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【ガチャ】で記憶を失った俺、7年後に再会した親友が「お前が憎い」と復讐者になっていた  作者:
第二章「修羅の修行」

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第二十二話 「血塗られたガチャの結果」

静寂が――

森に、戻ってきた。


俺は、ただ立ち尽くしていた。

手に残るのは、グレンの胸を貫いた短剣の、生々しい温もり。

鼻腔にこびりつく、鉄と血の匂い。

そして、目の前に浮かぶ――無機質な、ガチャのスクリーン。


ガチャポイント:1555 pt


(……クリア、したのか)


ボールスさんから課された二つの課題。

その一つ目――「1000ポイント以上稼ぐ」。

達成した。だが、それは最悪の形で。


俺は、震える指で、スクリーンに触れる。

10連ガチャのボタンが、まるで俺を嘲笑うように光っていた。


(違う)

首を振る。

思考を止めるな。目を逸らすな。

これこそが、俺の犯した罪の、形。


(俺は……人を殺した)


どうしようもなく、重く、覆いかぶさる事実。

この1555ポイントは、その代償だ。


(ならば――この、血で汚れたポイントで、俺は挑む)


俺は、ガチャのスクリーンを睨みつけた。

それは、もはやただのゲーム画面ではなかった。

魂を喰らう“何か”が、奥で嗤っている――そんな「目」だった。


(お前は、これが欲しいんだろ? 人の命の味がする、このポイントが)

(これが、お前の望んだ、結末なんだろ?)


全ての叫びを込めて、俺はそのボタンに指をかける。

そして、スクリーンの奥に潜む“それ”へ向け、言葉を叩きつけた。


「テメェが欲しがっているポイントくれてやるから――代わりに、最高の奇跡を、俺によこせ!」


その瞬間。

スクリーンが、不気味に歪んだ。

ノイズが走り、文字が化け物のように蠢く。

次いで、頭の奥に直接、声が響いた。


《久しぶりだな、アーサー・ベル》


冷たく、昏く、どこか歓喜を含んだ声。

その声に、姿はない。


「……誰だ。声だけ聞こえても、お前のことなんか知らない」


《クク……そうだったな。貴様は“忘れている”のだったか》


スクリーンが、まるで映画のように揺らめいた。

そこに映し出されたのは――グレンとの死闘の光景。

まるで、それが最高の娯楽だと言わんばかりに。


《本来ならば、もっと大きな代償を捧げねば、我は応えん。

だが今回は、特別だ。人の命を犠牲にして得たポイントは、恨みと絶望――最高のエネルギーを孕む。

ゆえに、良いものをくれてやろう》


「……良いもの、だと?」


ふざけるな。

そんなもののために、人を殺したわけじゃ――


《あの時も、良いものをくれてやっただろう?》


その言葉に、息が止まる。

スクリーンには――あの宿屋の光景。

初めて10連ガチャを引いた時の、虹色の輝き。

そして、現れた一体の人形。


(SSR【壊れた自律人形オートマタ】――ルナ)


「……まさか、お前……!」


《さあ、引くがいい》


声が愉悦を帯びる。

10連ボタンが、禍々しい深紅の光を放ち、俺の決断を待っていた。

まるで「早く、そのご馳走を」とでも言うように。


俺は、叫びと共に押し込んだ。


「テメェが欲しがっているポイントくれてやるから――代わりに、最高の奇跡を、俺によこせ!」


閃光。

十枚のカードが、回転し始める。

それぞれが命の重さを問いかけてくるように、金属的な音を立てた。


一枚目――金色の輝き。

確定枠、SR。

(SR【鋼鉄の皮膚アイアンスキン】)

戦闘前、喉から手が出るほど欲していた防御スキル。

だが、心は、まったく動かない。


二枚目、三枚目――N、N、R、N、N……

見慣れたハズレの光が、ただ流れていく。


もう、奇跡なんて起きない。

そう思った――その時。


十枚目。

最後のカードが、ゆっくりと回転を止めた。


キィィィィィン――!


甲高い金属音と共に、スクリーンそのものが震え上がる。

カードから溢れたのは、ただの光ではない。

夜の森を照らす、二つ目の金色の閃光。


SR。二つ目の奇跡。


俺の覚悟が、運命をねじ伏せた証。


現れたのは、一条の漆黒の鎖だった。

禍々しく、それでいて神聖な美しさを湛えた――


(SR【捕縛のチェーン・バインド】)


敵を殺さず、無力化するための魔法の鎖。

……もし、これを少しでも早く持っていたなら。

グレンを、殺さずに済んだのかもしれない。


あまりにも残酷な、神の悪戯。

俺は、二つのSRを前に、ただ立ち尽くしていた。


「――どうやら、貴様は最初の『宿題』の答えを、見つけたようだな」


背後から、低い声。

振り返ると、ボールスさんが立っていた。


彼は俺の隣に歩み寄り、倒れたグレンと、周囲に転がる亡骸を一瞥する。

そして、血に濡れた俺の顔と、ガチャの結果が映るスクリーンを見比べた。

その瞳に、称賛の光はない。

あるのは、深い――憐れみの色。


「おめでとう、アーサー・ベル」


静かに言う。

その声は、祈りにも似ていた。


「今日、貴様は――ヒーローになるための、最初の地獄の門を、その手でこじ開けた」


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