9回目の恋愛
「はぁ...またかよぉ.....。」俺は空き教室の窓際で、とても大きく溜息をついた。
高校生活始まって約半年、今や学校中が文化祭の話題で盛り上がる中、まるで別のセカイに取り残されているかのように感じる。外を見れば野球部がグランドでバッティングしていて、すぐ近くでサッカー部が走っていたりといつもの放課後の光景だ。その中でも目に付いたのは、楽しそうに会話する男女の姿だった。カップルが下校してるのに俺は....9回目の失恋をした。
30分前、授業で出された課題のプリントを忘れことに気づきA組の教室に戻ると、窓際に一人の女子生徒がいた。童顔で、髪はボブカットで色は茶色でどことなく清楚という雰囲気感じるいかにもどこにでもいるようなそんな女の子。しかし、俺は恋に落ちた。俺には、夕日に照らされた彼女は、学園のアイドルしか見えなかった。俺は彼女のこと知っていた。彼女は、一年D組 佐々木夏海 中学のころから一緒でお互い面識があり、中学のときはもう少し地味だった印象があった。高校になって可愛くなっているのもあり、俺は一瞬で恋に落ちた。
そしてすぐに俺が来たことに気づいたらしく、彼女は笑いながら
「あれ?久しぶり~山田君じゃん。どうしたの?」そう問いかけてきた。
ドキドキしている気持ちを無理やり抑え、笑いながら
「おぉ、久しぶり!!いや~プリント忘れちゃってさ~。てか、佐々木さんこそ、どうしたの?」
我ながらよくできた爽やか笑顔だと思う。いやホンとマジで。
彼女は少し照れながら「まぁちょっとね」そういった。俺はここで会話を途切れぬよう必死に話題を探した。
「てか、佐々木さん変わったね、なんかめっちゃ可愛くなっててびっくりしたよ。」もちろん爽やかな笑顔で。
彼女はくすっと可愛く笑い「ありがとう。山田君は全然変わらないね。」
笑った顔可愛いが疑問は浮かんだ。やっぱり、何でこの教室にいるのだろう。彼女はD組のはず、すぐさま彼女に質問した。
「佐々木さん、もしかして誰かと待ち合わせ?」
夕日のせいか、彼女はほほを赤らめて、俺の目をまっすぐに見て
「う、うん。今日は告白しに来たんだ...。」
うん?おいおいなんだこの展開、まさか告白されるんじゃね?このシチュエーション、これ脈アリでしょ!!これは高校生活エンジョイしろと神からのチャンスなのかもしれない。そう今しかない!!!
ドキドキはさらに増し、変な汗まで出始めた。もしかしたら、顔が真っ赤になっていたかも知れない。俺は勇気を振り絞り、
「佐々木さんは、今彼氏いる?」
「今は、いないかな」
照れくさそうに彼女はいった。これは、絶対来たよ。『今は』ってこれから告白するって意味でしょ?これは来た!
しかし、またふと疑問が思い浮かんだ。
(女の子からの告白ってどうなの?)
別に悪くはない。いや、むしろ嬉しいだけど、何かこう俺のには似合わない、そんな違和感が襲い掛かってきた。
俺は今まで自分から告白してきた。そんな俺が女の子からの告白を待つのか・・・そんなの俺じゃない!彼女もそんな俺を好きになったわけじゃない!俺は決心した。告白しようと。
「佐々木さん」
「うん?」
「俺さ、今日佐々木さんみて、やっぱり俺は佐々木さんみたいな女の子が好きなんだなって思ってさ・・・。」
「・・・・・・。」
「俺夏海が好き!俺と付き合ってくれない?」
我ながらすごく、ストレートな告白だと思う。そうここからは夏海と一緒に楽しい高校ライフを・・・・
「ごめん!」
一瞬彼女が何を言っているのかわからなくなった。
彼女は何について謝っているのだろう?
もしかして今日一緒に帰れないとか?そんなの気にしなくてもまた明日があるさ。
「私、A組の海道君のことが好きなの!山田君のことはその・・・友達としか思えないんだ・・・。」
時間が止まった。そう思えた。
また、勘違いをした。そう俺は、9回目の勘違い告白した。
そうして俺が思考停止してる中、佐々木さんは、俺のことをずっと励ましてくれているけど、もう何も聞きたくない。
そんな中、後ろから誰か来る音がした。
「あ、海道君。」
彼女は俺に見せた照れくさそうな表情を海道君にもみせた。そうこれは勘違いだ。
俺はすぐさま、彼女の気持ちを考え無言で教室を出た。たぶん次は佐々木さんが海道君に告白するんだろうな・・・
俺はいつもの誰も使ってない空き教室に向かうことに。