プロ・・・・・・ローグ
プロローグというか顔見せです。
「それはダメだ!」
デココの制止の声が飛んだ。
「やめるんだ朔! 魔銃から手を離せ!」
「悪い。リナとの約束なんでな」
制止を退けて、朔は銃を両手でしっかりと握った。途端に、両腕に酷い激痛が走った。間違いなく、身体が拒否反応を起こしている。
朔は痛みをこらえる為に小さく歯を食いしばりながら、
「ここで俺が全て終わらせる。どうしてもというなら魔法で奪えば良い」
「くっ!」
デココが両手を前に翳す。迷いなく奪い取る気だ。しかし次の瞬間、その両腕が真下からの斬撃に刎ね飛ばされた。
「がっ! なっ、誰が……!」
「本当に悪いわね、デココ」
突然の攻撃にデココが驚き、周りを見回すと、フィアが小太刀を振り抜いた姿勢のままデココを見ていた。
腕を切り落とされても平然としているのは、やはり彼女が大分特殊だからだろう。普通ならそんなに悠々とはしていられまい。
「あいつの覚悟を無駄には出来ないわ」
「何言ってるの! まだ間に合う! 今すぐ手を銃から離せば……」
「間に合わねえよ」
朔が小さく呟く。その腕は既に紫色に変色し始めていた。魔力に侵されている証拠だ。
それを見たデココがさっと顔色を変える。
「……ダメだよ」
「ティア。居るか」
「ダメだよ朔! やめてよ!」
朔はデココを無視して、誰かに呼び掛けるように言う。朔の横の闇がゆらりと揺らいで、小さな少女が姿を現した。
少女は口を開くと、
「…………もちろんだよ、お兄ちゃん」
「二分だけで良い。痛覚を消してくれ。それと、視力と反射神経の向上を頼む」
「…………お安いごよう」
キィン、キィン……と魔方陣が展開する高い音が響く。朔の身体が青白く発光し始めた。
それと、と朔が続ける。さっきからずっとフィアやデココのその後ろで沈黙を守っていた、白魔導士の少女に向けて、
「サリィ。回復をよろしく頼む」
「分かりました。回復は全力を尽くします。ですから、」
「分かってる。死なないよ」
さて、と朔はスコープを覗き込んだ。
聞いた話によれば、撃ち出される弾は霊封系の特殊弾。弾速は面白い事に音速の十倍だ。実に愉快だ。反動だけで死にそうだ。というか、どんな炸薬を使っているのやら。銃身もよく耐える。どんな材質で、どんな造りなのやら。
そして、一発。一発だけ叩き込めれば勝ち。外せば負け。実にシンプルだ。シンプルなのは良いことだ。
ジャギッ、とハンドルを引いて、薬室に弾丸を送り込む。
こうしている今も、視力が急速に落ちていくのが分かる。ギリギリ、ティアの付与魔法で持ちこたえているような感じか。
でも構わない。一発、この一発だけ撃てれば、最早どうなっても構わない。
パキパキパキパキ、と小気味良い音と共に、右目の周囲が凄まじい速度で朽ちていく。皮膚がささくれ立ち、どんどん乾いていく。異形と化していく。
それでも朔は冷静に引き金に指を掛けて、小さく息を吐く。この一撃に全てを懸ける。正真正銘の、全身全霊。
「頼む――――!」
引き金がゆっくりと絞られていく。
轟音。
そして朔は、たった一発を撃った。その、右目の視力と引き替えに。
その全ては、たった一人の少女の為だった。
To be continued……
この話はプロローグですが、本編とはあまり関係無いです。
登場キャラを顔見せさせたかっただけ。なのでプロローグ(偽)って感じですね。
何にせよ、読んでくれてありがとうございます。
『この小説続いたらいずれこんな感じの話も書きたいなー』っていう妄想ストーリーの見せ場を少しだけ書きました。
ゆえに、このプロローグ(偽)が実際に本編の一部として登場する予定は無いですはい。