決着と契約
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「ガワゥッ!」
「ガアアアァァァッ!」
犬のモンスターは光太ではなく、ジャイアントオーガに向かって行った。
そのスピードは完全獣化したフィリィをはるかに上回る。
犬のモンスターの一撃は光太の刺した脇腹を抉り切り裂く。
さすがのジャイアントオーガもダメージを負ったようで叫び声をあげた。
「一体…どういうことなんだ……?」
何が何だか分からない。
なぜ、モンスターが自分を守ったのか?
俺は、スカウトスキルで犬のモンスターを見る。
「…『白狼』。狼系モンスターの特級稀少種と呼ばれるモンスター。モンスターであるが、人類の味方的立ち位置にいる。魔力供給の吸収率が高いのでエリアを自在に渡れる。SSSクラスのモンスターなので実力も能力上昇率も高い。攻撃は牙と爪が主体である…」
人間の味方的立ち位置って…どういうこと?
あ…緑の点滅の反応…。そう言うことか…。白狼はずっとジャイアントオーガと戦っていたんだ。でも、俺たちが来たことでいったん身を隠したんだ。でも、俺たちが絶体絶命に陥って助けに入ってくれた。
「今のうちに2人を…」
倒れている2人を介抱する。ゼノはすぐに意識を取り戻した。問題はフィリィだった。完全獣化で獣になっているのでどう起こせばいいのか分からなかったのだ。
「…アレは何だ?」
「どうやら味方らしい。今のうちに何とか少しでも回復しないと…」
「ちょっと待っててくれ…」
そう言うと、ゼノは岩場エリアの奥の方へと歩いて行った。
俺は、フィリィの身体を抱き抱え大きな岩の後ろに身を隠す。
ジャイアントオーガは意外とダメージあったらしく、白狼と互角の戦いをしている。
しばらくすると、フィリィも意識を取り戻す。
そして、ゼノも戻ってきた。
「どこに行ってきたの?」
「…悪いと思ったが、遺体の荷物を漁ってきた」
「何か収穫が?」
「ああ…コイツがあった」
「それって…ポーション?」
「ああ…全員分ある。これを飲んで回復するんだ」
3人でポーションを飲む。身体の痛みがなくなっていく。ポーションは通常宝箱やある一定のモンスターのドロップ品と言われている。なので、そうそう出回らないのだ。ただ、低級ポーションでもレベル10くらいの冒険者のHPを全回復させるだけの効果があると言われている。
「…これで、何とか戦える」
「戦うのか?逃げるべきじゃ…」
「本能が告げるんだ…。逃げたらダメだって…」
「そうじゃな。ここは戦うべきじゃ。勝つことでしかアヤツから逃げられん」
「…分かった。で、具体的にどうする」
「ゼノの『天雷魔法』はあと何回使える?」
「あと1回だな」
「フィリィのその姿はいつまで保てる?」
「あと…数分じゃろう」
「…フィリィは白狼と連携して戦えるかい?」
「…やってみるのじゃ」
「ゼノはトドメ用の『天雷魔法』の用意を…」
「任せろ」
「俺は接近戦に出る」
白狼とフィリィが両側から交互に攻撃を加えている。その中に真正面から挑む。
狙うは、あの傷ついた脇腹の一点のみ。
声を出さず、気合だけを乗せて突っ込む。
白狼とフィリィのスピードに意識がいっているジャイアントオーガは俺の存在に気づいていない。
今しかない!俺は全体重を乗せて剣を突き刺した。
「グギャ――――――ッ!」
悲鳴を上げるジャイアントオーガ。
俺は突き刺した剣から手を放し、その場を飛び退く。
「フィリィ。今だ!」
その瞬間、両側からフィリィ、白狼の順に牙で首を斬りつけた。
血飛沫が上がり、ジャイアントオーガの動きが止まる。
ここしかない。
「ゼノ!」
「―――『雷光弾』!!」
光の弾が放たれ、俺の突き刺した剣に直撃する。
その瞬間、ジャイアントオーガの身体に電撃が走る。
突き刺さった剣の周りは焼け爛れ、ブスブスと焦げている。
ジャイアントオーガの全身は真っ黒焦げと化し、目は白目を向いていた。
「ウオオオオォォン!」
吠えながら白狼は最後の一太刀とばかりにジャイアントオーガの首を切り落とした。
「ヲオオオオオォォォン!!」
天に向かて吠える白狼。
こうして、凶悪なるAA+級のモンスターのジャイアントオーガを倒すことができたのだった。
