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処女厨の男

作者: 神成泰三

初めに言わせて貰えば、私の顔は整った顔である。これは決して自慢などではなく、実際に私が高校生の時、同じクラスの女生徒からそう言われたからだ。お世辞ではないか?

と言われてしまえばそれまでではあるが、私は都合のいい現実が好きなので、その言葉を鵜呑みにする事にしたのだ。



しかし、顔が整っているからといっても決して淡い恋物語が生まれるわけでもなければ、壮絶な修羅場をくぐり抜けるような経験をしたことがあるわけでもない。つまり何が言いたいかと言えば、私は女性にモテた経験が一秒もないのだ。顔が整っていたとしても、それがイケメンかどうかは、また違う話だと言うのだから世の中は不思議だ。顔で人は判断されないのである。


だが、なぜモテないのかと聞かれれば、それは安易に想像がつく。それは、私が処女厨だからだ。


ここで言わなければならないのは、処女厨は処女厨でも、女性に軽蔑的な意識を持っている、または自身の自尊心が尊大に膨れ上がっている類の処女厨ではない。極端な話、私は女性が怖いのだ。どう接すればいいのかわからないのは言うまででもなく、その恐怖と真っ向から対立してでも勝ち取るべき物が果たしてそこにあるのかと言い訳を並べては、つい逃げてしまうのだ。


特に怖いのは、男慣れした女性だ。例えるなら、人間は怖くないと食人を繰り返す熊並みに怖い。彼女らはなんら遠慮もなく、私のテリトリーに侵入し、あまつさえ会話を求めるからだ。私は、ある程度の距離感を求めているのに、それを理解してはくれないのだ。もっとも、その原因もまた、自らにあるのは承知ずみである。



そんな間抜けな私にも、友人はいる。その友人には、そんな性格で充実した人生を送れているのかと聞かれる。はっきり言えば、充実した人生は送れているのだ。私の両親には、それなりの稼ぎがあり、私の祖父は医者だったので、かなり裕福な家に育った。つい最近、両親からはBMWを私に買ってくれたほどだ。BMWはいい、あの直6エンジンの音は私の不安をすべて吹き飛ばしてくれる。そう、私は物で満足するほど、安っぽい人間でもある。


そんな私ではあるが、辛うじて、話せないこともない女性がいる。それは、処女の女性だ。これまた高校生の時、かなり整った顔立ちの美しい女性が、同じクラスにいたのだ。その女性とは、特に接点はなく、また特に関わろうとしなかったが、ある日、その女性にたわいも無い世間話をされた。その時、私は普通に会話ができたのだ。なぜなら、私の望んでいる距離感で接してくれたからだ。その日から、彼女と私は日に日に会話をするまでには縮まった。しかしここで疑問が残る。あんなに整った顔立ちの女性が、何故に処女だったのか。こんな言い方をすると失礼に値するが、あの顔立ちならば、男に困ることは無かったはずだ。その疑問を感じながら、日々突き詰め考えていくと、ある一つの結論に至った。それは、私と同族なのではないだろうか?

という結論だ。しかしこの結論には矛盾がある。もし私と同族であれば、そもそも私に話しかけたりなどしないということだ。では何故彼女は話しかけてきたと言うのだろう。私には解らない、解らないが、そんなことを考えているうちに彼女は処女ではなくなっていた。徐々に男慣れをしていく彼女に、私はいつものように距離を置き、そのままだ。


世の淑女の皆々様よ、処女厨など気持ちが悪い。排他的、差別的だと感じるのは一向に構わないし、その通りだと思う。だから、そんな男を見つけたら、どうか距離を取り、そしてほっといて欲しい。私は、それで充分なのだ。


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