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地球異世界で冒険をしよう!  作者: AZ
第1章 『フィールドデビュー編』
10/33

合宿⑤―結実―

 合宿後半の1週間が始まった。


 まずは、戦士の鍛錬として、『槍』と『斧』の使い方とその実践。

 『斧』での総当たり戦ではフィリィの圧勝で終わったが、『槍』での総当たり戦では意外にも光太(こうた)に軍配が上がった。リーチの長い槍を使っての戦いは、間合いを取りやすく力押ししてくるフィリィを翻弄できたと言うわけだ。


 魔法使いの鍛錬では『水圧球(ブラスト)』と『土礫(バレット)』での的当て。

 有効距離を確かめ、午後は『マナポーション』で魔法力を回復させたのち、動く的を当てる実践的な鍛錬をした。


 無手の鍛錬では、格上のキッドを相手に実践をただ繰り返す。

 総当たり戦ではフィリィの圧勝なのは今更だが、それ以上に驚かされたのはフィリィは一撃に(こだわ)らずに相手の弱点を探りながら戦うことに重きを置いていた。

 これには、光太(こうた)やゼノも学ぶことが多かった。


 治癒使いの鍛錬では、『棍棒』を使ってキッドと実践をしていく。

 無手の時は寸止めだったが、棍棒では回復魔法もあるのでかなり実戦に近い形式での鍛錬となった。


 狩人の鍛錬は、より大物狙いの狩りが中心となっていた。

 長野県では深刻なニホンカモシカの増加を抑えるため、猟が解禁となったのだが成果は今一つである。

 そこで、冒険者にも『サブクエスト』として狩りの仕事が舞い込むことがあるのだ。

 今回はそれを受けてのニホンカモシカ狩りを決行。10頭を狩ることに成功したのだった。

 ちなみに、光太(こうた)は3頭でフィリィは1頭をやっと狩れたのだった。


 冒険者として始める最初の職業を決める日が来た。

 ゼノは予定通り『魔法使い』を選び、フィリィもまた『無手』を選んだ。

 2人の選択を聞き、光太(こうた)は『戦士』を選択した。


「問題は装備する武器だけど…通常は短槍にして、あと短剣も持っていたほうが良いと思うんですが?」

「その選択は間違っていないな。明日のOFF日は装備品の買い出しに行くぞ」

「ですが…資金が?」

「それなら大丈夫ですよ。これは『我々』からのプレゼントと言うことですから」

「ま、と言っても最低限の物しか買ってやれねえけどな」

「それでも十分ですよ」

「だね」

「ありがたいのじゃ」

「それはそれとして…だ」


 明日の予定が決まったところで、改まったように真面目な顔になるキッドとシリウスがいた。


「パーティのリーダーだが、俺たちは光太(こうた)を推薦したい」

「え?俺ですか?」

「リーダーにも色んなタイプがある。圧倒的な強さでパーティを引っ張ていくカリスマタイプ。冷静沈着にパーティを導いていく知性派タイプ。そして、自分を押し殺しても仲間の個性を惹きだす自己犠牲派タイプなどがあります」

光太(こうた)はさしずめ『まとめ役タイプ』だな。パーティ全員の意見を聞いてまとめ上げていく。理論にばかりとらわれず、時には感覚を優先する柔軟性を持つ臨機応変性があるのも特徴的だな」

「強い個性を持った仲間をまとめていくのは自己犠牲派かまとめ役タイプが理想的ですからね」

「褒めてもらえるのは嬉しいんですが…美化しすぎてませんか?」


 正直なところ、自分にそこまでできるか疑問しかない光太(こうた)

 まあ、多少は周りのことを考えてはいるが、まとめていると言うほどには思えなかったからだ。


「この2週間の3人の行動を見ての評価だ。多少の見込みは入れているが過大評価じゃない」

「で、でも……」

「2人はどうだ?反対意見があれば聞くが?」

(わらわ)には反対する理由はないのう」

「僕もだ。と言うより、僕らにはリーダーは合わないだろうな」

「そうじゃのう。前に出るのは好きじゃが、指示を出すのは苦手じゃ」

「僕は、どうしても理論に偏ってしまうところがありますからね。知識に頼りすぎるのは怖い気がするので…」

「う~ん…2人が良いならやってみるけど……期待しすぎないでくれると助かる」


 正直、自分をそこまで信頼できていない光太(こうた)

