プロローグ1
西暦2037年――。
突如として起きた『異変』によって、一夜にして地球はそれまでの世界とは劇的に変化をした。
まず、見慣れない地形が増えた。
昨日まで、隣にあったはずの見慣れた風景が一変し、森や平原などのフィールドが広がっていたのだ。
つまり…簡単に言うと地球自体が大きくなったと言うことだった。
それでも、混乱とまでの騒ぎにならなかったのは各国の主要都市はそのまま残れたことや、何故か陸路に関しては交通機関に影響がなかったことが大きかった。
ただし、空路と海路にはモンスターが出たため、陸路で繋がっていないところ以外は国交が断絶してしまったのである。
あと、情報ツールとしてネットや携帯などにも影響がなかったことは幸いと言えた。
次に変わったのが、ファンタジーゲームなどでは定番の『エルフ』や『ドワーフ』、『獣人』などの種族現れたことだ。
彼らは独自の『習慣』を持ち、多種少数族でありながら文化も持ち合わせていた。
幸いなことに何故か全世界が共通語になった。
あと、俺たち先住民は彼らの『存在』をすんなりと受け入れていた。
それがまるで当たり前のように…だ。
そして、新たに増えたフィールドに『モンスター(魔物)』が出現したことであった。
何故か都市・町・村など人々の暮らす場所に現れることはなったが、1番の問題は銃器が一切使えなくなってしまったのだ。
と言うより、現代兵器が全く機能しなくなったのだ。
つまり、今まで当たり前にあった紛争も突如として終わりを告げたことを意味していた。
戦う術を無くしたかに思えたが…ある偶然から人々はモンスターと戦ことができる『条件』を知ることになる。
それは、『ジョブ(取得職業)』と呼ばれる特殊な職業を取得することにあった。
通常での格闘や武道ができてもそれらは『ジョブ(取得職業)』としては認定されず、全ての人々は通常では何の職も持たない『ノーマル』に位置付けられていた。
モンスターと戦う以外の…今までの職業についている者は全て『ノーマル』と位置付けられ、通常通り働くことはできた。
スポーツなどで起こるルール上起こり得る怪我などはあるものの、基本的には人を傷つける行為はできなくなっていた。
では、どうやって『ジョブ(取得職業)』を得られたのか?
それは…、
「ステータス・オープン!」
いつしかふとネット上で『モンスターがいるなら戦うのは剣か魔法じゃね?』や『だったらレベルもあんじゃね?』という声が上がった。『ステータス・オープンの言葉でステータスが見れたりして…』に続き『やってみたら…ステータスが頭に浮かんだ』と言う声が上がり始め、ぽつりぽつりと同じような事象が起きたとの報告が上がり始めた。次第に爆発的に『ステータス』の存在が明るみになったのである。
そして…ステータスの表記は以下のように書かれていた。
氏名・・
年齢・・
ジョブ(取得職業)・・
LV・・
HP(生命力数値)・・(00/00)
MP(魔法力数値)・・(00/00)
SP(技能力数値)・・(00/00)
AKT(攻撃力)・・
DEF(防御力)・・
AGI(素早さ)・・
MAT(魔法攻撃力)・・
MDF(魔法防御力)・・
技能スキル・・
魔法スキル・・
固有スキル・・
とこんな感じのもので、
まさにゲームでよく見かけるモノであった。
詳しい説明は後にして…まずは、ジョブ(取得職業)をどうやって得られたかと言うと…。
ジョブ(取得職業)の部分を脳内でクリック(押す)という認識をすると、脳内表示に追加として、
ジョブ(取得職業)
―基本職業(初級)-
『ノーマル』…民間人。今までにある職業ができるが、基本的に人を傷つける行為はできず、モンスターと戦うこともできない。
『戦士』…近接攻撃を主体とした『短剣』『剣』『短槍』『片刃斧』など片手で使える武器と片手で持てる盾のみ扱える職業。技能スキル…『初級剣技』、『初級槍技』、『初級斧技』を取得できる。
『無手』…身体を使った肉弾戦を主体とした武器を一切使わない職業。技能スキル…『初級体術』、『初級武術』を習得できる。
『狩人』…遠距離攻撃を主体とする『弓』、『投げナイフ』、『ブーメラン』のみ扱える職業。技能スキル…『初級弓術』、『初級投擲術』を取得できる。
『魔法使い』…後方支援攻撃を主体とする攻撃魔法を使う職業。『杖』を扱うことができる。魔法スキル…『初級攻撃魔法』を取得できる。
『治癒使い』…中距離攻撃・回復を主体とした回復系魔法を使う職業。『棍棒』を扱える。技能スキル…『初級棒術』と、魔法スキル…『初級回復魔法』を取得できる。
の6つの項目からジョブ(取得職業)を選ぶことができたのだ。
『ノーマル』以外のジョブ(取得職業)を選ぶことで、モンスターと戦うことができるようになり、スキルを覚えられるのだが…・スキルをマスターせずにジョブ(取得職業)を変更するとスキルが消去されてしまう。スキルをマスターすることでジョブ(取得職業)を変更しても使うことができるようになるので、使える武器も増えるのだ。
また、ジョブ(取得職業)は増やすことができるらしいと予測されているが、増えたという確実な情報はまだない。
スキルは、使うことやモンスターとの戦闘によってスキルレベルを上げることで取得できるようになる。
スキルレベルは通常のレベルとは異なり、言ってみれば熟練度のようなものだと考えられている。
こうして、人々は戦う術を身に付けられるようになったのだ。
ただし…『なった』と言うだけで本格的に戦えるようになったのは5年後であった。
これには理由があり、すでにこの世界では旧世代の武器がほとんど作られていないということ。
モンスターと渡り合える最低限のレベルが10はないといけないというのがネックだったのだ。
さらに第1の異変から2年後。
新たな異変が起こった。
モンスターダンジョンの出現である。
その言葉通り、モンスターの巣窟と化したダンジョン。
地下へと下がっていく『洞窟タイプ』と逆に登っていく『タワー(塔)タイプ』の2種類に大きく分かれたこの『モンスターダンジョン』は、いろんな意味で人々に衝撃をあたえた。
しかも、このダンジョンに現れるモンスターはフィールドには存在しない…要するにダンジョンだけに出現するモンスターであることが判明した。
そして、次の階層に行くためには『各階層ボス』を倒さないと進めないことも分かった。
ダンジョンには階層の少ないモノと大きいモノがあり、少ないモノは1階~5階程度、大きいモノでは10階以上あることが確認されている。
小さいダンジョンが攻略されたのはさらに2年後のことで、最深部(または、最頂部)のボスを倒したことでモンスターは消え去り、また不可思議な『魔法陣』に踏み込むと各国のどこかに通じることが分かったのだ。
そこから1年後、幾つかの小さいダンジョンが攻略され、『日本―ロサンゼルス』、『日本―ロンドン』、『日本―ドイツ』、『日本―タイ』間が行き来できるようになったのだった。
ただし、移動できるのは人のみで荷物的なもので言えばリュックサックのように背負るタイプの物だけであった。
ちなみに手持ちのアタッシュケースのタイプはなぜかダメだった。
異変から5年が経ち、ある程度鎮静化したものの問題は増加していくことになる・・。