第2話
第2話
「いやまさか爆発するすとは思ってなくてよ……」
「……、いいから早くそのバケツ持っていってよ」
キーロが投げつけた爆弾は川に飛び込んだときに完全に湿気ってだめになってしまったものだったのだが、何故か爆発した。
爆弾といっても殺傷能力はなく、大きな音をたてる音爆と呼ばれるものであったので怪我をするようなことは無かったのだが、近くにいたメイドさんが音に驚いたのか手に持っていた料理をケビンさんにむかってぶちまけてしまった。ちなみにそれはケビンさんの遅めの昼食だったそうだ。
メイドさんは料理を作り直しに、ケビンさんは水を浴びに、僕達はぶちまけられた料理の掃除、ああ、めんどくさい
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「そういえば、そろそろオーダーしておいた武器ができてるんじゃないか?」
「あ、たしかに。どうせやることもないし武器屋とか寄っていこうか」
ケビンさんに小言を言われる前に本部から逃げ出した僕たちは4日後の戦い(荷物もち)に備えるべく村をまわることにした。
「おっちゃーん、俺の頼んだ武器完成してるかーー?」
「おおっキーロにエルスか、今ちょうど仕上げをしてるところだからもう少し待ってくれんか?」
ちなみに僕は兵士のわりに力がそんなに強くないので短刀と弓をメインで使うことにしている。キーロは無駄に力があるからそこそこの大きさの剣に、場合によっては槍も使う。
「ほらよ、先にエルスの短刀だ、前のより少し短くなったがかなりの軽さと切れ味だと思うぞ」
「うわ、たしかにこれは使いやすいかも。縦に入った赤いラインもかっこいいね」
「ところでおまえさんはまだ弓矢を自分で作ってんのか?矢なんてうちでも結構安く作れるが……」
「いや、大丈夫だよおっちゃん。寝る前に自分で矢を作ったりするのが好きなんだ」
「ほーん、まぁそれならいいが……、大量に必要になったらいつでも言ってくれよな」
「うん、ありがとう」
「ほれキーロ、待たせたな。お前の剣だ」
「うおおっ、めっちゃいい感じじゃん!やっぱおっちゃんいい腕してんなー」
「ははっ、そりゃ最前線で武器を作り続けてるからな!ほれ、おまけにこれもやるよ」
「ん?なにこれ?」
「最近作り始めたんだが目眩まし用の爆弾だ。前からあるやつに比べてかなり効果的になったとは思うぞ」
「前からあるやつとどうちがうの?」
「うーーーん、まぁ使ってみてのお楽しみだな。ちゃんと目を閉じてから使うんだぞ」
「ふーん、まぁありがたく貰っとくわ!サンキューおっちゃん!」
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武器屋を後にし、道具屋などまわった僕達は兵士寮へと帰ることにした。
「グルマさーん、ご飯おかわりで!」
「あいよー!そういえばキーロにエルス、ゴブリンの巣を見つけたそうじゃないか!」
「まぁねー、ここにきてまだ1年だけどもう2つも見つけちまったよ」
「そのぶん俺ら先輩方にもよくお世話になってるけどな」
「うおわっ、トマスさん?!いつからそこにいたんすかっ」
「今ちょうどお前らが見つけた巣を確認して帰って来たところだ、巣を見つけてくれるのはありがたいんだがもっと新人らしく村周辺のはぐれゴブリンを狩るとかな……」
「だって地味じゃないすか!それにはぐれゴブリンとか知性が全くないからなんか殺しにくいというか……」
「だからといって月に1回のペースで森の中でゴブリンに追われているお前らを助けるこっちの身にもなってみろよな……全く……」
「僕も安全に村周辺で見廻りをしていたいんですけど、キーロがすぐに……」
「いやでも、やっぱり危険な状況下でないと成長しないですから、俺はやっぱ森の中にいきたいんですっ!」
「まぁ森の奥の方に行かなければ別にそこまで問題はないんだけどな、気を付けてくれよ本当に」
「心配かけてしまってすみません……」
トマスさんはこの村の住民の中でも古株だ。村ができてから最初にハニバルの地の施設から派遣され、特に死者が多かった最初の5年間を生き抜いてきた。
「そういえば次の巣の討伐作戦に参加するらしいな」
「荷物もちらしいですけどね、ケビンさんが経験を積めって」
「1年だかそこらの新人に討伐作戦に参加させてもらうとかケビンさんも思いきった判断だよなぁ」
キーロは食堂のおばちゃんことグルマさんと無駄に仲が良いので2人で楽しそうに話している。
「お前達のデビュー戦なら俺も参加したかったなぁ、ポークルクの街周辺に知性のないウルフの目撃情報が寄せられていて明後日から数日間港町暮らしだ」
「ポークルクの兵士だけじゃ足りないんですか?」
「いや、まずポークルクに兵士がほとんどいないんだ。東西を山に囲まれ、北はファミール湖、唯一大きな戦闘があるとすればここ、ケルミナの村と南のゴブリンの森だからな。後、ハニバルの地でもまたちょっとした騒ぎがあったらしく兵士を派遣したせいで街の警備兵ですら足りていないらしい」
「どこも大変ですね……、やっぱ唯一安全なのは都だけなんでしょうか」
「まぁなー、都で他種族と戦闘があったとか聞いたこともないし安全なんだろうなぁ。攻め込もうにも高い山脈に囲まれてるしまさに自然の要塞だ」
「都ってどんな場所なんでしょうね、都での捨て子時代の記憶がないから想像することしかできないです」
「俺もハニバルの地出身だしなぁ、あ、そういえば今度の討伐作戦は都から腕利きの兵士がくるらしいぞ」
「えっそうなんですか?」
そんな重要なことケビンさんは何も言っていなかった。
「しかもかなりのエリートだとか……、失礼だけはないようにな。都の人間がどんなものか分からんが」
「まぁ腕利きのエリート兵士なら僕達新人の出番は全くなさそうですね……」
トマスさんはケルミナの警備兵と話し合うことがあるとかですぐに出ていってしまった。キーロは同期の冒険者仲間と騒いでいる。
「部屋に帰って矢でも作ってようかなぁ」
誰にも聞こえない独り言を呟いて僕は食道を後にした。
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その後2日間は特になにも起こらず僕は休暇を満喫した。
満喫したといっても2日目の昼にキーロが警備兵の仕事を手伝おうぜ、とか言いはじめて結局働いていたが。
この村の兵士は大きく2つに分けられる。
1つが冒険者と呼ばれ、ゴブリンの領域へに行き情報を集め場合によっては大人数で攻めいる。
もう1つが警備兵、その名の通り村の周辺警備が主な仕事となるがゴブリンの領域に攻めいるときに冒険者の支援をしたりもする。
僕達新米兵士も一応冒険者と警備兵と分けられるが、最初のうちは村周辺の見廻りとはぐれゴブリンを狩るのが主な仕事となるのであまり変わりがない。ただキーロは新米のくせにすぐに森の中の探索に向かってしまう。
そんなことで2日目の午後は新米兵士として本来やるべき仕事をこなし、迫るゴブリンの巣討伐作戦へ向けて気持ちを高めていった。
そして3日目の朝、事件は起きた