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地球異世界で冒険をしよう!  作者: AZ
第1章 『フィールドデビュー編』
13/33

カガミ精肉店でモンスター肉を売ろう。

 閑話っぽくなってしまいました。

 でもまあ…重要な話になっていると思います。

 卒業式を無事終えて、一旦実家に戻った光太(こうた)

 改めて、秋太郎(しゅうたろう)の家を拠点にして、フィリィとゼノとで共同で暮らすことになったことを報告して家を出たのだった。

 本格的にモンスターフィールドに出るのは明日からだ。


「それで、夕飯までまだ時間があるし、どうする?」

「それなんだけど…食料の買い出しのついでに『ジャックの武具店』と『役所』に行きたいんだけど…」

「よかろう。付き合うのじゃ」

「じゃあ、早速行きましょうか」


 まずは役所に行き、職員の人に話しかける。


「すいません。魔物の肉を売りたいんですが…」

「では、紹介状を書きますのでどこか指定のあるお店はありますか?」

「カガミ精肉店でお願いしたいんですが…」

「では、手続しますので、おかけになってお待ちください」


 備え付けの長椅子に座り、呼ばれるのを待つ。


 魔物の肉はどこでも扱えるわけではない。

 まず、魔物の肉を加工できるだけの解体能力がないと無理である。

 魔物の肉は解体してしまえば普通の家庭でも扱えるようになるのだが、魔物の死体を解体するには技術以上に『解体スキル』か『加工スキル』がないとできないのだ。

 『解体スキル』の劣化版ではあるが『加工スキル』も魔物を解体することはできる。

 精肉店や鮮魚店、加工業者などの従業員はこの『加工スキル』などを持っている者が多く、どうやら世界が変革したときに働いていた職業が密接に固有スキルに影響を与えるらしいのだ。

 無論影響が出るのは100%ではないので、固有スキルが発現した者の店にしか許可は得られないのだ。

 ちなみに大町市には4店舗精肉店があるが魔物の解体ができるのは3軒だけであった。

 カガミ精肉店もそのうちの1つで、シリウスが薦めてくれたこともあって指名したのだった。


「風見様、お待たせしました。これが紹介状になりますのでお店の方に見せてくださいね」

「ありがとうございます」


 紹介状を受け取り、『カガミ精肉店』へと向かった。

 カガミ精肉店は見るからに清潔感を感じる店づくりだった。


「あの…すいません。誰かいませんか?」

「はいはーい。ちょっと待ってくださいね」


 声からすると若い女性であることが分かる。

 待つ間、店内を見て周ることにする。

 普通によく見る豚肉に鶏肉と牛肉の棚の他に、イノシシやウサギの肉も置いてある。そして…モンスター肉も置いてあった。


「た、高い…」


 種類もあるが、その値段だ…。

 1番安いのでも100gで5万円もするのだ。

 そして1番高いモンスター肉の値段は…100g53万だった…。

 何?この値段設定…おかしくない?