 それでも、2人が頼ってくれるならやってみようと思ったのだ。


「決まりだな」

「大丈夫。君らしいリーダーを目指せば良いんですから」

「はい。頑張ります」


 リーダーが決まったことで、光太(こうた)たちを引き連れてキッドたちは市役所に向かった。

 パーティ登録をするためである。


「パーティ名はどうしますか?」

「仮登録で、『ルーキーブレード』で頼む」

「…よろしいんですか?」


 キッドが言った言葉を職員が俺たちに聞き返す。

 パーティ名なんて決めてなかったし、仮登録なら…と、ゼノとフィリィに視線で確認すると頷いた。


「お願いします」

「分かりました。本登録の時にはまたいらしてください」

「はい」

「では、こちらの用紙にパーティメンバーの名前を書いてください」


 代表して、俺が用紙に名前を書く。

 パーティ名のところには職員によって『ルーキーブレード(仮)』と書かれていた。

 書き込んだ用紙を渡し、市役所を出る。

 そこで、俺はキッドに尋ねることにした。


「あの…『ルーキーブレード』って名前なんですが…?」

「ああ、あれは、俺たちが冒険者として初めてパーティを組んだ時の名前だ」

「懐かしいですね…。俺とキッドと秋太郎(しゅうたろう)とで組んだ時のパーティ名」

「使ってよかったんですか?そんな大事な名前…」

「仮だしな。パーティ名は改めて3人で考えろよ」

「…分かりました」


 帰って昼食を取った後は、モンスターフィールドについての授業が行われた。

 モンスターフィールドは中央に進むにしたがって、強力なモンスターが出るようになる。

 モンスターフィールドにはフィールドエリアが存在する。

 『草原フィールド』や『岩場フィールド』など幾つかのフィールドに分かれているのだ。

 そして、このフィールドにはモンスターのテリトリーも存在している。

 テリトリーが決められてあるので、一定の場所に踏み入れない限り新たなモンスターは現れない。

 大体1つのテリトリーに対し、1~3種類の決まったモンスターしか出てこないことも確認されている。

 広さにもよるが、1つのモンスターフィールドに5~7のフィールドエリアとテリトリーがあり、中央にいるフィールドボスを倒すことで倒した者の所有物となるように『設定』されている。

 ただし、ダンジョンがあるモンスターフィールドはフィールドボスを倒しただけでは攻略されたとはみなされず、ダンジョンを攻略して初めて攻略完了となるのだ。

 しかし、ダンジョンは普通のパーティで攻略できる様な場所ではない。

 小型ダンジョンでも、少なくとも20人以上の冒険者でないと攻略できないほど難易度が高いのだ。


「だから、ダンジョンのあるモンスターフィールドでは活動しないのが暗黙のルールになっています」

「どうしてもって思うなら大規模パーティになってからってことですか?」

「そうですね。お薦めはしませんが、どうしてもと言うならそうなるでしょう。ですが、正直に言うとダンジョンのあるモンスターフィールドを攻略するだけの価値はありませんよ」

「え?それってどういうことですか?」

「ダンジョンを攻略する利益の問題です。元々、ダンジョン攻略は断絶した国交を復活させるために政府が必要としたからなんです。ですが、実際のところダンジョンは攻略するよりもダンジョンモンスターを倒して得られる素材の方が利益的価値があるんだ。特に小型ダンジョンの場合はね」


 小型ダンジョン攻略に必要な人数が20人以上だとすると、中型ダンジョンには100人体制で挑むのが今のところの定石である。

 しかも、攻略にかかる期間は小型ダンジョンで3ヶ月ほど。中型ダンジョンになると半年はかかるのだ。

 ハッキリ言って、ダンジョン攻略は人件費や食費、野営用具費など予算がかなりかかるのだ。

 しかも中型ダンジョンを攻略して国交が復活しても、軽トラが1台通るのがやっとなのだ。

 正直、国の要請でない限りダンジョン攻略は誰もしたがらないのが普通なのだ。


「なるほど、確かに攻略するよりもダンジョンモンスターを狩る方が実質的に利益があるわけですね」


 特にダンジョンモンスターから出る素材は希少価値が高いので高値で売れるのだ。


「それでは、これにて合宿の全日程を終了します」

「明日は買い物を済ませたら合宿の総仕上げをするからな」


 たった2週間だが、充実した合宿だったと感じる3人。

 ここで学んだことは、何よりも代えがたいものになったのは確かだった。

ついに合宿終了です。

次回はついに冒険者としての第1歩を踏み出します。

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