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【ガチャ】で記憶を失った俺、7年後に再会した親友が「お前が憎い」と復讐者になっていた  作者:
第二章「修羅の修行」

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第十三話「遺跡での最初の稽古」

遺跡の中枢ドームは、不思議なほど静かだった。

俺は、瞑想するボールスさんの前に、膝をついたまま、その答えを待っていた。


「俺に、戦い方を教えてください」

俺の覚悟を値踏みするように、じっと俺を見つめていたボール-スさんは、やがて、重々しく口を開いた。

「貴様には、才能がない」

その言葉は、あまりにも無慈悲な、事実の宣告だった。 だが、俺は、ここで引き下がるわけにはいかない。


「それでも、です! 俺は、強くならなきゃいけない。モードレッドに、勝たなきゃいけないんだ!」

俺が、食い下がるように叫ぶと、ボールスさんは、ふっと、その口元に、面白そうな笑みを浮かべた。


「・・良かろう。その目、気に入った。お前に、その資格があるか、試してやる」

彼は、おもむろに立ち上がると、足元に無数に転がっている瓦礫の欠片の中から、一つを軽く蹴り、俺の目の前に転がした。


「朝日が昇るまで、あとおよそ3時間」

「それまでに、その小石を使ってこの俺に一撃でも食らわせてみせろ。剣の使用は禁止だ。それ以外は、何をしても自由だ」


スキル派最強の男に、ただの小石で、一撃を。 あまりにも、無謀な課題だった。 だが、俺にはもう、退路はない。


「・・分かりました。やります」


そのやり取りの間、ケイとエレインは、俺たちのことを見守っていたが、傷と疲労で、もう限界だったのだろう。 いつの間にか、壁際に座り込んだまま浅い眠りについていた。

俺はそんな二人に、ストックからいくつかのボロ切れの布を具現化させ、そっとかけてやった。


ボールスさんは、ドームの中心に、仁王立ちになった。


そこから、1時間。 俺は、足元に転がる小石を、次々と拾っては投げつけた。

真っ直ぐに投げても、指一本でいなされる。

回転をかけて投げても、最小限の動きでかわされる。

フェイントを入れても、見透かされる。


2時間が経過。

汗が、全身を伝う。

息が上がる。

「だめだ、全く当たらない……」

「貴様の殺気が、石の軌道を教えてくれている。それだけのことだ。その足らない頭を使って、よく考えろ」

ボールスさんの、鋭い言葉が突き刺さる。


残り1時間。


俺は、その場に、大の字に寝転がった。

ダメだ。全く、勝筋が見えない。 (頭・・? 思考法・・? ボールスさんは、俺の頭を使えと言ったのか・・?)

俺は手のひらの上のただの石ころを、じっと見つめた。

こいつは武器じゃない。

じゃあ、なんだ?

俺はこの単なる石ころで、一体、何をすればいいんだ・・?


その時だった。

(・・待てよ)

俺の脳裏に、一つの記憶が、閃光のように蘇った。

ルナを再起動させた時のことだ。


あの時、俺が使ったのはガチャで手に入れた(SR【古代の動力炉エンシェント・コア】)。

そして、あの魔石は、この遺跡の動力炉と共鳴して、ルナを目覚めさせた。


(そうだとしたら・・この遺跡のシステムは、俺のガチャから出てきたアイテムに反応するんじゃないか?)


だが、どこを、どうすれば?

俺が、そこまで考えた時、肩の上のルナが、静かに口を開いた。


「マスター。何か、お探しですか?」

「ルナ! そうだ、お前なら!」

俺は藁にもすがる思いで、彼女に尋ねた。


「この遺跡のどこかに、俺のガチャアイテムで、何か、作動させられるような場所はないか?」

ルナの瞳が、淡い光を放つ。

彼女はこのドームの内部を、高速でスキャンしているようだった。


「・・解析完了。マスターの背後、5メートルの位置にある床の紋様。古代の低レベルメンテナンス用ターミナルと特定。マスターのスキル由来のエネルギーに反応し、診断用の発光シーケンスを起動する可能性があります」


「・・やっぱりか!」

俺の予想は、確信に変わった。

見つけた。

このあまりにも無謀な課題の、たった一つの勝ち筋を。

俺は、立ち上がった。

そして、口の端に、不敵な笑みを浮かべた。


俺はまず、足元から「ただの石」を拾うと、下手投げで、ふわりと、山なりになるように投げた。


石は、ボールスさんの頭上を大きく越えていく。

彼はその軌道を見て、また陽動かと興味を失ったように動かなかった。


そして俺は、二投目を投げるフリをしながら、一瞬の指先の動きだけで、二つの石をすり替えた。


俺の手の中にあるのは、ガチャ産の(N【小石】)。


この一投に、全てを賭ける!


コトン、と

俺が投げた二投目の石は、狙い通り、ルナが示した紋様の結節点の上に完璧に着地した。


その瞬間だった。


カシュンッ! という、空気が抜けるような軽い作動音。

そして、ボールスさんが立っていたその足元の床の紋様が、一斉にまばゆい光を放った。


「なっ!?」

その強烈な光と、足元から響く振動にさすがのボールスさんも、咄嗟にその場から一歩飛び退いた。


絶対的な強者に見せた、ほんの一瞬の「隙」。

俺は、それを見逃さなかった。


光に目が眩んだ彼のがら空きの懐に、俺は獣のように飛び込んでいた。


そして、渾身の力を込めた拳をその鋼鉄の腹に叩き込んだ。


「うらァッ!」

しん、とドームに再び静寂が戻る。

床の光も、収まっていた。


ボールスさんは自分の腹にめり込んだ俺の拳と、そして、悪戯が成功した子供のように笑う俺の顔を、交互に見た。


そして。

「・・ぶはっ」

不意に、噴き出した。

やがて、その笑いは腹の底から響くような豪快な大笑いへと変わった。


「ぶ、ははははは! そうか、そうきたか! 己のスキルと仲間を信じ、本質を『推察』し、遺跡のシステムを利用して隙を作り、最後は、その拳で決めるか!」

彼はひとしきり笑うと、最高に満足げな顔で頷いた。


「合格だ。アーサー・ベル」

「お前は、この状況で、物理的な力ではなく、『思考の力』で、俺の防御を完璧に破ってみせた。その最後の拳は、その結果にすぎん。見事な『一撃』だった」


ボールスさんは俺の前に来ると、その巨大な手で俺の頭をわしわしと撫でた。

朝日が昇り始めていた。 時間切れギリギリだったらしい。


ボールスさんは俺に背を向けると、瓦礫で塞がれた通路へとゆっくりと歩き出した。

「道を開ける。行くぞ」

彼はその巨腕に【轟雷の篭手】を再び装着すると、巨大な岩盤に向かって無造作にそれを叩きつけた。

ゴウッ!と、雷鳴が落ちたかのような轟音が響き、瓦礫がまるで小石のように粉々に砕け散っていく。


彼は瓦礫の山の中に俺たちが通れるだけの道を作ると、俺の方を振り返った。


「だが、この課題は、終わりではない」

「スキル派の修練場に着くまでの『宿題』だ。今の思考法を、どうすれば、貴様のガチャスキルに応用できるか。答えを見つけておけ」

そう言い残し、ボールスさんは、仲間たちを起こすように促した。


俺は床に転がる小石を拾い上げると、それをお守りのように強く握りしめた。



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