俺はゆっくりとジャイアントオーガの下に向かい、解体スキルを使う。
「ジャイアントオーガの肉(色んな部位を入れて)が4トン、ジャイアントオーガの角が3本、ジャイアントオーガの牙が60本、ジャイアントオーガの爪10本、ジャイアントオーガの目玉が2つ、ジャイアントオーガの骨、ジャイアントオーガの胃にジャイアントオーガの内臓、ジャイアントオーガの肝臓と腎臓、ジャイアントオーガの心臓、ジャイアントオーガの脳…こんなのまで採れるなんて…これがAA+級のモンスターなのか」
採れる素材が多いのもランクの高いモンスターの特徴と言うのは合宿で習っていたが、さすがに多くて驚いてしまう。
俺は、ジャイアントオーガの肉を白狼に与える。
正直、この素材の7割は白狼のモノと言って良いだろう。
白狼は美味しそうに肉を平らげていく。
「肉は全部白狼にあげるべきだよね?」
「そうじゃな。報酬と言う意味では妥当じゃろうが…」
「さすがにこの量を持ってはいけないだろうしな。どうしたらいいか…?」
「ウオン!」
「…え?もう食べ終わったの?…じゃないな」
「…なんじゃ?今『声』が聞こえたんじゃが…」
「…声?」
「白狼の鳴き声じゃなくて?」
「いや…『声』じゃ。『聞こえるか』とのう…」
「…――それってもしかして白狼の声なんじゃないか?」
「どういうことじゃ?」
「フィリィの固有スキル』…『意思疎通スキル』が発動したんだよ」
『意思疎通スキル』は動物と話せると言うモノだった。ただし、魔物と話すにはレベルが低いはずである。と言うことは、白狼から意思疎通をとってきてくれたと言うことだろう。
「なるほどのう。では、話してみるのじゃ。白狼よ、何か言いたいことがあるのか?」
「ウオン」
「…ふむ。『一緒に行く』と言うておるのじゃ」
「それって…」
「仲間になるってことか?モンスターが仲間…聞いたことが無いな」
「でも、仲間になってくれるならありがたいけど…フィールドを離れるのは大丈夫なのかな?」
通常、モンスターはエリアから離れることはできない。白狼は魔力供給の吸収率が高いのでエリアを自在に渡れるらしいが、人類の土地ではどうなんだろう?
「ワフ…ウオン!」
「…問題無いそうじゃ。『自分と絆の契約をしろ』と言うておる」
「俺は良いと思うけど…」
「そうだな。心強いのは確かだ」
「妾も構わん。では、契約を結ぶのじゃ」
「ウオン!」
白狼が一声吠えた瞬間、フィリィと白狼の身体が『魔法陣』で囲われた。
「…名前を付けるようになっておる」
「名前…確か、狼王の名前を『フェンリル』とかって言ったような?」
「僕らのところでは狼神を『フェンガル』と言ったな」
「では、『フェンガル』で愛称を『ガル』でどうじゃ?」
「良いんじゃないか?」
「うむ。良い名だな」
「では、お主の名は『フェンガル』。愛称は『ガル』じゃ」
「ウオオォン!」
白狼が吠えた瞬間、魔法陣が輝きだす。
掌サイズの魔法陣が2つ生まれ、フィリィと白狼の額に入っていく。
そして、魔法陣は消えたのだった。
「…契約できたのじゃ」
「スゴイな、『意思疎通スキル』って――ん?」
感心したとき、光太の『スカウトスキル』が反応した。
「…『フェンガル』。狼系モンスターの特級稀少種である『白狼』。愛称は『ガル』狼神の名前をもらい受けたことで『神格化』する。魔力供給の吸収率が高いのでフィールド・エリアを自在に渡れる。契約者の魔力を得ることで、どんな場所でも生きていける。GS(神化)クラスのモンスターなので実力も能力上昇率も高い。物理攻撃は牙と爪が主体である。風と雷の能力『風雷神術』を使えるようになった。…す、スゴイなガル」
「…名前を貰って『神格化』とか…凄すぎだろう…」
「じゃが、嬉しい誤算じゃな」
「そうだね。それじゃあ、帰り支度をしようか」
正直、疲労感が半端ない。
俺は、ジャイアントオーガの素材をアイテムボックスに仕舞うと冒険者のイタイの回収に向かう。
死体はアイテムボックスに仕舞うことができたので、荷物を含めて回収して第1エリアへと向かう。
第1エリアに着くと、子供たちを背負い市役所内の冒険者ギルド(協会)へと向かった。




