされて、2人は気絶しました、辛うじて意識のあった俺はここで逃げることを諦めました」
「全員で生き残るために戦うことを選んだ…と?」
「そうです。ジャイアントオーガはフィリィの牽制の攻撃で足を少し負傷していたので、そこを中心に狙いました。足に槍を突き立てジャイアントオーガが怯んだ一瞬を狙って脇腹にショートソードを刺したんです」
「だが、その程度ではどうにもなるまい?」
「ええ。突き刺した後すぐに腕で吹き飛ばされました。もうダメかもと思った時、白狼のガルが助けに割って入ってくれたんです」
「ほう。それで…?」
「白狼が戦ってくれている間に2人を介抱しました」
「先に目を覚ました僕が死んだ冒険者たちの下に向かい回復アイテムが無いか探しに行きました」
「状況判断も悪くない。それで、あったのかい?」
「ありました。それを拝借して3人で使いました」
「それでも、逃げることはしなかったと?」
「本能…とでもいうんでしょうか?ここで逃げたら助からないと思ったんです」
「それで、倒せた…と?」
「最後のトドメはガルがしてくれましたが、倒せました」
「では、ジャイアントオーガの一部を見せてくれるかね?」
「分かりました。これでどうですか?」
そう言って取り出したのは、『ジャイアントオーガの牙』であった。
「すぐに鑑定させよう。預かるよ」
「お願いします」
「では、結果が出るまでに最後の確認だが、ガルと君たちが呼んでいるそこの白狼はモンスターで間違いではないね?」
「そうなるのじゃ。妾の固有スキルの意思疎通スキルで契約したのじゃ」
「ふむ。『モンスターを仲間にした』という報告は受けています。そう言う事例が稀にあったらしいのですが、あまりに少ない事例なので冒険者たちには伏せられていたんですよ。しかし、契約印も確認できましたしガルを正式にルーキーブレードの仲間と認定します」
「「「ありがとうございます」」」
ただし、手続きは必要らしいので後で申請用紙に記入する必要はあるとのことだった。
「後は…君たちのステータスだが、レベルだけで良いので確認してくるかい?」
「分かりました」
「レベルか…」
「上がっておるのかのう?」
そう言って、ステータス画面を確認するととんでもない『数字』が目に飛び込んできた。
「…レベル10!?」
「妾もレベル10じゃ」
「ボクもだ…」
「レベル10か。やはり、ガル君にも経験値が分けられ様だね」
「…どういうことですか?」
「ジャイアントオーガを倒したならレベル15にはなったはずだ。通常のモンスターと違い、レアモンスターは経験値が多いんだよ。これも、事例はあるものの伏せられている情報だ。聞かれれば答えるがね」
それにしても、今までのモンスター討伐数からすれば破格ともとれる経験値の量だ。
今さらながら、よく倒せたものだと思う。
幸運と言えばそうであろうが、偶然で片付けられるようなものでもない。
まるで、導かれたかのように進んだ道が『当たり』だったに過ぎない。
「納得はしにくいだろうが、これも冒険者特権の1つとでも思えばいい。それよりもだ。君たちルーキーブレードのパーティランクをC級に昇格する。本来ならB級の実力があるんのだが…B級からは『試験』を受けてもらわないといけない規定になっていてね。我慢してほしい」
「いえ、C級でも十分ですよ。実感もないですし…」
そんな話をしていると、先ほど預けたジャイアントオーガの牙を持って職員が来た。
「確認が取れました。ジャイアントオーガの討伐おめでとう。報酬だが、まずはジャイアントオーガの所有権と討伐報酬に国より5億円、県からは冒険者カードのランクを特別指定の『ミスリルランク』での進呈、市からは、土地購入権利書が与えられます」
「…それって、ジャイアントオーガの討伐だけの報酬ですか?」
「そうなります。もし、子供救出などの報酬を合わせますと…15億は貰えたでしょう」
「と言うことは遺族にはその差額の10億が…?」
「均等に割り振られるでしょう。もっとも国や県からも賠償金が支払われますが、冒険者からと言うのは大きいでしょう。ですが、それで納得はされないでしょうがね」
「それはそうでしょう、しかも、怒りをぶつけたい相手が死んだのではやりきれないでしょうね…」
「ですが、徹底的に調べ上げて遺族には報告するつもりです。それと、ほぼ決定となるでしょうが、今回の功績を国と県、市や冒険者ギルド(協会)で大々的に取り上げて感謝状の贈呈に呼ばれることとなりますので、その際は『正装』で出席するようになるので服を用意しておいてくださいね」
「…マジですか?」
「真面目な話です」
どうやら、市民に『冒険者』の『あるべき姿』を見せることで、今回の不正を払拭したいのだろう。
もしかしたら、今回の報酬金の譲渡も大々的に見せるつもりかもしれない。
まあ、冒険者としての誠意は見せると言うのは理解できる。
見世物になるのは正直嫌だが…。
「では、その辺りを含めて今後のことを知っておけば慌てずに済みますからお話しをしておきましょう」
この後、聞かなければよかったと心から後悔する3人の姿があった。




