転生
………………。
ここはどこだろうか。
さっきまで家でサブキャラの幼女を作っていたはずなのだが、気がついたら見知らぬところで寝ていた。
あたりを見回すと、ここはどうやら誰かの家のようだった。木造住宅で温かみがあり、家具もいい感じに調和しててなかなか好感がもてる。ここの主人はさぞハイセンスなんだろう。
寝ていたベッドからおりて、少し家の中を様子見してみる。なんか全体的にものが大きいのは、元々のつくりなのだろうか。主人はよっぽどの大男と見た。
しかし…。どうも気になる。というのも、この家の内装がどれもこれもなぜか見覚えがあるからだ。部屋の構造やベッドや机の位置、インテリアなど。オレの家と似ているわけでもないし、遊びに来たこともないと思うんだが…。
とりあえずここがどこか確認した方がいいな。そう思って窓に近づく。さすがに17年も過ごした町なんだから、どの辺かの見当くらいはつくだろう。
そういうわけで窓の外をのぞいて見た、ら。
そこには、一面の雪景色が広がっていた。
「……………は?」
いやいやいやいや。待て待て待て待て。え、なんで雪山の中にいんの?ていうかすさまじい高度なんだけど。人いる気配なかったんだけど。え?誘拐?誘拐からの置き去り?性癖アブノーマルすぎるだろ。いやんなわけないか…。
「と、とりあえず落ちつこ……う……は?」
声を出したほうが気がまぎれるかと思い、独り言を呟いた…のだが。
喉から出てきたのは、かわいらしい女の子の声だった。
…………えーと。
ゆっくりと視線を下げる。なんかすごい嫌な予感がするのは気のせいだろうか。うん、気のせい気のせい。そんな馬鹿な話があるものか。
そして、目に入ってきたものは。
簡素な下着に包まれた、小さなおっぱい。
「……………」
うん。これは。つまり。
「女の子になってんじゃねーかあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
窓に映った自分の姿を確認する。そこにいたのは、まぎれもなくキャラメイクした銀髪幼女だった。
頭の中にありえない仮説が生まれてきて、オレの頬に汗をたらした。
その仮説とは、オレが、幼女に生まれ変わり、”ネクストファンタジア”の世界に転生したというもの―――――――。
ありえない。でも、そうでなければ説明がつかない。
夢?そんな馬鹿な。こんなリアルな夢があってたまるものか。
……しかし、転生した、ということならば、ここは。
「オレの、ゲーム内のホーム…」
そう思ってみてみると、どう考えてもオレのホームだった。これまた数時間かけてつくりあげた内装をオレが見間違えるものか。オレが作ったんだからそりゃハイセンスって思うわ。趣味全開だもの。
「ていうか転生ってまじかよ…」
深刻な心情に似合わないロリボイス。願わくば夢であってほしいが、ためしに顔を殴ってみても目が覚めない。
どうしようどうしようどうしよう。こんなミラクルあっていいものなの?完全に油断してたんだけど。元の世界に帰れるの?これからどうやって生きていけば…。
と、ここまで考えてハッとする。ここはNFの世界。だとしたら、魔法だってあるし、モンスターなんかもいる。いまだ開拓されてない土地、遺跡なんてのもわんさかだ。
どうせ転生したんだから、ここでの生活をちょっと満喫してもバチはあたらないんじゃないの?
そう考えると、なんか楽しくなってきた。いろんな不安とかを置き去りにして、目の前にどんどんロマンが広がっていく。
よし、そうと決まれば。