「お待たせ~。あら、可愛い冒険者さんたちね。私はこの店の店主、香々美瑠衣子(かがみるいこ)よ」


 店の奥から出てきたのは、エプロンに長靴、手にはゴム手袋をしたポニーテイルの女性だった。

 瑠衣子(るいこ)さんは見た目は20代前半と言った感じだ。


「あ、あの…これ紹介状なんですが…」

「あ、話反らされたわねー…。はい。紹介状ね」

「あの…中身を確認しないんですか?」

「その必要はないわ。『コレ』は単なる買取の許可証のような物だから、私が受け取った時点で許可したってことだもの」

「じゃあ、買い取ってもらえるんですね」

「ええ、もちろんよ。もしかして、買取って欲しいモンスター肉があるのかしら?」

「はい。お願いします」


 そう言って、俺はアイテムボックスからモンスター肉を出す。


「へー…グラスバードの肉。しかも解体済みとは…どれも、完璧に処理されているわね。これなら高く買い取れるわ」

「肉を見ただけで何のモンスターか分かるんですか?」

「まあ、プロだしね。――っていうのは冗談。私の持つ固有スキル…『鑑定(かんてい)』のおかげね」

「なるほど、そのスキルで肉の種類とか解体処理の完成度も分かるんですね?」

「そういうことよ。エルフの子は理解が早いわね。このスキルがあるから私は完璧な買い取り額を出せるのよねぇ」

「だから、シリウスが紹介してくれたのじゃな」

「あら?シリウスの知り合いなのね。だったら、色々と教えてあげようかしら?」

「教えるって何をですか?」

「モンスター肉についてよ」


 そう言った瑠衣子(るいこ)さんは、悪戯っ子みたいな笑みを浮かべていた。


「モンスター肉が高い理由は知っているかしら?」

「それは…美味しいからでは?」

「確かに美味しいのもあるわね」

「あとは…獲れる量が少ないから…とか?」

「確かに需要と供給量は合っていないわね。でも、根本的な理由があるのよ」

「根本的な理由…ですか?んー…なんだろう?」


 モンスター肉についてもそれなりにシリウスやキッドから話を聞いたが、普通の肉よりも美味くて高いってことくらいしか聞いていない。

 あとは解体して持っていけば高く買い取ってくれるってことくらいで…。


「ヒントは、『美味しいってことはエネルギーになる』ってことよ」

「…『栄養素』ってことですか?」

「それも、理由の1部ではあるわね。美味しいってことは栄養バランスも優れているってことだけど…それ以上の物があるのよ」

「…もしかして、活性化…とか?」

「それも1部ね」

「じゃあ、若返る…とか?寿命が延びる…とかですか?」

「それも、1部ではあるわ」

「…他に何かあるんでしょうか?」


 栄養バランスに優れ、それによって肉体が活性化して若返り寿命が延びる…。

 これ以上の何か…待てよ?若返ると言っても幼児化するわけじゃない。…と言うことは、『年齢的な若返り』とは少し違うってことだ。

 つまりそれは…。


「…もしかして、『肉体強化』?」

「そうね。一般に開示されている情報はそこまでよ。でもね…冒険者にはそれ以上の意味があったの」

「これ以上に…ですか?」


 肉体強化以上の…冒険者には意味のあるもの…?

 肉体が強化されると言うことは…?


「まさか…『身体能力UP』とかですか?」

「当たりよ。でも、それも不十分なのよね。聞いたことはあるかしら?人間は本来持っている100%の能力(ちから)のうち引き出せるのはわずか30%だって話」

「聞いたことがあります。30%以上の能力(ちから)を使おうすると肉体が持たないって…。じゃあ、もしかして……」

「そう言うことよ。モンスター肉を食べていくと人が本来持っている能力(ちから)を引き出してくれるの。と言っても、すぐに100%出せるわけじゃないわ。モンスター肉を食べていけばいずれは…ってことね」

「ですが…身体能力を高めてもステータスにはさほど影響がなかったのでは?」


 ゼノの言う通り、身体能力とステータスは比例しないことはシリウスたちの授業で習っている。

 だとしたら、どういった影響が出ると言うのだろうか?


「そうね…。君たちに分かりやすいように数値で教えてあげるわね。例えば攻撃力が10の時、モンスターに与えるダメージはいくつだと思う?」

「普通に考えれば10でしょうが…」

「それだったら聞かないわよね?攻撃力が10の時、モンスターに与えられるダメージは『3』よ」

「なるほど…30%しか与えられないと言うわけですね」

「そう言うことね。数値に例えると『3』しか与えられないのか?って思うかもしれないけど、ちゃんと弱点を突いたり生き物の急所に当てれば倒せるでしょう?」

「そう言われればそうですね。でも、そう考えると、100%の能力(ちから)を引き出せるようになるってことは凄いことなんじゃあ…」

「ただ凄いんじゃないわよ。そうね…もう1つ例えると、アスリートと呼ばれる人たちが出しているは何%だと思う?」

「そうですね…50%くらいでしょうか?」

「いいえ、答えは31%。つまり、1%しか限界を超えていないのよ。どう?これで身体能力を上げることで得られる能力(ちから)の凄さが分かったんじゃないかしら?」

「い…1%?アスリートの身体能力で限界を1%しか超えてないって…」


 まさに驚愕の事実。

 これは、モンスター肉を食べるべきだろうな。


「で、どうする?どのくらい売るつもりかしら」

「グラスバード、2羽分でお願いします」

「分かったわ」


 『手羽先』に『手羽元』、『胸肉』と『もも肉』に『ササミ』、『砂肝』と『レバー』を2つずつ渡す。

 すると、瑠衣子(るいこ)さんが『鑑定スキル』で見ていく。


「『手羽先』は2つで10万、『手羽元』は2つで12万、『胸肉』は2つで36万、『もも肉』は2つで46万、『ササミ』は2つで18万、『砂肝は2つで12万、『レバー』は2つで16万だから合計で…150万になるわね」

「ひゃ…150万?」

「え…本気(マジ)で、ですか?」

「凄いのじゃ。たった2羽分なのに…」

「それだけ解体処理が完璧だったってことね。例えアイテムボックスに仕舞ってあったとしても、これが血抜きだけだったら1羽で50万、血抜きすらしていないと20万くらいね」


 アイテムボックス内では時間の流れは止まっているのに、こんなにも差がある。

 多分だが、自分たちの知らない『何か』があるのだろう。

 ただ言えることは、解体すれば『高値がつく』と言うことである。


「で、売るってことでいいのかしら?」

「お願いします」


 150万円を受け取り、俺たちはホクホク顔で店を出るのであった。

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