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第五話「静寂の森へ」

翌朝、俺たちは夜明けと共に、首都アストリアの南門をくぐった。


振り返れば、朝日を浴びて輝く壮麗な都の姿が見える。

だが、俺たちの心は、その光とは裏腹に重い影を背負っていた。


間もなく、ボールスさんが俺たちの「命令違反」を知るだろう。

スキル派のトップ。生ける伝説。

ボールス・ロックウェルの「命令」に、俺たちは背いたのだ。


「本当に、良かったのか」

隣を歩くケイが、誰にともなく呟いた。

彼の表情は、重く険しい。


「ボールスさんを敵に回すような真似だ。今からでも、引き返すなら」

「もう決めたことだろ、ケイ」

俺は、努めて明るく言った。


俺は、背中の背嚢からルナを取り出し、その小さな顔を見つめた。

彼女は、あの夜から機能を停止したままだ。

だが不思議と、その銀髪からは温もりのようなものが感じられた。


「彼女が、俺たちの切り札だ。ボールスさんも知らない、な」

「だと、いいんだがな」

ケイはそれきり黙り込み、周囲への警戒を一層強くした。

エレインは、そんな俺たちのやり取りを、ただ黙って、不安そうな瞳で見守っていた。



街道を半日ほど歩き、道中で遭遇した数匹のゴブリンを倒したところで、俺は休憩がてらガチャのスクリーンを開いた。

ガチャポイント:32 pt

「よし、20ポイント貯まったな。景気づけに単発一回、行っとくか!」

俺がそう言うと、ケイが即座に眉をひそめた。


「やめておけ。そもそも お前は 、昔からカードでも何でも、ギャンブル運がないだろう。SR以上が確定する10連ガチャを引くために、コツコツ貯めておくべきだ」

「ぐっ。正論だが、夢がねえなあ! こういう一回に、奇跡が眠ってるかもしれねえだろ!」

「その「夢」とやらで、 お前が 銅貨一枚残らずスッたのを、俺は この前 見たばかりだが?」

「うぐっ」

手厳しい正論に俺が完全に沈黙すると、エレインが苦笑しながら間に入った。


「まあまあ、アーサー。ケイの言うことも分かります。今は、少しでも力を温存しておきましょう?」

「ちぇっ。分かったよ」

エレインにまでそう言われては、引き下がるしかなかった。


俺はスクリーンを消しながら、ボソリと付け加える。

「だからいつも10連ガチャが引けなくて困るんだよなぁ」


俺たちは再び歩き出し、目的の「静寂の森」の入り口にたどり着いた。

その名が、ただの比喩ではないことを、俺たちはすぐに理解した。

森に一歩足を踏み入れた瞬間、あらゆる「音」が消える。

鳥のさえずりも、虫の羽音も、風が木々を揺らす音すら、何も聞こえない。

まるで分厚い壁に閉ざされたような、不気味な静寂が、俺たちを包んでいた。


「気持ち悪い場所だな」

「ああ。魔物がいる気配すらない。だが、妙だ。静かすぎる」


ケイが盾を構え、警戒レベルを最大に引き上げる。

エレインも、いつでも精霊魔法を放てるように、杖を握りしめた。

俺もいつでも動き出せるように周囲への警戒を強める。


俺たちは、互いの顔を見合わせ、頷き、森の奥へと続く獣道を進み始めた。

遺跡は、この森の中心にあるはずだ。


どれくらい進んだだろうか。

不意に、ケイがピタリと足を止めた。


「来るぞ!」

ケイの鋭い声と、風を切る音が重なった。


「カキンッ!」

ケイが、俺とエレインの前に飛び出し、盾を構える。

彼の巨盾が、飛来した矢を火花を散らして弾き返した。


茂みの中から、ぞろぞろと人影が現れる。

その数は、ざっと見て10人以上。

全員が、くたびれてはいるが、見覚えのある紋章が刻まれた、騎士の鎧を身につけていた。


「やはり、待ち伏せか」

ケイが、忌々しげに吐き捨てる。


「へえ、今のを弾くか。ただの小僧どもじゃねえらしいな」

ならず者たちのリーダー格らしき、顔に傷のある男が、下卑た笑みを浮かべた。


「だが、運が悪かったな、お前ら。俺たちは、この森に入る者は、何人たりとも生かして帰すなと、そう命令されてんでね」


「その紋章。お前ら、王家の騎士か?」

俺は、男の胸に刻まれた紋章を睨みつけながら言った。


「国の騎士が、何の罪もない人間を、理由もなく殺すってのか!」

俺の問いに、傷の男は楽しそうに肩をすくめた。


「理由ならあるさ。ま、死ぬお前らに教える義理はねえがな」

「皆殺しだぁ!」

その号令と共に、ならず者たちが、一斉に俺たちへと襲いかかってきた。


相手は10人以上、しかも元騎士団。


ケイが盾を構え、エレインが杖を握りしめる。

俺も、剣を抜いた。


ヤバい。

本気でヤバい。


だが・・


「行くぞ、ケイ、エレイン!」

俺たちの、命がけの戦いが、始まった。


最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

新人作家の、しきです。


初めての小説執筆で、毎日ドキドキしながら投稿しています。

皆様からの応援が、執筆を続ける、何よりの燃料です!


「まあ、読んでやってもいいか」と思っていただけましたら、

ぜひブックマークと評価で応援していただけると、めちゃくちゃ嬉しいです!

次回も、よろしくお願いします!


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