プロローグ
初めての投稿になります。
視界の半分を、巨大な怪物の影が覆っていた。
故郷だった村は、燃えていた。
鼻につくのは肉の焼ける匂いと、燻る木々の匂い。
耳に届くのは、もう誰のものかも分からない悲鳴。
膝が笑う。
もう立っているのもやっとだった。
目の前には、パーティの不動の盾であるケイが、砕けた盾と共に倒れている。
守りたかったはずのエレインの悲鳴が、すぐ近くで聞こえる。
そして、視線の先に俺たちの希望だったものが地面に転がっていた。
俺たちの希望は、いつだってモードレッドの双剣が切り拓いてきた。
あいつこそが、このパーティの「剣」であり、「要」だった。
その、かつて太陽のようだった金髪は泥と血に塗れ、輝きを失い見る影もない。
「モードレッド・・」
嘘だろ、と呟こうとした唇からは熱い息が漏れただけだった。
ああ、ダメだ。
終わった。
希望が、音を立てて砕け散った。
全てを諦め、意識が遠のきかけた、その時。
感情のない、まるで世界の法則そのものが語りかけてくるような声が、まず脳内に響き渡った。
(UR級ガチャの起動を確認)
(願い:故郷の救済)
そのシステムの言葉に重ねるように、尊大で、冷たく、全てを見下すような、もう一つの声が響く。
物語に現れる邪神の様な声だ。
(人の子よ。我が力を望むならば、対価を差し出せ、さすればその願い、叶えてやろう)
(要求コスト:対象者の全記憶および対象者と他者の全縁)
(契約を実行しますか?)
俺は、笑った。
乾いた唇の端が切れて、鉄の味がした。
一体何のことを言ってるのか全く分からないが。
記憶? 縁?
そんなもので、この絶望が終わるなら。
モードレッドが、ケイが、エレインが、村のみんなが助かるなら。
「ああ、くれてやるよ」
震える声で、俺は言った。
「俺の、全部だ」
視界が、真っ白に染まった。
そして・・